「最高峰」と名高いマッキントッシュMC275。その魅力とは?
Aventure編集部
MC275は1961年にマッキントッシュ社から発売された真空管式パワーアンプです。真空管アンプは味のある音の再現が可能なため、根強い人気があります。中でも、その抜きんでた性能から「最高峰」と言われるMC275。今回は、MC275の歴史や性能、特徴を深堀りし、MC275の魅力に迫ります。
MC275が生まれた背景
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真空管アンプは、アンプの増幅素子に真空管を用いています。真空管アンプは低音域から中低域音を味わい豊かに表現できるため、音にこだわる多くの人を魅了して止みません。中でもMC275は、大出力アンプの出現が待ち望まれた1950年代後半に、出るべくして出たマッキントッシュ・パワーアンプの逸品です。その背景を辿ってみましょう。
1950年代のオーディオシーン
当時は巨大なオール・ホーン型のスピーカーが主流でしたが、スピーカーの能力を活かしきるためには、スピーカーを「箱鳴り」させる必要がありました。小出力のアンプでは充分に「箱鳴り」させることができず、大出力アンプの出現が待たれていました。
1949年にアメリカで設立されたアンプメーカー・マッキントッシュ社は、1950年代後半、出力管に6L6GCを用いた「mc30」と、6550を用いた「mc60」を開発・販売。群を抜く大出力を再現するドライブ能力を有したパワーアンプ2機種を世に出します。
アンプはボリューム調節に関わるプリアンプ部と、スピーカーを鳴らすために大きな電力を扱うパワーアンプ部に分かれますが、mc30,60は、オール・ホーン型スピーカーに対応した大出力を再現させることに成功し、パワーアンプとしての役割を果たします。
しかし1960年代に入ると、製造コストが高いオール・ホーン型のスピーカーは市場から消え去ります。マッキントッシュはオール・ホーン型のスピーカーに合わせたパワーアンプからステレオ型のパワーアンプの製造に踏み切ります。その中から出現したのが「MC275」です。
MC275は、接続されるスピーカーの種類やコスト面などと比べると、製造コストを度外視して製造された大出力パワーアンプ・mc30、60とは様々な点で違いはあります。しかし、デビューから50年以上を経ても、mc30や60を凌駕するほどの人気があるMC275には、それ相応の理由があります。
高いドライブ能力をもったパワー・アンプMC275
1961年に生産されたMC275は、真空管式パワーアンプの最高峰と称され、現在でも復刻版が発売されているほど歴史的にも能力的にも高く評価された製品です。
製造コストをかけたmc30や60は、ドライブ感や音の清涼感も高いのは言うまでもありません。しかしMC275も、負けず劣らずの高い性能を誇ります。
ステレオパワーアンプにシフトしながらも高いドライブ能力と音質を保てるのは、マッキントッシュが開発した「ユニティ・カップルド・サーキット」回路に秘密があります。
ユニティ・カップルド・サーキット回路の内容については詳細が明らかになってはいませんが、マッキントッシュ社が特許を取得したバイファイラ巻きの出力トランスフォーマーを用い、より効率よく信号を流せる仕組みを実現。パワーアンプ特有のドライブ感を再現する効果的な性能を保持します。
「MC275の特長はユニティカップル回路である。出力トランスは、一次巻線がバイファイラ巻きになっておりプッシュプルの2本の出力管の結合をほぼ完全にする結果、大出力と低ひずみを実現している。」
引用:[McIntoshMC-275]
https://tomigaoka.net/2019/04/26/音響測定ツールrewとtrurtaとの比較
マッキントッシュ社渾身のユニティ・カップルド・サーキット回路により、艶やかで厚みのある独特な音を再現するMC275は、別名「マッキントーン」とも呼ばれるほど、今ではマッキントッシュを代表するビンテージモデルのひとつとなっています。
オリジナルと復刻版の違い
MC275を入手するには、オリジナルあるいは復刻版を購入のいずれかとなります。ここではオリジナルと復刻版の違いについて紹介します。
正面プレートのあるなし
【オリジナル】
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【復刻版】
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画像上がオリジナル、下が復刻版です。正面部に貼られたプレートのあるなしで違いが分かります。
サイド面の仕様の違い
【オリジナル】
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【復刻版】
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サイド面の仕様にも明確な違いが見てとれます。復刻版には、電源供給できるソケットがなくなり、バランス等のつまみも無くなっています。代替として、XLR入力が可能となっています。
内部仕様の違い
オリジナルと復刻版の内部仕様を比較すると、一見大きな違いはなさそうには見えますが、復刻版はプリント基板に変更されています。
MC275Vの仕様
MC275はこれまで6世代のバージョンが復刻版として再現されています。MC275Vは5世代目の復刻版です。
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上の画像は2007年モデルの5世代目復刻版です。復刻版はいくつかバージョンがありますが、年代の新しいモデルには電源ボタンがつきます。
5世代目復刻版は、バナナプラグ対応金メッキスピーカー端子、電源ケーブル着脱式仕様となっています。既存のバージョンに装備されていたアッテネーターボリュームを省略しています。
品名:管球式パワーアンプ
サイズ:W(幅) : 405 mmH(高さ) : 210 mmD(奥行) : 305 mm
重量:29.1 kg
発売時期:2007年
生産完了時期:2010年
出力:75W+75W(4/8/16Ω)
MONO時:150W(2/4/8Ω)
入力:RCA / XLR 各1系統(切替式)出典:[McIntosh MC275 復刻5代目|オーディオユニオン]
https://www.audiounion.jp/ct/detail/new/14955
MC275VIの仕様
現在MC275の復刻版として流通しているのは「MC275Ⅵ」、6代目のモデルです。代を重ねるごとに、オリジナルの風合いやドライブ感を守りながらも、時代に沿った仕様を少しづつ取り入れてきました。
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初代MC275のオリジナリティーを損なうことなく、低歪み、高効率および広帯域化を追求しています。最新の回路テクノロジーや高音質パーツを使用。MC275デビュー時のコンセプトを大事にしつつ、現在の高解像度音源にも匹敵するパフォーマンスを表現することができます。
マッキントッシュ独自の機能を搭載
マッキントッシュ独自のユニティ・カップル回路とバイファイラー巻き出力トランスフォーマーを搭載しています。出力トランスフォーマーの強みである極限まで追求した低い歪みや高出力、そして周波数の広帯域特性が、管球式やソリッドステートといったスピーカーの仕様問わず、ドライブを忠実に再現します。
ステレオとモノラルの高再現力
出力段にはKT88真空管を採用。ステレオ75W+75W(4/8/16Ω)、モノラル150W(2/4/8Ω)と、サイズを超えた高出力を実現します。
部品接合部に金メッキ使用
真空管ソケットの接点には金メッキを採用。本体サイドに設置された入出力端子部の仕様も注目です。スピーカーおよびアンバランス端子には、大型高品位メッキタイプを使用しています。これによって信号ロスが無くなり、確実な信号アクセスが可能になりました。
オリジナルをイメージしたデザイン
シルバー鏡面ステンレスシャーシを採用し、オリジナルモデルの持つ、クラシカルでソリッドなイメージを大切にしました。また、オレンジからグリーンに変わるLEDイルミネーションを装備。真空管チェックと幻想的な色の変化を楽しめます。
MC275VIのスペック
定格出力:75W+75W(4/8/16Ω)、150W(2/4/8Ω)
チャンネル数:2
全高調波歪率:0.5%
S/N比:105dB
ダイナミック・ヘッドルーム:1.2dB
入力感度/入力インピーダンス:3.4V/20kΩ(バランス)、1.7V/47kΩ(アンバランス)
ダンピングファクター:22
回路構成:ユニティ・カップル回路
モノブリッジ接続:非対応
モノパラレル接続:可能
定格出力帯域:20Hz ~ 20kHz
周波数特性:+0 -3dB 20Hz ~ 100kHz +0 -0.25dB 20Hz ~ 20kHz
イルミネーション:LED(小信号真空管照射用)
シャーシデザイン:ステンレス鏡面仕上げシャーシ
スピーカー出力端子:ステレオ1系統 x 3(4Ω x 1、8Ω x 1、16Ω x 1)
入力端子:RCA x 1系統、XLR x 1系統(バランス/アンバランス切替)
使用真空管:出力用KT88x4、電圧増幅/ドライバー用12AT7x4、入力・位相反転用12AX7Ax3
消費電力:440W
外形寸法:419(W) × 216(H) × 305(D)mm
質量:30.5kg
価格:825,000 円 (税込)出典:[MC275VI|株式会社エレクトリ]
https://www.electori.co.jp/mcintosh/MC275vi.html