プリメインアンプの枠を越える銘機、アキュフェーズ「E-470」
Aventure編集部
アキュフェーズのE-470は、プリメインアンプとして高い人気を誇る製品です。プリメインアンプは、迫力のある骨太なサウンドや自分好みのサウンドを実現するためのコントロールを有するオーディオ機材で、オーディオ愛好家にとってはなくてはなりません。
そんなプリメインアンプの中でもE-470が愛され、選ばれ続けている背景には、製品自体の性能からメーカーの魅力に至るまでさまざまな理由があるのです。今回は一度は手にしたいと言われるE-470について、深掘りして解説していきます。
日本が誇るオーディオメーカー・アキュフェーズ
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E-470を生み出したアキュフェーズ株式会社は、日本のオーディオメーカーです。アキュフェーズはその製品だけでなく、企業としてもユーザーに深く愛されています。そんなアキュフェーズについて、まずは歴史から見ていきましょう。
トリオ、ケンウッドを生んだ創設者
アキュフェーズの創設者である春日仲一と弟の二郎は、アキュフェーズより先にトリオというオーディオメーカーを立ち上げました。トリオはパイオニアやサンスイと並ぶ「日本オーディオ御三家」として知られています。
トリオ時代には海外向けブランドとして有名なケンウッドを設立したという実績もあります。
高級オーディオメーカーとして再スタート
前身会社のトリオでオーディオメーカーとしての基盤を固めていた春日兄弟でしたが、真の高級アンプの生産という目的のため、新たに企業を設立します。これがケンソニック株式会社で、後にアキュフェーズ株式会社へと改名される会社です。
アルファベット表記はAccuphase。これは「正確・精密」を表すaccurateと「変化・発達の段階」を表すphaseを掛け合わせた造語です。メーカーとしての意欲的な姿勢が垣間見えます。
高級アンプメーカーという業態は当時日本には存在せず、ニーズもかなり狭かったことから、軌道に乗るまでに時間がかかりました。しかし、彼らの熱意によってのちに大きな成功を果たすのです。
徹底した品質管理、充実の保証
高級で本格派のオーディオ機器の生産を目的に設立されたアキュフェーズは、そのクオリティの保証と追求に余念がないことで知られています。アキュフェーズでは製造の各部門で分業制が採用されており、性能・品質検査が各部門ごとに行われています。
また、アキュフェーズの製品はアンプ類で5年間、ディスク・プレーヤーは3年間の保証付きです。このような徹底した品質管理と充実のアフターサービスが信頼感を生み、製品の人気に繋がっているのでしょう。
オーディオのクオリティだけを追求する姿勢
高級オーディオメーカーとして確固たる地位を築きながら、アキュフェーズは会社の規模を拡大することに対して関心を持っていません。今なお神奈川県の小さな社屋で手作業中心の生産スタイルを貫いています。製品の性能と品質だけを追求する姿勢が、コアなファンの心を掴んで離さない大きな要因なのです。
銘機「E-470」
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E-470は2014年に発売されたプリメインアンプで、同製品を含むEシリーズの中でも傑作とされています。同ラインの前作E-460よりも遥かにパワーアップした性能を誇り、発売から長い年月が経った現在でも人気は衰えを知りません。
定価 | 540,000円(税込) |
対応インピーダンス | 4〜16Ω |
製品サイズ | 横46.5cm×奥行き43cm×高さ18cm |
重量 | 24.5kg |
付属品 | AC電源コード / リモート・コマンダー |
E-470最大の魅力、「セパレートアンプ・グレード」とは
E-470はプリメインアンプというオーディオ機器に分類されます。プリメインアンプとは、プリアンプとパワーアンプという本来別々の機材の働きを1つで担える機器のことです。
E-470はプリメインアンプの枠を超えた活躍を見せ、その性能を「セパレートアンプ・グレード」という言葉で表します。ここからは、その言葉の意味について深掘りしていきましょう。
プリアンプとパワーアンプの働き
私たちが音楽を聴く時、音はプレーヤーから信号として送られ、増幅されてからスピーカーを通して音として放たれます。音が私たちに届けられるこのプロセスのうち、音の信号を増幅させる役割を持つのがパワーアンプです。
一方のプリアンプとはパワーアンプの前に置かれ、音の信号を増幅する前に音量や音質を調整する機能を持ちます。音質を調整するプリアンプと、音を増幅させるパワーアンプは、本来別の役割のために動く別の機器です。
プリメインアンプの問題点
プリアンプとパワーアンプという、2つの機器の役割を1台でこなしてしまうのがプリメインアンプという機材です。
プリメインアンプという一体型の機材を採用することで、コストが安くなったり、設置スペースを削減できるといったメリットがあります。
一方、プリアンプとパワーアンプをそれぞれ導入した場合に比べて、どうしてもパワー不足に感じられるという点がデメリットとして挙げられます。
2台分の役割を完璧にこなすE-470
そんな問題を払拭したのがE-470です。E-470はアキュフェーズのプリアンプC-3800やパワーアンプA-200に採用された技術が流用され、同ラインのE-460からフルモデルチェンジを果たした末にリリースされたモデルです。
その内部ではプリアンプ部とパワーアンプ部が完全に独立しており、ボタン1つでプリアンプとパワーアンプのコントロールを切り替えられます。
このように、1台の機材でありながら2台分(セパレート)の働きを両立している性能(グレード)を持つため、E-470は「セパレートアンプ・グレード」と評価されているのです。
E-470で可能なコントロールを紹介
E-470では音声により大きなパワーをもたらしたり、自分好みの音色にしたりするためのコントロールが数多く存在します。
高性能ゆえにどこまでも音にこだわれますが、ここでは初めてアンプを手にした方にもぜひ試してほしい基本的なコントロールを抜粋して紹介していきます。
トーンコントロール
トーンコントロールは、自分好みの音質を実現するための基本です。Bassつまみで低音の出力を、Trebleつまみで高音の出力をコントロールできます。
低音を強調することで重厚な聴き心地になり、高音を強調するとブライトで抜け感のある聴き心地になります。調整次第で少しずつ楽曲が表情を変えていく様子を味わってみてください。
コンペンセーター
コンペンセーターとは、音声のエネルギーバランスを自動で調整するスイッチです。主に低音・高音のバランスによって調整されます。
音は小さな音量で再生する時、低音と高音が減衰してしまう性質があり、その結果、音に迫力が感じられないという問題が発生します。コンペンセーターを活用 することで、この問題を解決できるのです。
mono / ステレオ
mono / ステレオ切り替えボタンによって、音声出力をモノラルとステレオの形式にそれぞれ切り替えられます。
モノラルは左右からの音信号がミックスされ、中央から1つの音としてバランスよく聴こえる形式です。対してステレオとは、左右の異なるチャンネルから音声がスピーカーに届くため、立体的な音響が楽しめます。臨場感あふれる聴こえ方になりますが、調整次第でバランスが崩れて聴こえることにもなり得るため、奥深い形式と言えます。
位相切り替えボタン
Phaseと呼ばれる位相切り替えボタンによっても聴こえ方を大きく変化させられます。音の位相とは、簡単に言えば音の波の位置です。これを逆転させることによって音が耳に届くタイミングにわずかなズレが生じ、立体的な聴こえ方を味わえます。
また、先に紹介したステレオ形式と組み合わせることで特定の音域や楽器の音をより強調して再生できます。
E-470の購入方法
2014年にリリースされたE-470はすでに生産が終了しており、新品を購入することはできません。そのためE-470を入手するには、オーディオショップやオンラインショップで中古品を探しましょう。
ただし、人気製品ゆえAmazonや楽天などの大手ECサイトにも出品されていないこともあります。その場合は、個人出品のオークションサイトなどが最も入手しやすいでしょう。落札価格は500,000円前後がほとんどで、定価とほぼ変わらない金額で現在も取引されています。