100年以上の歴史を持つライダースの定番、Schott(ショット)を徹底解説
Aventure編集部
Schott(ショット)は、ライダースジャケットをファッションシーンの定番ジャケットにしたブランドです。100年以上の歴史と、ものづくりへの高いこだわりを持つブランドの歴史や特徴、定番アイテムについて紹介していきます。
100年以上の歴史を持つSchott(ショット)
Schott(ショット)は1913年に創業して以降、職人たちが高いプロ意識でものづくりを行い数々の名作を生み出してきました。自国での生産や職人による手作りを創業から今にいたるまで続け、親子三代にわたって働く社員もいるほどです。ここでは、そんなSchott(ショット)の歴史を解説していきます。
1913年にニューヨークで創業
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1913年、アーヴィン・ショットとジャック・ショットが兄弟でニューヨークにSchott(ショット)を設立しました。設立当初はレインコートを作っていたのですが、創業から15年後にモーターサイクル関連の会社から依頼を受け、フロントジッパーを採用したライダースジャケットを世界で初めて発売したのです。1928年にリリースしたその商品の名前は“Perfecto”。当時は、ボタン仕様のライダースジャケットしかなかったため、ジッパー式のPerfectoシリーズは話題になり、その後のライダースジャケットに大きな影響を与えました。
1950年代に名作、ワンスターをリリース
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第二次世界大戦期には、軍用のピーコートやフライトジャケットの製造も行っていました。戦後もフィールドジャケットなどをアメリカ軍や警察に提供していた実績があり、ものづくりのレベルや製品のクオリティーが国に高く評価されていたのです。
1950年代にはエポレットに星型のスタッズを配置したダブルライダースジャケットの伝説モデル、“ワンスター”をリリースします。ワンスターはラモーンズやセックス・ピストルズをはじめ多くのロックミュージシャンに支持され、1953年公開の映画「The Wild One(ザ・ワイルド・ワン:邦題/乱暴者)」でマーロン・ブランドが着用したと言われるなど当時熱狂的な人気を誇りました。
バイク乗りだけでなく、音楽シーンでも愛用され、ワンスターは時代を超えた永遠の定番として多くの人に愛されています。
2005年に工場を移転
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Schott(ショット)は創業当時から製造方法にこだわっていることでも有名です。工場現場では、裁断や縫製などに長けたエキスパートたちが黙々と流れるようなリズムでレザーを仕上げていきます。
2005年には、ニュージャージー州のロウアーイーストから、ニューヨークのニューアーク国際空港の近くに工場を移転。大量生産、ファクトリーオートメーション、IT化といった時代の潮流に乗らず、自国生産を貫き続けているのです。工場には親子三代に渡って働いている職人もおり、職人魂の根付いた企業文化となっています。こういったクラフトマンシップが、100年以上続くブランドとしての地位を確立しているのでしょう。
ワンスターに代表される王道ダブルライダース
ライダースジャケットと聞いてまず頭に浮かぶのは、胸元が二重になったダブルブレスのものでしょう。Schott(ショット)のダブルライダースの特徴は、両肩のエポレットに配置された一つ星のスタッズです。ワンスターと呼ばれるのも、このディティールが由来となっています。
613
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Schott(ショット)のダブルライダースの中での定番が「613」です。ハーレー・ダビットソンのような大型アメリカンバイクに乗る時は上体を起こして座り、腕と足を前に伸ばして座ります。そのため、手を動かしやすいように袖の付け根にリブ加工を施しています。また、服全体のシルエットには余裕を持たせ、シートに座った時にダボつかないように着丈を短くしているのも特徴です。
バックルや腰元のベルト、グローブをつけたままでも掴みやすいジッパー、コインポケットなど、販売当時の613に搭載されたディティールが現在のダブルライダースの標準となりました。バックルには、8角バックルを使用しています。ライニングは中綿の入ったキルティング仕様です。
生後2年を経過し大人になった雄牛の皮であるステアハイドを使ったボディーは厚みがあり、着用するほど風合いが増していきます。タグに記されたPerfecto(パーフェクト)の文字は、創業者のアーヴィン・ショットが愛喫していたキューバンシガーに由来するそうです。
1950年代に登場したワンスターが、のちの「アメジャン」と呼ばれるライダースの定番となり、Schott(ショット)の人気を確固たるものにしました。
613US・613UST
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ライダースジャケット選びを難しくしているのが、フィッティングです。日本人の体型は身体の厚みが欧米人と比較して薄く、自分の体にベストフィットするものを見つけるが大変です。そこで、日本人向けにリサイズされたのが「613US」です。着丈をやや長く、身幅やアームホールなどをタイトに再構築しています。
613USよりも着丈が約2.5cm、袖丈を約2cm長くし、肩幅を1cm絞ったのが「613UST」です。ヴィンテージ仕様のダブルライダースは短めの着丈となっていますが、あえて着丈を長くすることで現代のコーディネートに合わせやすいように調整されました。
618・118
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Schott(ショット)の定番ラインアップには、613と外見上の違いが見分けづらいモデルが存在します。その代表例が「618」です。613との違いは、大きさの異なるエポレット、星形スタッズの有無やレザーの厚み、フロント襟部分のスナップボタンの数などです。レザーは618の方が薄く、スナップボタンの数は618が4つ、613が2つとなっています。
618にはステアハイドが使用されていますが、雌牛から作られたカウハイドを使ったモデルが「118」です。カウハイドはステアハイドよりも耐久性や強度の面で劣るものの、柔らかさやきめ細かさの面で優れています。経年変化によって、ステアハイドとカウハイドでは風合いが変わってくるため、118を好んで着る人もいるほどです。
ミニマルで上品さのあるシングルライダース
Schott(ショット)の定番モデルとしてワンスターと肩を並べるのがシングルライダースです。ライダースジャケットにおけるひとつのスタンダードであり、ダブルライダースの無骨さとは異なり、スマートな雰囲気を醸し出しています。装飾が削ぎ落とされたミニマルな佇まいが、合わせるアイテムを引き立たせ、コーディネートの幅を広げてくれるでしょう。
641
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ダブルライダースの代表作が613なのに対し、シングルライダースの代表作は「641」です。素材にはステアハイドを使用しており、着込めば着込むほど柔らかく身体に馴染んでいきます。スイングバックで肩の可動域を確保した背面や、舵腹状にデザインした脇下など、動きやすさをサポートしてくれるディティールが特徴的です。
642・643
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スタンドカラーが特徴的な641に対して、首元に通常の襟タイプへとチェンジしたものが642です。元は東京・上野の老舗インポートショップが別注したモデルだったと言われており、総丈を1cm短くしてシルエットを変更しています。642の着丈を長くしたものが「643」です。着丈が長くなったことでコーディネートにも合わせやすくなっています。
141
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641に使われていたステアハイドの素材をカウハイドのものに変えたものが「141」です。生まれてから2年以上経過し、出産経験のある牝牛の革を使っているため、革が柔らかく着心地がよくなっています。
ヴィンテージものにはホースハイドが多い
ヴィンテージのレザージャケットにはホースハイドが使われたものが多いです。1930年~1950年代の交通手段として、馬や馬車が日常的に使われていたため、供給量が多かったことがその要因となっています。
移動手段の変化により、馬の需要自体が減ったことでホースハイドの供給数も減少し、ステアハイドが主流となったのです。そのため、現在もあえてホースハイドを使い続けているブランドは、レザーに対して強いこだわりを持っていると言われています。
歴史を物語る、年代別のタグ
Schott(ショット)は、100年以上の歴史があるブランドです。年代によってホックの打ち方や内タグ、タグが異なるなど、ヴィンテージ好きにはたまらないディティールがあります。ここではPerfectoシリーズの年代ごとのタグの違いについて解説していきます。
40年代前期:馬タグ前期
黒字に黄色文字で印字されています。正方形で作られており、上から「PERFECTO」「R.E.G.US.PAT.OFF.」「GENUINE」「HOUSE HIDE」と記され、その下に馬の横顔の刺繍が施されています。
50年代前期:馬タグ後期
主なデザインは40年代そのままとなっています。タグが横に少し長くなっているのが、50年代の特徴です。この時代も馬革がメインに使われており、ホースハイドと記されています。
50年代後期:リボンタグ
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50年代後期から、使われている革がホースハイドからステアハイドに変わりました。今まで黄色で印字されていた文字が赤色に変わっているのもポイントです。
60年代前期:サボテンタグ
この時代のタグはサボテンタグ、あるいは黒牛タグと呼ばれています。中央上段に牛、左下にサボテンが刺繍されているのが特徴です。
70年代前期・後期:牛タグ前期・後期
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70年代から、タグに表記されていたサボテンがなくなり、牛のみが表記されます。サイズ表記タグがフラッグタグとして付くようになったのがこの年代の特徴です。「Schott Bros」と表記されたものが牛タグ前期、「Schott N.Y.C」と表記されたものが牛タグ後期です。
80年代前期〜90年代:バイカータグ前期・後期
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80年代になると、タグに印字されていた牛がバイカーになり、バイカータグと言われています。フラッグタグは星条旗がタグ全部を使って刺繍されているのが特徴です。90年代になるとバイカーが大きくなり、服が茶色から黄色へと変わります。右下の文字が太いのがバイカータグ前期、細いのがバイカータグ後期です。
現代
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90年代までのものと異なり、エンブレムロゴのタグになっています。今までよりもシンプルさが増し、100年以上の歴史を感じさせる「SINCE1913」という文字が印象的です。
一世紀を超える歴史を持つブランドをワードロープに
一世紀を超える歴史を持つSchott(ショット)は、高いプロ意識を持った職人たちによって作られています。ライダースジャケットは、ものづくりへの強いこだわりからファッションシーンを選ばず、多くの人に愛される名作です。経年変化を楽しめる革モノをあなたもぜひワードロープに加えてください。