エルメス鞄のはじまり。オータクロアの歴史と魅力を徹底解説。
Aventure編集部
ケリー、バーキンなど、数々の名作を生み出し今もなお、ファッション業界のトップを君臨するエルメス。そんなエルメスの歴史を作ったともいえるオータクロアは、エルメス初のカバンです。本記事ではエルメスの歴史とともにオータクロアの魅力を徹底解説します。
エルメスとは
世界中の人々が憧れる「バーキン」や「ケリー」をはじめ、さまざまな名作を生み出してきた「エルメス」。フランスの最高級革メーカーでありつつも、職人が一つひとつ手作業をしています。一つのバッグに費やされる時間と手間は図り知れず、エルメスの商品の価格にも反映されているほどです。古くから愛され、憧れ続けられているエルメスの歴史を振り返ります。
6代にわたる系譜
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フランス生まれのラグジュアリーブランド「エルメス」は、ティエリー・エルメスが、1837年パリに馬具工房を構えたのがはじまりです。1801年、当時フランスの領土であった(現在のドイツ・クレフェルド)地にて生まれたティエリー氏。地元で酒場を経営していた父とともに幼い頃から、酒場に訪れたお客様の馬車の整備や馬のお世話をしていたそうです。幼少期から培った馬具装備の経験は、地元で評判となりました。13歳になると、フランス・パリに行き、馬具屋の見習い職人として、修行に励みます。勤勉だったティエリー氏は、馬具の制作のみならず皮革のなめしや選定も学びはじめたのです。そして遂に、馬具工房を構え「エルメス」をスタート。彼が手掛ける馬具製品は最高峰と称えられ、フランス中が注目しました。そして1987年、パリ万国博覧会にて銀メダル、翌年にはグランプリを受賞し実力を発揮します。
ティエリー氏の引退後、2代目を継いだのは息子のシャルル・エミール・エルメス氏でした。1880年にシャルル氏は、工房を現在のフォーブル・サントノーレ通り24番地にあるエルメスの本店に移転します。さらに、工房移転と同時に店舗を併設したのです。店舗を立ち上げたことで、お客様に馬具を直接販売しやすくなり、エルメスの名はヨーロッパ中に広がっていきました。1892年、馬具の鞍を入れるためのカバンとしてオータクロアを手掛けます。
3代目にはシャルル氏の息子エミール・モーリス・エルメス氏が就任します。彼の就任とともに時代は進化し、世の中も馬車から車へと変化を遂げたのです。馬具を扱うエルメスにとっては、危機ともいえる出来事でしたが、モーリス氏は社会の変化に柔軟に対応。カバンなどの皮革、シルク製品の販売をスタートさせます。1923年には、世界初となるカバンにファスナーを付けた「ブガッティ」を発表。4年後には腕時計、さらに1937年にはシルク素材のスカーフ「カレ」を発表するなど、ファッション業界へと事業を広げます。
1951年、モーリス氏の次女の婿養子でもあるロベール・デュマ氏を4代目に任命します。デュマ氏は1935年に「サック・ア・クロア」という自身でデザインしたカバンを発表。のちに、グレース・ケリーが購入し世界で報道されたことから「ケリー・バッグ」として呼ばれるようになりました。
5代目には息子のジャン・ルイ・デュマ氏が就任し、エルメスブランドはさらなる高みへと飛躍させていきます。ジャン氏は時代のニーズに合わせ、ターゲットを中高年から若い女性へとシフト変更しますしカリスマ的な経営戦略を見せました。1984年には、イギリスの人気女優ジェーン・バーキンの名前からとった「バーキン」を発表したのです。
そして現在、ジャン氏の甥としてピエール・アレクシィ・デュマが6代目を受け継ぎます。当時、まだ後継人としては若かったピエール氏は、パトリック・トマとともに経営の舵をとります。創業以来、初めて一族以外の人間が経営に携わるとのことで多くの人に注目されました。
ケリーの誕生
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エルメスを代表するカバン「ケリー」は、4代目のロベール・デュマ氏が1935年にデザインした作品です。当時は「サック・ア・クロア」という名で発表していました。しかし、1956年にモナコ公国の妃となったグレース・ケリーが妊娠中に大きなお腹を隠すために持っていたことで話題になったのです。そして彼女の人気に則って商品名を「ケリー」に変更します。その後、今日に至るまで「ケリー25」「ケリー28」「ケリー32」「ケリー35」と4つのサイズを展開。発売から100年近く経つ今もなお、人気が落ちることはありません。
バーキンの誕生
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エルメスの代名詞ともいえる「バーキン」は、1892年に馬具の鞍を入れるためのカバン「オータクロア」が前身といわれています。きっかけは5代目のジャン・ルイ・デュマ氏が、偶然飛行機でジェーン・バーキン氏の隣に座ったことだそうです。機内で繰り広げられた2人の会話では、ジェーン氏が理想とするバッグについて話をしたといいます。そこでジャン氏は収納力や機能性に優れる「オータクロア」をベースに再現。現在では「バーキン25」「バーキン30」「バーキン35」「バーキン40」の4つのサイズを展開し、誰もが憧れるカバンとして世界の最前線を歩んでいます。
エルメスのロゴの秘密
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鮮やかなオレンジ色が目を惹くエルメスカラー。ブランドのシンボルカラーが印象的で、今もなお、エルメスのロゴとして親しまれていますが、誕生したのは1945年と言われています。デュック(四輪馬車)とタイガー(従者)と呼ばれているモチーフに彩られた深みのあるオレンジ。よく見ると肝心の主人が描かれていません。その理由は、エルメスブランドが創業当初から持ち続けている「主役はあくまでもユーザーにある」という考え方にありました。馬をブランド、従者を職人、馬車をブランドアイテムに例え「エルメスというブランドの下で職人が作り上げた、最高品質のアイテムをお客様に提供する」意味を込めて描かれたといいます。つまり、ロゴにいない「主人」がアイテムを手に取ったお客様なのです。
エルメスオータクロアの魅力
バーキンやケリーなど名作へと、目がいきがちなエルメスのカバン。しかし、オータクロアもエルメスを語る上では外せない存在です。1892年に誕生したオータクロアは、当時、鞍入れのカバンとして活用されていました。しかし、使いやすいサイズ感と見事な収納力から旅行バッグとして使うユーザーが増えたのです。まだ、馬具のアイテムの販売が多かったエルメスも、オータクロアの人気のおかげでファッション業界に進出。今となってはケリーやバーキンの方が世界的に知名度も高くなっていますが、オータクロアの存在がなければ、エルメスのカバンは存在しなかったかもしれません。
エルメスで最も歴史のあるバッグ
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6代と長い歴史を紡ぐエルメスのなかで、最も古く歴史のあるカバンが「オータクロア」です。元々は鞍と乗馬用のブーツを収納するためにデザインされました。多くの人を魅了したのはオータクロアの持つエレガントさです。頑丈で確実な収納力を見せつつも、気品を添えたオータクロアは、旅行用のカバンとして親しまれ始めました。
経年変化を楽しめる
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鞍を入れるために設計されたカバンのため、縦長のデザインが特徴的なオータクロア。重い鞍を収納するからこそ、頑丈な素材「ボックススカーフ」と「アルデンヌ」を採用しています。上品で程よい光沢感がある「ボックススカーフ」は、どこか落ち着いており、ビジネスシーンでも十分に馴染む素材感です。一方でアルデンヌ地方で生まれた仔牛レザー「アルデンヌ」は、型崩れがしにくい硬さが特徴といえるでしょう。素材自体が長もちするため、使用するとともに変化が生まれるため、一生もののカバンとして使用できるのも、オータクロアの楽しみ方の一つかもしれません。
使い勝手の良いサイズ感
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全体的にサイズが大きなオータクロアですが、幅広いサイズ展開をしています。最も小さなサイズ28は「オータクロアをデイリーバッグとして利用したい」という要望が多いことから、作られました。オータクロアのなかでは32が最も人気があり、底面には金具がついているため自立する点も使いやすさの秘密といえるでしょう。そして絶妙なバランスを感じさせるオータクロア40は、スクエアデザイン。大きな書類を持ち運ぶ人は45を選ぶ人が多く、特に男性への人気が高いと言われています。旅行バッグとして活用したい方は最も大きいサイズ60を選んでみるといいかもしれません。
エルメスとバーキンの違い
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一目見ると、いくつかバーキンと似ている点もあります。しかし、バーキンの前身といえどよく見ると2つのカバンに違いがあるのです。大きな点は、カバンのフォルム。全体的に縦に長いオータクロアと比べるとバーキンは正方形のような形をしています。また、バーキンの金具はL字型になっていますが、オータクロアはコの字型です。
エルメスオータクロアのメンズ向けモデル
エルメスのオータクロアは、女性のみならず男性人気も高いモデル。男性が持つならサイズに配慮すると、よりファッションと合わせやすくなります。
オータクロア40
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ビジネスバッグとしても使用できるオータクロア40。重厚感があり、男性が持つと丁度良いサイズで一泊程度の旅行シーンでも活用できます。40㎝以上になると、クロアを通す金具の下に一本のステッチが施されています。
オータクロア45
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オータクロアのなかでも横長な印象を持つオータクロア45は、男性のなかでも最も人気のあるサイズです。数年前には、大きなカバンを持つことがトレンドにもなったことで人気に拍車をかけました。
オータクロア50
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オータクロア45よりも5㎝大きくなった「オータクロア50」。さらに重さも1kgと重量も増えました。普段使いには少し大きすぎるサイズではありつつも、身体の大きい男性にとっては違和感なく使用できます。
オータクロア55
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オータクロアが、旅行用のカバンとして注目されるきっかけとなったというエピソードが思い浮かぶ「オータクロア55」。海外出張時のサブバッグとしてはもちろん、2~3泊程度の外出でも十分に入る収納力です。
オータクロア60
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大迫力なオータクロア60は、実は希少価値が高いため、日常遣いをせずにコレクションをするユーザーが多いそうです。購入後はお部屋のインテリアとして、眺めて見るのも心が落ち着くかもしれません。