アウトドアファンの所有欲を満たすカレスアンドニーベンの斧、その魅力に迫る
Aventure編集部
カーリーバーチの木目が美しい柄に鏡のように磨き上げた刃が光る、極上のハンドアックス「カレスアンドニーベン」。キャンパーの所有欲を満たす芸術品のように美しい斧は、同じく北欧の代表的なブランド「グレンスフォシュブルークス」や「ハスクバーナ」の実用性の高い道具とは違う色気がある。
カレスアンドニーベンは、メンテナンス方法や使い方にやや癖があるのが特徴だ。スウェーデンの厳寒地帯が育んだ伝統のハンドアックスの魅力に迫りたい。
カレスアンドニーベンというブランド
ブランドストーリー
カレスアンドニーベンは北極圏の北250km、スウェーデンのカレスアンド村にある刃物メーカー。寒さの厳しい北極の大地で、空はオーロラや白夜が覆うことも多い。カレスアンドニーベンは、厳しい自然の中で何世紀にも渡る工芸の伝統を受け継ぎ、自然の原材料から人々が生きるための道具を生み出してきた。
素材を熟知した職人たちは、20万を超えるナイフや斧を生み出し、100万を超えるブレードを鍛え上げてきた。カレスアンド村はトナカイの飼育が最大の産業。そこに息づく人々はナイフや斧を必要不可欠なものとして日頃から携えている。カレスアンドニーベンは人々の営みに必要な道具を提供してきたのだ。
会社が現在の形になって30年は政府の補助を受けつつ事業を継続していたが、アウトドアブームとともにその名が知れ渡り、2004年にビジネスの独立性を確保した。今では製品を高く評価する世界的なファンに囲まれている。
カレスアンドニーベンの刃物が、ハンターやキャンパー、サバイバル愛好家の支持を得ているのは、過酷な自然の中で生み出された揺るぎない信頼性があるからだ。そして自然に溶け込む芸術品のような美しさが、ナイフコレクターやアンティーク愛好家の心をつかんでいる。
ハンドアックスの特徴
カレスアンドニーベンの斧はほとんどがステンレス鋼材で作られている。ハンドアックスの美しさを引き立てているのが、凍てついた氷のように輝くシルバーの刃だ。
斧の一流ブランドにグレンスフォシュブルークスがあるが、スウェーデン鋼で鍛えられた刃は黒く、道具本来の無骨さが特徴的。グレンスフォシュブルークスが男性的だとすると、カレスアンドニーベンは女性的な美しさを備えている。
ハンドルは落ち着いた茶色のウォールナットや、動物の骨を思わせるカーリーバーチが用いられている。どちらの材料も握りやすく、手になじむ絶妙な柔らかさ。ブッシュクラフトで長い時間使っていても、手が疲れにくいのが特徴だ。
カレスアンドニーベンは暖炉の薪割りに使うような、大型の斧はラインナップされていない。ブッシュクラフト用途や、ハンティングに携行することを目的として作られたハンドアックスが中心だ。
そのため、キャンプやアウトドアで使うのに最適なアイテムがそろっている。
ナイフの特徴
斧だけでなく、ナイフも主力製品だ。特に狩猟や放牧が盛んな地方らしく、使用用途が広いハンティングナイフが充実している。
ナイフも斧同様に美しいデザインかつ使い勝手の良いアイテムだが、日本ではほとんど取り扱っていない。入手する場合は公式サイト経由で購入するのがいいだろう。
優れたデザイン
木目が鮮やかに浮かび上がる柄が、握りやすさを計算したように緩やかにカーブする。鏡のように光る斧頭は、目の覚めるような鮮やかさを放つ。均整のとれたそのデザインが、カレスアンドニーベン最大の特徴だろう。
アウトドアやキャンプで使うハンドアックスを選ぶ際は、ぜひ「カレスアンドニーベン」「グレンスフォシュブルークス」「ハルタホース」「ハスクバーナ」で比較してほしい。
それぞれのブランドを一言で言い表すなら、高いデザイン性が光るカレスアンドニーベン、タフに使えるグレンスフォシュブルークス、コストパフォーマンスに優れたハルタホース、手軽に手に入るのがハスクバーナだ。
どのハンドアックスもそれぞれ優れているが、カレスアンドニーベンの外観は他のブランドを寄せ付けない独特の麗しさを持っている。
ハンドアックスの種類
ハンター アックス
カレスアンドニーベンで最も使い勝手の良いシリーズの一つ。全長241mm、斧頭105mm、刃長69mmで手に収まりやすいのが特徴だ。ブッシュクラフトで活躍するだろう。
カレスアンドニーベンのハンドアックス全般に言えることだが、硬い薪などを割るのにはあまり適していない。場合によっては柄が折れることがある。そのため、枝打ちやフェザースティックなど、細かな作業が向いている。
【スペック】
全長:241mm
刃長:69mm
重量:940g
鋼材:3CR13 ステンレス鋼
ハンドル:ウォールナット
付属:レザーシース、ダイヤモンドシャープナー
ストエラ アックス
ハンターアックスよりもやや長めのサイズ。カーリーバーチの柄は高級感を醸し出している。使い込むと柄は茶色を帯び、木目が浮かび上がる様は豹のようだ。
この斧は育てる楽しさも与えてくれる。コンパクトなのでバッグに収めやすく、ナイフのように使うのが良いだろう。
【スペック】
全長:298mm
刃長:89mm
重量:740g
付属品:レザーシース
ブッシュクラフト アックス
カレスアンドニーベンにしては珍しい黒のブレードを持つハンドアックス。ビーチウッドハンドルは木彫が施されている。無骨でありながら、繊細さも兼ね備えたモデルだ。
ステンレス鋼とカーボン鋼の2タイプが用意されている。
サイズは「ストエラ アックス」よりも一回り小さい。ベルトなどに通しても違和感なく過ごせるだろう。
カレスアンドニーベンの中でも、小型で男性的なデザインを求める人には最適と言える。
【スペック】
全長:230mm
刃長:75mm
重量:350g
付属品:レザーシース
ハンドアックスのメンテナンス
斧は使用後の手入れや定期的なメンテナンスが欠かせない。
刃のメンテナンス
斧を使用した後は、刃物クリーナーを使ってヤニや木くずなどを落とす。クリーナーを吹きかけたら1~2分置き、乾いた布で汚れをふき取ろう。
汚れがなくなったら椿油、亜麻仁油などの刃物用油を数滴たらし、刃全体に薄く塗り広げる。ステンレス鋼は錆びにくいという特徴があるものの、何もしなければ腐食してしまうので注意が必要だ。
切れ味が悪くなったら研ぐ。砥石は刃こぼれがひどい場合は#400~#500。それほどでもなければ#1000を使う。
砥石を水に浸し、刃を少し傾けてスライドさせる。力は入れすぎず、スムーズに刃を滑らせることに集中しよう。
購入したナイフの切れ味を購入時よりも鋭く研ぐコレクターや愛好家がいるが、斧の場合は購入時と同じ切れ味にしておくのが基本。理由はナイフよりもタフな使い方をするため。鋭くしすぎると刃こぼれがしやすくなる。
出荷時は最も使いやすい状態にしているメーカーがほとんどだ。最初の切れ味をよく覚えておくといい。
柄のメンテナンス
柄も椿油、亜麻仁油を塗ってなじませよう。過度な乾燥を防ぐことで、破損しづらい状態を保つことができる。
直射日光が当たる場所に保管すると乾燥したり、斧頭が緩むことがあるため、日陰に保管するのが理想的だ。
カレスアンドニーベンの実用性
薪割り
大きな薪を割るのにはあまり適さない。暖炉用の薪割り道具としてカレスアンドニーベンを購入する人が少ないのは、繊細な道具だからだ。サイズも小さく、薪割りには向いていない。
グレンスフォシュブルークスのハンドアックスや、モーラナイフなどを使ってバトニングをした方が、薪割りはしやすいだろう。
枝打ち
落ちている枝が使えるキャンプ場や、手つかずの自然が残っている野営をする際は、カレスアンドニーベンのハンドアックスが大活躍する。
枝を細かく裁断したり、燃えやすいようフェザースティックに加工するなどの小技が得意だ。
ブッシュクラフト
カレスアンドニーベンはトライスティックでも活躍する。トライスティックとは、やや太目の枝などを使い、鍋を吊り下げるポットフックなどを作る技術。硬い枝の加工はナイフだとやや苦戦するが、ハンドアックスは力をかけることなく仕上げられる。
ブッシュクラフトを本格的に行うキャンパーで、ナイフよりもパワーのある道具が必要だと感じたらカレスアンドニーベンのハンドアックスを推奨する。
他のブランドとの比較
「高級感に溢れる」「高いデザイン性」「観賞用にも耐えられる道具」「小型のハンドアックス」「ナイフにはない破壊力」
これらのキーワードにピンときたらカレスアンドニーベンのハンドアックスを手にとっても良いだろう。特に高級感やデザイン性の高さは他のブランドの追随を許さない。
使いやすさの面で言えば、ナイフよりも一段破壊力が上で、小型かつ携行性が高いところに特徴がある。過度に力のかかる仕事にはあまり向かないので、注意してほしい。
カレスアンドニーベンは鑑賞目的の所有にも耐えられる美しさ
カレスアンドニーベンのハンドアックスは、スウェーデンの厳しい自然が生んだ芸術品とも言えるものだ。キャンプではブッシュクラフトで活躍し、自宅では観賞用の道具としても異彩を放つ。
ハスクバーナのハンドアックスの柄に彫刻を施し、自分らしくカスタマイズする愛好家がいるが、カレスアンドニーベンの斧はそのままでも十分な美しさがある。
一度手にすれば、一生ものとして同じ時を過ごすことになるだろう。