軽量化重視のアナリス。通気性も空間性も譲らない
Aventure編集部
キャンプのプランを練るとき、テントの快適さは譲れません。ヒルバーグ社は、アウトドア愛好家によるテントに注力したブランド。平地でのキャンプから、森林限界を超える標高や極寒にも耐えるモデルにも対応しています。
アナリスは、同社が1973年に初めて開発・販売したテント・ケブにインスパイアされた最新作。
この記事では、ヒルバーグ社の歩みと、熟練のキャンパーが、敢えて気軽なキャンプに出かける際、最適なテント・アナリスを紹介します。
アウトドア愛好家が創設したヒルバーグ
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森林管理官をしていたBo Hilleberg氏は、熱心なアウトドア愛好家。従来のテントに満足できず、1971年に自身のアウトドアブランド・ヒルバーグ社を設立しました。
1970年代、ヒルバーグは、3つの大きな成功をおさめます。
ブランド設立からわずか2年後の1973年。インナーとアウターを同時に張ることができるテント・ケブを発案。風にあおられることなくアウターテントも張ることができるテントは、キャンパーたちに広まりました。
続いて、従来の生地に比べて6~7倍の強度があるシリコンをしみ込ませた生地・ケルロン 1500を発案。同社のすべてのアウターテントに採択されるようになります。
ケルロンは、その特別な材質により、小さな穴なら繊維も切れず、少し手で揉むともとの形状に戻るため、丈夫で長持ち。この生地でなくては!というファンの声も多く聞かれます。
この2つの発明は、ブランド設立後50年目を迎える今も、改良を続けながら脈々と受け継がれており、ケブは、本特集で後ほどご紹介するアナリスの原型にもなりました。
ソロから大人数のテント、さらには個別設計にも対応
1977年には、連結できるインナーテントとアウターテントを、敢えて2つの部分に分離できるよう、再構築。画期的なシステムは、まずトンネル型テントに活用され、後にケロンがヒットします。
1989年には、南極探検のために、厳しい自然環境の中でも、自分のテントをすぐに見つけられるマルチカラーのスタイカを制作。1990年から、一般ユーザー向けのドーム型テントの生産を開始します。
1995年には、オールシーズンで使用できる1人用のテントアクトをリリース。広々としたスペースを確保しながらも軽いテントは、その快適さ・手軽さからヒットとなりました。
1998年には、短いポール・スリーブとクリップ・システムを活用したサイボがデビュー。強風にあおられても、複数のポールを交差させて素早く設営をすることが可能に。
信頼性、適応性、使いやすさ、耐久性を信条に、実証実験をくり返しながら、斬新で優れたアイテムをつくりつづけてきたヒルバーグ。現在、テントには、ソロ、2人用、3人用、4人用、グループ用のほか、シェルター仕様のカテゴリがあります。
出かける場所や、ユーザーの経験値に合わせ、それぞれのテントが自然環境で最大のパフォーマンスを発揮できるよう、同社ではレーベルシステムを設けています。
●ブラックレーベル:森林限界を超える標高、雪が降り続く場所、砂漠をはじめ、極めて過酷な環境、どんな地形や天候にも耐えうるレーベル最強モデル。遠征を前提にデザインされているので、長期に渡る酷使、また遠征先でも修理が不要なほど強靭なスペックでつくられています。オールシーズン・モデル。
●レッドレーベル:夏や冬の森林地帯、雨風にさらされることが少ない場所での設営を想定したモデル。究極の強度よりも軽さを優先しているものの、激しい嵐にも耐えうる。長期滞在もできるオールシーズン・モデル。
●イエローレーベル:やや暖かいシーズン、雪が降らない場所を想定したモデル。軽量化を優先しているため、強度はあるものの、完全な吹きさらしや高地、辺境には不向き。
●ブルーレーベル:個別設計
徹底した実証実験に基づいたデザイン。ハイカー信頼のブランド
ヒルバーグ社は、創設時から、常にアウトドア愛好家たちの問題を解決するためにテントをデザインしてきました。
湿気の多いときにテント内の乾燥を保つことができそうか、温かいときに風通しはどうだろう? 荷物を置いてテント内を歩き回るスペースがあるかどうか。悪天候の折、素早く設営するにはどうしたらいいだろう?
同社のデザインチームは、全員が手つかずの自然にも挑むアウトドア愛好家。テントの中で過ごしたときの問題点をもとにCADをひき、プロトタイプを制作しています。
すべての生産部材は、組み立てる何ヶ月も前に発注され、徹底的な品質管理試験を実行。生地の耐摩耗性、防水性、重さ、手ざわり。とくに、アウターテントとフロア面の生地の引き裂き強度を念入りにチェックした後、縫製職人の手に渡ります。
ポールの強度と耐久性、ジッパー、ガイライン、取り付け器具にいたるまで、念入りに試験を実行。
すべての不良部品をチェックしてから、自社運営する生産工場と契約工場と共に組立てます。
大自然の中から生まれるデザイン、幾度となく行われる実証実験を通して、ヒルバーグはハイカーが絶大な信頼を寄せるブランドであり続けているのです。
軽量性を最優先。ハイカーやバックパッカーにも最適なアナリス
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アナリスは、ブランド設立後、はじめてつくられたモデル・ケブにインスパイアされ、つくられた2人用のリッジテント。軽量化と通気性の良さが優先されたデザインです。
アナリスは、先に触れたイエローレーベルに該当。暖かく、雪のない期間、比較的安全な地形での使用が推奨されています。
長さの異なるポールを使用し、軽量化に成功。その分、同社の他レーベルよりもわずかに耐久性をゆずるものの、快適性は十分です。
前後二箇所に配した前室と入り口が、過ごしやすいスペースを確保。インナーには、大型のメッシュパネルを採用。暑いときも最大限の風通しができるよう、アウターテントの一方または両方を完全にオープンすることができる設計になっています。
アウターテント単体で、最小限のシェルターとしても活用できる
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生地は、前述のケルロン1000を採用。同社のレーベルの中では一番軽量でありながら、引き裂き強度は、8kg/17.6lb。一般的なテントの引き裂き強度(2~3kg/4.4~6.6lb)に比べ、かなりの強度を誇ります。
両面が3層の100パーセントのシリコンで覆われているため、もしも設営で小さな穴をあけてしまったとしても、繊維が切れず、少し手で揉むと元に戻すことができます。
アナリスのもうひとつの魅力は、アウターテントだけで最小限のシェルターとして使うこともできる点。全面が接地していない分、横殴りの雨や跳ねた雨水が侵入しやすいケースもありますが、激しい雨風への耐久性は確保。通気性を保つために短めに設計されているので、春・夏の暖かいシーズンでの使用がベストです。
ペグを使わずに樹林に張ることも可能。設営に慣れているハイカーやバックパッカー、登山家に最適のアイテムです。
スペック紹介
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¥ 83,600 (税込)製品コード #12770204
スペック :●付属品/ペグ(YペグUL)×12本、スタッフバッグ、ペグバッグ
重量 :●最小重量/1.2g(総重量:1.4kg)
収容人数 :2人用テント
カラー :レッド、グリーン、サンド(画像はグリーン)
※ポールは別売
すべてのスペックが高品質。これから長く自然と親しみたい人へ
ヒルバーグ社のデザインの特長は、快適さと耐久性。その実用性にあります。
2人用テントで比較すると、価格的にはノルディスク社のAsgard Tech Mini(本体価格 80,000円)と同じぐらいですが、こちらはテントのみの価格で、スペックとのカラーバランスも楽しむというアイテム。大きく違うのは総重量で、Asgard Tech Miniもスペックと合わせて6kg弱と軽量ですが、ヒルバーグ社のアナリスは、1.4kgをマークしています。
連結も分解もできるインナーテントとアウターテントは、同社ならではの魅力。軽量なアナリスは、アウターテントのみの場合、気軽なシェルターとしても使うことができます。ひとつのアイテムで、気軽なソロキャンプから中長期のキャンプも企画できそうです。
劣化しづらい生地を始め、すべてのスペックがハイクオリティのため、全シリーズ通してやや値ははるものの、アナリスは比較的入手しやすい価格。
今回の特集では、他ブランドを含め、過ごしやすいシーズンに向けた軽量なテントをご紹介していますが、出先ではどんな天候に遭うかわからないもの。同社の実証実験をもとにしたストイックな基準では、本来、経験値の少ない初心者こそ、どんな過酷な環境にも耐えうるブラックレーベルがおすすめのよう。イエローレーベルは、キャンプやハイクで設営に慣れている方が、気軽に出かけるシチュエーションを想定しているようです。
これからも長く自然と親しみたい方に、アナリスとと共にブラックレーベルも併せておすすめします。
Aventure編集部