日本刀が起源の佐治武士作ナイフをアウトドアで使う
Aventure編集部
和ナイフといえばまず名が挙がるのが佐治武士氏。伝統技術を生かした和式ナイフ製作の先駆者です。国の伝統工芸士として認められた氏が作る刃物は「佐治武士」というブランドとして確立しています。そんな憧れの「佐治武士」の和ナイフの魅力をたっぷりと紹介します。
越前打ち刃物の巨匠「佐治武士」
国伝統工芸士として認められた佐治武士氏の作る刃物は「越前打ち刃物」と呼ばれるものです。ここでは越前打ち刃物について紐解き、佐治武士氏のプロフィールにも触れていきます。
越前打ち刃物とは
越前打ち刃物は、鎌倉時代末期が起源と歴史ある刃物で、福井県で生まれた、火造り方法による刃物です。 福井では漆器が有名ですが、漆器を作るためには漆がなければ始まりません。漆は漆の木に傷をつけて樹液を集めることで使えるようになります。
そのため、切れ味のよい刃物が必要になるわけですが、そこで生まれたのが越前打ち刃物による鎌や斧でした。 全国の良質な漆を求めて行脚する越前衆の持つ越前打ち刃物の鎌のその切れ味のよさから、全国の行く先々で求められるようになり、越前衆は漆器のみならず鎌の行商も行うようになりました。 現在では岐阜県関市や新潟県燕三条地区が良く知られていますが、越前も刃物の街としての歴史があります。
佐治武士氏プロフィール
株式会社佐治打刃物三代目当主。昭和23年(1948年)福井県越前市で生まれ、44歳の若さで伝統工芸士の認定を受けました。 伝統技術を生かした和式ナイフの先駆者で、国内外からのファンが多く、自ら展示会などにも足を運び、日々新しい技術などを吸収し、アップデートしています。 氏の作る刃物は「佐治武士」というブランドとして確立しています。
佐治武士作 和ナイフの魅力
ナイフにハマった多くの人が魅了される和式ナイフの魅力、中でも佐治武士ナイフの素晴らしさとはどんなものでしょうか。佐治武士のナイフに魅了されていく理由を探ります。
サビることがない
鋼はサビやすいため、個人使用では敬遠されてきましたが、切れ味はよいがサビやすい鋼をステンレスで挟み、サビに強くした多層鋼による最高級の和包丁が生まれ、和ナイフにも引き継がれています。
切れ味のよさ
最高級の和包丁に使われている鋼なだけあり、切れ味は最高。切れ味を左右するのは鋼材と刃型ですが、佐治武士のナイフはそのどちらも持ち合わせています。
耐久性のよさと刃の美しさの共存
異なる鋼材を打ち付けて鍛接している「打ち刃物」なので、使われる鋼材によっては刃こぼれせず、サビにも強いナイフがあります。主によく使われる鋼材は白紙鋼と青紙鋼、青紙スーパーなどがあります。
多層鋼はステンレスで挟み込んで耐衝撃性を高めたり、サビに弱い炭素材から守るという役目もあります。
打ち刃物は温度管理が難しく、温度を間違うと炭素が抜けてしまって鋼がもろくなってしまうため、温度管理などに高度な技術を要します。
別の鋼材を打ち合わせる際に、熱膨張率が鋼材により違うため、どうしても歪みが出ますが、鋼材が冷えてからその歪みを打ち直す必要があります。鍛接はどの工程でも高度な技術が必要とされます。
多層鋼では数種類の鋼材を重ね合わせ折り曲げてハンマーで叩くことを繰り返しますが、その結果、ブレードの表面にはダマスカス紋と呼ばれる木目のような刃紋が現れ、刃の美しさも楽しむことができます。
アウトドアに適したナイフの一部を紹介
武蔵
和式ナイフの中ではかなり有名な「武蔵」。切れ味がよく、フェザースティックを作っても薄くふわふわなフェザーを作ることができます。ガス缶に突き刺して穴を開けても刃こぼれしないタフさもあります。ただし、ハンドルは漆塗りの革紐巻きなので、握りやすさがイマイチという人も。
ハンドルはカスタムして使う人が多いようです。
この写真のユーザーもパラコードでカスタムして使っています。
赤備
両刃で白紙多層鋼のブレードは切れ味がよくサビに気をつけてしっかりメンテナンスすればその切れ味を保つことができます。白紙多層鋼はステンレスより硬度が高く、シャープな切れ味である一方でもろく欠けやすいのですが、研ぎやすくしっかりと食い込むため、バトニングなど、ハードな使用の多いブッシュクラフトにも最適です。
一寸法師
重量92g、さやを含めた重さも134gと軽量、刃長は10cmで、とてもコンパクトで使いやすいナイフです。赤備と同じく、白紙多層鋼が使われています。「よく切れる小刀」というイメージの一寸法師は、コンパクトで取り回しがよいので、主に細かく刃を使う木工に向いています。
蝙蝠
蝙蝠(バット)は、V金10号ダマスカス鋼が使われており、佐治武士のナイフの中では珍しく、とにかくサビにくいのが特徴です。ステンレスだからといって侮ることなかれ。
V金10号ダマスカス鋼は厳選された純度の高い原料鉄を使っており、粘り強いために加工性や鍛造性にも優れています。その上、腐食性がなく耐摩耗性に優れているため、とにかく丈夫で高級なステンレスなのです。
こちらも小さめの作りで、木工にもよし、釣りで魚をさばくのにもよし、です。
アウトドアにも対応できる「佐治武士ナイフ」で新たなアウトドアライフを
佐治武士のナイフは使っている鋼材からもしっかりと研いでメンテナンスすることが必要なナイフが多いのですが、じっくり自分のナイフを育てたい人にはうってつけです。
Aventureでも今まで北欧ナイフを主に紹介してきましたが、和式ナイフも持ってみるとその美しさに惚れぼれします。普通のナイフに飽きたら、次は和式ナイフ、その中でも佐治武士ナイフに手を出してナイフの世界を広げてみませんか。