先行モデルのソロテントをベースに、軽量化を重視したニアック
Aventure編集部
ニアックは、ハイカー信頼のブランド・ヒルバーグ社が開発した3シーズン用テントで、先行のソロテントシリーズ・アクト、エナン、ウナにインスパイアされたモデルです。
イエローレーベルに属するニアックの総重量は1.8kgと軽やか。インナーテントのドアは全面メッシュになっていて、換気性に優れています。前室もあり、広さも十分。子どもとの旅や犬を連れての小旅行にもぴったりです。
シンプルなダブルポール設計で、あまり力のない人でもスピーディに組み立てることができます。この記事では、ヒルバーグ社のソロテント、ニアックについて紹介します。
ハイカーたちが絶大な信頼を寄せるヒルバーグ
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ヒルバーグ社は、熱心なアウトドア愛好家・Bo Hilleberg氏のアウトドアブランドです。
1973年にリリースされたインナーとアウターを同時に張ることができるテント・ケブの成功からわずか2年後の1975年に、従来の生地に比べて6~7倍の強度があるシリコンをしみ込ませた生地・ケルロンが開発されました。
ケルロンは、今回紹介するニアックを始め、同社のすべてのアウターテントに採択されています。
ユーザーの目線から発想し、実証実験を徹底的に繰り返す
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同社のデザイン・チームは、全員がアウトドア愛好家。ユーザーのニーズを想定して、革新的なデザインを生み出しています。
「軽量感も追及しつつ風雨に耐えるにはどんな形のルーフがよいか」「背の高い人がテントの中でリラックスできるか」「テントの中の明るさは十分か」などユーザーの目線からあらゆるケースを想定し、生産に移る前に、様々な環境で実証実験が繰り返されます。
ニアックは、テストスタッフが手つかずの自然の中で250日以上の夜を過ごし、フィールドテストを繰り返したそうです。スカンジナビア半島だけでなく、アメリカ、アルプスやスコットランドにも訪れ、あらゆる天候の下で検証されました。
そうして生み出された圧倒的な強度に加え、快適性を追求した設計に、多くのハイカーたちが信頼を寄せています。
※検証後、組み立ての前にも検品が繰り返されます。詳しくは、アナリスへ。
ヒルバーグ社のソロテントは、現在6種類
ヒルバーグ社のソロテントは、1995年に発売されたアクトを皮切りに、ユーザーの使用目的に沿って、デザインの再構築を重ね、現在、6つのタイプのソロテントがあります。
ニアックは、レッドレーベルのアクトをルーツを持つエナンと、同じイエローレーベルとして3シーズン対応のテントの可能性を追求したモデルです。また、ハイスペックなウナにもインスピレーションを受けつつ開発されました。
この記事では、3つのソロテントを比較しながら、ニアックの特徴を掘り下げます。
ユーザーの経験値と共に提案するレーベルシステム
ヒルバーグ社は、平地から森林限界まで、あらゆるアウトドアシーンに対応するテントを開発しています。創設者からデザイナーに至るまでアウトドアの熟練者が集うヒルバーグ社では、目的地やユーザーの経験値を想定したレーベルシステムが設けられました。
ブラックレーベル |
オールシーズン・オールコンディションに適したモデル。吹きさらし、森林限界を超える標高、激しい積雪、砂漠、砂浜にも耐えうるスペックを備えている |
レッドレーベル |
オールシーズン・モデル。究極の強度よりも重量の軽さを優先。雨風にさらされることが少ない場所、冬季・夏季の森林地帯など、時に急な嵐に見舞われても耐えうるスペックを備えている |
イエローレーベル |
最軽量であることに重点が置かれたモデル。やや暖かい季節、雪のない比較的安全なコンディションでの使用がベスト。吹きさらしや高地、辺境には向かないものの、長期の滞在にも耐えうる強度がある |
ブルーレーベル |
極地科学者や登山探検隊、バックカントリー・グループやボーイスカウトのように、特別なシチュエーションのためにつくられたモデル |
一般的な夏用テントとは一線を画す耐久性。インナーテントは同社最軽量
スウェーデン北部のサレク国立公園の頂にちなんで名づけられた「ニアック」は、3シーズンに向けてデザインされました。ヒルバーグ社のソロテントのラインナップの中でも軽量感を重視したモデルで、イエローレベルに該当します。
イエローレーベルは、森林限界よりも低い比較的安全な環境、雪のない温暖な時期に適したモデル。暑いときも換気性能が発揮できるよう、アウターテントは短めに設計されています。
軽量化を重視したジャンルのため、同社のストイックな基準では、ブラックレーベルなどに比べると吹きさらしや厳しい自然には対応していないとのこと。とはいえ、生地は優れた引き裂き強度のあるケルロン1000、ポールはレッドレーベルと同じ9mmを採用。一般的な夏用のテントとは一線を画します。
特徴
- アウターテントを地面まで届かないように設計することで、雨風からの保護と通気性及び軽量化を両立
- 軽量化のために長さの異なるポールを採用
- 片側を高く/低く設営することで雨風の方向に対するプロテクションを高める
- インナーテントに設置された大型メッシュパネルと短いアウターウォールで常に高い換気性能を実現(寒い環境ではテント内が寒く感じることもある)
- 充分な室内空間を確保しながら可能な限りの軽量化を達成する設計
スペック
- アウターは8kg/17.6lbの引き裂き強度を持つKerlon 1000ファブリック
- 9mmのポール
- 2mmのガイライン
- ヒルバーグ社最軽量インナーテントとフロアファブリック
- 軽量ジッパー
- ヒルバーグ最軽量のトライペグ
- 詳しいスペックは、
ヒルバーグ公式サイトでご確認ください。
先行2種のソロテントの利点を最大限に活用したニアック
ニアックは、軽量かつ強力な3シーズンに対応するソロテント・エナンの可能性をさらに追及したモデルです。
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一方でエナンは、レッドレーベルのソロテント・アクトをベースに、軽量化を図った名作であり、ドイツのアウトドア専門誌「Outdoor」でエディターズ・チョイス賞を受賞しています。
ニアックもエナンと同じイエローレーベルに該当し、換気に優れ、アウターテントにはケルロン 1000、ポールには強靭な9mmのDAC-NSLを採用するなど、多くの共通点があります。違いは、ポール設計。エナンはアクトと同じシングルポール設計、ニアックにはダブルポール設計が用いられています。
ニアックは、レッドレーベルの自立型ソロテント・ウナにも着想を得てつくられました。ウナはダブルポール設計であり、岩場の岸辺や狭い尾根でもスピーディに設営できるモデルで、積雪にも耐えうるドーム型です。専用の前室はついていないものの、インナーテントのコーナーを調整して、仮の収納スペースを作ることもできます。
ニアックは、ウナのドーム型を踏襲しながらも専用の前室があり、ウナと比べて空きスペースにより余裕を持たせて設計されました。ダブルポール設計で素早く設営でき、きちんとポールをホルダーカップに装着し、ガイラインで調整すれば強靭なテンションが得られ、設営後も抜群の安定感があります。
抜群の換気力で、夏場も快適に過ごすことができる
エナン、ニアック共に、ドアは全面メッシュのインナーテント。ニアックの前室は完全に巻き上げることができます。同時にアウターテントのボトムに沿うよう設計されたカテナリーカーブが空気の流れをつくるため、設営後も十分な換気を得ることができるのです。
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生地は、ヒルバーグ社最軽量のケルロン1000。8kg/17.6lbの強靭な引き裂き強度が、強い雨風からテントを守ります。
持ち運びやすい軽さと居住性を兼ね備えたニアックは、子供やペットとの旅にぴったり。一人で広々とくつろぐのもおすすめです。
アウトドアのベテラン勢で、以前ウナを使用していた人からは、前室が加わりより快適になったという声がありました。目の細やかなメッシュ素材も、高く評価されています。
スペック紹介
- 価格 ¥115,500 (税込)
- 製品コード #12770174
- 室内最大高/100cm
- フロア広さ/2.6㎡
- 前室広さ/0.75㎡
- 最小重量(総重量)/1.6kg(1.8kg)
- 収容人数 : ソロテント
- 付属品/アルミポール( φ9mm)370cm×2本
- ペグ( Vペグ)×10本
スタッフバッグ、ポールバッグ、ペグバッグ、スペアポールセクション、リペアスリーブ
※最小重量:アウターテント、インナーテント、ポールだけの重量
※総重量:スタッフバッグやペグ等を含めた重量
詳しいスペックは、ヒルバーグ公式サイトでご確認ください。
まとめ
ニアックは、先行のソロテントのウナと、エナンをベースに開発されたモデルです。
イエローレーベルは、レッドレーベルをベースに開発されるケースが多く、ニアックのベースとなったモデルはウナでした。ウナのダブルポール設計とドーム型のフォルムが踏襲されています。
軽量化をモットーとするイエローレーベルの中では、シングルポール設計のエナンと比べてわずかに重いものの、YouTubeで公開されている以下のチュートリアルを見比べてみると、どちらも設営しやすいモデルのよう。
ニアックは完全な自立式ではありませんが、あまり力に自信がない方でも、スムーズに組み立てることができそうです。
前室を大きく巻き上げることができるため、出入りもラク。敢えて地面まで届かないよう設計されたアウターテントで、暑い時期も適度に外気をテント内に取り込み、換気できます。
ニアックはエナンから3シーズンに適応した強靭で軽やかなタイプであることを、ウナからは安定感を引き継ぎながら、それぞれの利点を活かしつつ、居住性を追求したモデルといえそうです。
Aventure編集部