インタビュー

長野剛織さんインタビュー「ガンプラで培った基準値の高さが、自分の人生を引っ張り上げてくれた」

長野剛織

趣味はあくまで仕事の次に大切なもので、リフレッシュやリラックスといった意味合いで楽しむ方は多いでしょう。
長野剛織さんは、「ガンダムは人生」「自分を構築してくれたものだ」と言います。5歳からハマったガンダムが今の長野さんのモノづくりの基準となっているそうです。「趣味に没頭し、深いところまでいくことで人がついてきて、仕事につながりいいモノづくりができる」と語る長野さんが、どんなスタンスで趣味と向き合い、楽しんでいるかを伺いました。

【プロフィール】
長野剛織
株式会社NOA 代表取締役 / SEVESKIG デザイナー
大分県出身。東京モード学園卒業後、国内大手アパレルメーカー株式会社ワールドに就職。その後会社を移りドメスティックブランドを3年半経験し、2013年にSEVESKIGを立ち上げる。モノづくりの中枢に携わり、素材の持つ質感や風合いに拘った商品を展開。2017年からパリで展示会をスタートし、ガンダムとのコラボやバイクブランド「KAWASAKI」とのカプセルコレクションも展開している。趣味は多岐にわたり、特に熱狂しているのはガンダムとバイク。


小学校5年生でガンプラコンテスト九州部門で優勝

ーー小学生の頃から、ガンダムのカスタマイズにハマっていたとお聞きしました。

 

 
 
 
 
 
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小学生の頃には、すでにガンダムに熱狂していましたね。キッカケは5歳の誕生日にプレゼントされた1/60 MS-06 量産型のザクでした。いとこのお兄ちゃんが私の10歳ほど年上で、ちょうどガンダム世代。彼にただプラモデルを組み立てるだけでなく、色を塗ったりガンダムの顔を作ったり、色んなことを教わるうちにハマっていきました。ジオラマを作るために空き地に落ちている鉄管をパーツに使い、発泡スチロールを溶かして形を整え、こけを上手く使ってアクセントを加えるなど、かなり細かいところまでこだわっていたのを覚えています。

特殊なカスタマイズは家でやると親が心配するので、おもちゃ屋に許可をもらって駐車場の隅を使ってやっていました。今みたいにカスタマイズのパーツが売っているわけではないので、空き地に落ちている鉄管や配線など使えるものはなんでも使って作り込んでいましたね。それこそ、ジオラマやガンダムの完成図を想像して、使えるものを素材にしてできることを何でも作っていく感じです。

ーー小学生の頃から、のめり込むタイプだったのですね。

そうですね。近くにガンダム世代のお兄ちゃんがいたことも大きかったかもしれません。次々と新しい発見があったのが面白かったんです。できることやその方法論を教えてもらい、自分でも応用する日々でした。ただプラモデルを組み立てるだけではなく、ガンダムのテーマとなっている戦争や宇宙のことも勉強して、世界観や背景まで学んでいきましたね。ガンダムのストーリーのベースが第二世界大戦になっており、そこから「ケンカをしない」「人に優しくする」といった人生哲学も学びました。私の中で、ガンダムはロボットアニメではなく人のアニメで、道徳的なことも教えてくれたものです。自分の考えや倫理観を形作ってくれていて、人生の一部になっていますね。ガンダム作者の富野由悠季さんに会いたい、バンダイに入社したいと思っていたくらい、ガンダムが大好きでした。


2012年からバイクの免許を取得

ーーガンダムだけでなく、バイクでもブランドとコラボなどしていますよね。

バイクは独立する1年前に免許を取得したんです。元々そこまで詳しくなくて、「自分の好きなものを作りたい」というガンプラの延長線上のような思いでカスタマイズを始めました。「このエンジンがかっこいいからこのバイクにカスタマイズして取り入れたい」みたいな感じでメンテナンス担当の方と話しながら作っていましたね。一台目のバイクはシャー専用機風にカスタマイズしました。

 

 
 
 
 
 
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ーーバイクにハマったキッカケはなんなのですか?

バイクは全然好きではなかったんですよね。独立すると色んなところに行くようになったのですが、その時に移動手段で電車に乗るのが嫌でバイクの免許をとることになりました。免許をとって買った一台目のバイクをいきなりカスタムしちゃいましたね。

ーー買った瞬間にカスタムするってすごいですね。

モノアイが光るようにデカールも自分でデザインを作って切り出して貼っています。色を塗ってサスペンションを変えたりしたぐらいなので一台目のカスタマイズ度は低いです。一番カスタマイズを加えたのはGL500になりますね。元々はおじさんバイクであまり人気はないものなのですが、フレームも切ってエンジンしか残っていないです。全く違うバイクになっています。

ーーなぜここまでカスタマイズにこだわるのですか?

人と同じものは嫌だからでしょうね。誰も乗っていないものに乗りたいんです。旧車なども魅力ですが、どこかで誰かとおなじになるのが嫌なんですよね。自分でカスタマイズしたバイクに乗りたいという思いが強いです。

 

 
 
 
 
 
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これが伝説的なバイクで、本田宗一郎さんが無理矢理作らせたという逸話がある並列6気筒エンジンを搭載したものです。カスタム2台目なのでガンダムマーク2のカラーリングにしています。この10年で6台くらいバイクを購入していますが、どれもカスタムしたくなっちゃうんです。

ーー経営者として忙しい中でどうやって時間を捻出しているのですか?

主なカスタマイズはメンテナンス屋さんに任せています。エンジンを磨いたり、バイクに色を塗ったりするのは自分でバイク屋さんの中でやりますね。展示会が終わってすぐなど、ちょっと時間が空く時に集中して時間を投下しています。元々カスタマイズを依頼していたバイク屋さんも、当初はカフェスタイルのカスタマイズをやっておらず、モトクロススタイルのカスタマイズがメインでした。その担当さんに「カフェスタイルかっこいいのでやっていただけますか?」とお願いし、第一号のカフェカスタムをやってから一気に広まりました。

日本のDEUSで行われたバイクカスタムコンテストの一般投票で一位になり、担当していたバイク屋さんはカフェカスタムの第一人者的な存在になっていますね。

ーーバイクにハマってどんな変化が起きましたか?
仕事の面では、川崎重工さんからコラボの話をいただいたり、ツーリングで知り合った人から仕事をいただくことも増えましたね。例えば、スペシャルオーダーという、お客さまに完全にフィットする革を作るサービスがあるのですが、その仕事もよくいただいています。また、普段のモノづくりにも活きていて、冬場はバイクに乗った状態で着ても寒くないウェアを作っています。

また、バイクに乗るようになってストレス発散ができるようになりました。地方出張などにいく時は自分のペースで移動しつつ、風を切って走る時に自然を感じられるようになったり、バイクに乗る時に無心になって運転することで仕事のことを考えない時間が生まれました。それがいいリフレッシュの時間になっています。


モノづくりや没頭の基準はガンダム

ーーガンダムが仕事に活きているなと感じるのはどんな点ですか?

物事の奥深さや、追求する深さの基準は5歳からハマったガンダムです。パーツの組み合わせではなく、そもそもパーツを作るところから行った経験が服作りにおいても生地や素材を探求するスタンスになっています。実際に問屋の先のタンナーさんや生地屋さんと膝を付き合わせて話し、服を作るのはとても楽しいですよ。

ーーモノづくりの中枢に携わるというご自身のスタンスにも繋がってくるのですね。

そうですね。現地で話をすることで、一人では考えつかない掛け算が生まれることもあります。そういったことがキッカケでいい服が生まれるんです。私が物事を追求する理由の一つとして、「持つ武器は多い方がいい」という考えがあります。ガンダムの時もそうでしたが、素材の種類や加工方法が増えれば増えるほど、アイデアを実現する速さや難易度・表現の幅は変わります。だからこそ、日本中の色んな方と知り合い、対話を重ねる中でモノづくりも深めていきたいんです。

また、革に携わっており、祖父が猟師だったからかもしれませんが、動物から命をいただくのでジビエの肉もうまく調理して食べてあげたいという思いがあります。実際にジビエは調理方法一つで生臭さがなくなりますし、驚くほど美味しくいただけるんです。それを実感してほしいので、行きつけのジビエ料理屋を紹介することもあります。


多くの趣味に挑戦していれば自然と深いところまで没頭するものに出会える

ーー長野さんのように没頭する趣味を見つけるにはどうしたらいいですか?

色んなことに挑戦することだと思います。私も色んなことに挑戦しているので、趣味は多い方です。その中のいくつかに深くハマっているというのが正しい表現かもしれません。スノボにどハマりしたり、スケートボードの大会に出たりしたこともあります。一つのことに思いっきり没頭した経験があれば、その経験が自分の基準になり、新しいことに取り組んだときも深く探求できるんです。私の場合はガンダムが基準で、ガンダムに深くハマったことでいろんな世界を知れたり、学んだりすることができました。その経験があるからこそ、色んなことに前向きに挑戦できているんだと思います。没頭すればするほど、そこに影響されて人が集まったり、仕事が生まれたりして、より良いものが作れるんです。

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