2022年住宅ローン控除改正の内容を徹底解説、具体的に何が変わるのか?
Aventure編集部
歴史的な低金利により、従来の住宅ローン控除が適用されると逆ザヤとなる(控除率がローン金利を上回ってしまう)ため、2022年から控除内容が見直されることとなりました。改正前と後でどのような違いがあるのでしょうか?この記事では、改正内容や控除率、要件の緩和、最大控除額を解説し、実際に借り入れをした場合の控除シミュレーションをします。住宅購入や不動産投資で住宅ローンを組もうとしている人、必見の内容です。
2022年の住宅ローン控除改正で何が変わったか
2021年末でこれまでの住宅ローン減税は終了となりました。2021年11月30日に契約し、2022年12月31日までに入居する人が、これまでの住宅ローン控除を受けられる人の条件となります。2022年の改正でどのように変わったのでしょうか。大きな変更点は控除率が1.0%から0.7%に引き下げられたことです。仮に3,000万円のローン残高があったとすると、改正前は30万円の控除が受けられましたが、改正後は21万円となります。
また、環境性能に合わせて借入限度額が変わる仕組みが設けられました。「長期優良住宅・低炭素住宅」は2023年の入居で上限5,000万円、「その他の住宅」は3,000万円と開きがあります。環境性能に配慮した住宅であるほど、控除が受けられる幅が広いということです。
この借入限度額は入居年によって変更となります。下の図を見るとわかるように、2023年中に入居をした方が圧倒的に有利です。
参考資料:国土交通省
新築・買取再販の控除期間は10年から13年に延長されています。ただし、改正前の制度では2019年の消費税緩和のために控除期間を13年に延長しており、一時的な期間延長措置が踏襲されたことになります。
床面積要件などの詳細をチェック
住宅ローン控除改正の大まかな内容が把握できました。ここからは、詳細を説明します。
所得要件
所得要件が3,000万円から2,000万円に引き下げられました。所得要件とは、控除を受ける年の合計所得金額のことです。これまでは3,000万円以下が控除を受けられる対象でした。それが2,000万円となったのです。
床面積要件
床面積要件が50㎡から40㎡に引き下げられました。床面積要件とは住宅ローン控除の対象となる家の広さ(床面積)を示しています。40㎡ですので、12坪の2人用マンションタイプでも控除が受けられることになります。ただし、40㎡で控除が受けられるのは2023年までに建築確認をした住宅が対象です。建築確認とは、住宅を建築する際、建築基準法に沿ったものであるかどうかを検査機関が確認するものです。
ここで注意しておきたいのが、床面積が登記所に登録されている正式な登記簿面積を指すということです。この登記簿面積と不動産会社が出している専有面積との間にはズレが生じています。これは不動産会社が慣例的に「壁芯(柱と柱の中心)」で距離を測定する一方、登記簿面積は壁の内側だけで測る「内法」を採用しているためです。従って、不動産会社が提出する面積と登記簿面積は5%前後の違いが生まれます(登記簿面積の方が小さくなります)。
不動産会社が提出した資料の床面積が40㎡ぴったりだった場合、住宅ローン控除を申請しようとしたらできなかったということにもなりかねません。
借入限度額を左右する住宅のタイプとは?
住宅のタイプによって借入限度額が変わるのは見てきた通りです。この「長期優良住宅」や「ZEH水準省エネ住宅」、「総エネ基準適合住宅」とはどのようなものでしょうか。
長期優良住宅・低炭素住宅
長期優良住宅とは、長期にわたって優良な状態を保てるよう図られた住宅を指します。2011年6月に制度化されました。構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理、省エネルギー性などそれぞれに基準が設けられており、クリアする必要があります。例えば、省エネルギー性は2015年4月から、省エネルギー法の省エネ基準よりも、一次エネルギー消費量を10%下回る必要があります。
低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出を抑えるための対策がとられた住宅のことです。2012年12月に都市の低炭素化の促進に関する法律が施行され、低炭素建築物認定制度がスタートしました。都道府県や市区町村から低炭素住宅と認定される必要があります。
ZEH水準省エネ住宅
ZEH(ゼッチまたは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、外皮の断熱性能を大幅に引き上げ、効率的な設備システムを導入することで大幅な省エネルギーを実現した住宅を指します。年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指しています。
全国のハウスメーカーや工務店がZEHのビルダー登録を行っています。一般社団法人環境共生イニシアチブのページでハウスメーカーの名前で検索をかけると、実績を見ることができます。
【ZEHビルダー一覧検索】
https://sii.or.jp/zeh/builder/search/
省エネ基準適合住宅
省エネ基準適合住宅は、ZEHの創エネルギーがないものを指します。住宅は主に太陽光パネルで発電しますが、そのような発電装置はないものの、高断熱でエネルギーを極力抑えているものが省エネ基準適合住宅となります。
マンションの場合、長期優良住宅に認定されているものは少ないと考えてください。これは特に耐震性のハードルが高いことに依拠しています。ZEHマンションの数は増加傾向になっています。
>中古住宅の場合はどうなる?
ここまでは新築住宅を中心に見てきました。中古住宅はどのようになっているのでしょうか。
控除率は新築も中古も変わりません。一律0.7%です。違いは借入限度額と控除期間です。
中古住宅の借入限度額は、認定住宅で3,000万円、その他住宅で2,000万円となっています。認定住宅とは、新築で解説した「長期優良住宅」「低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のことです。どれか一つに該当していれば問題ありません。中古住宅の場合は控除期間が10年となります。
また、中古住宅には新築にはない特有の条件があります。該当しているか確認が必要です。
【築年数】
・耐火建築物の場合、築25年以内であること
・耐火建築物でない場合、築20年以内であること
【耐震基準】
・耐震基準適合証明書を取得した住宅であること
・既存住宅性能評価において耐震等級1以上が確認された住宅であること
・既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入している住宅であること
※築年数の条件を満たしていない場合はこのいずれかを満たす必要があります
この場合で特に問題となるのが、耐震基準です。古い住宅は耐震基準を満たしていないものが多くあります。購入する際は必ず確認してください。
パターン別控除シミュレーション
住宅のパターン別に借入上限でどれだけの控除が受けられるか、シミュレーションをしてみましょう。
※このシミュレーションは独自に算出をしているものです。あくまで目安の一つとして参考にしてください。
【基本データ】
金利:1.0%
※金利の変動はないものとします
借入額:住宅の各タイプ上限
返済期間:35年
認定住宅
借入額:50,000,000円
月間返済額:120,238円
【控除額】
1年目:346,834円
2年目:336,633円
3年目:326,432円
4年目:316,231円
5年目:306,030円
6年目:295,829円
7年目:285,628円
8年目:275,427円
9年目:265,226円
10年目:255,025円
11年目:244,824円
12年目:234,623円
13年目:224,422円
ZEH
借入額:45,000,000円
月間返済額:108,214円
【控除額】
1年目:312,151円
2年目:302,970円
3年目:293,789円
4年目:284,608円
5年目:275,427円
6年目:266,246円
7年目:257,065円
8年目:247,884円
9年目:238,703円
10年目:229,523円
11年目:220,342円
12年目:211,161円
13年目:201,980円
省エネ基準
借入額:40,000,000円
月間返済額:96,190円
【控除額】
1年目:277,467円
2年目:269,306円
3年目:261,146円
4年目:252,985円
5年目:244,824円
6年目:236,663円
7年目:228,502円
8年目:220,342円
9年目:212,181円
10年目:204,020円
11年目:195,859円
12年目:187,698円
13年目:179,538円
中古住宅(その他住宅)
借入額:20,000,000円
月間返済額:577,143円
【控除額】
1年目:138,734円
2年目:134,653円
3年目:130,573円
4年目:126,492円
5年目:122,412円
6年目:118,332円
7年目:114,251円
8年目:110,171円
9年目:106,090円
10年目:102,010円
11年目:97,930円
12年目:93,849円
13年目:89,769円
住宅ローン控除を最大限活用して不動産購入のヒントに
住宅ローン控除の改正は控除率が引き下げられたことが大きなポイントでした。今回の改正では、それ以外に住宅のタイプ別で借入限度額に幅が設けられた点が目立ちます。新築の一軒家かマンションか、それとも中古住宅か。不動産を購入する際は悩みが尽きない要素の一つですが、住宅ローン控除という観点から選ぶ切り口が出てきたことになります。環境に配慮した住宅の控除が暑くなるというのは、SDGsが重視される現代ならではとも言えます。
知識を最大限に活かし、後悔のない住宅を選んでください。