伝説の名機「マランツ7」を紐解く。購入方法やレストアも解説
Aventure編集部
オーディオマニアの中で”伝説”となっている「マランツ7」。真空管アンプの中でも洗練されたボディと音質に魅了され、発売後から20年以上経っている今も多くのユーザーが憧れています。「一度でいいからマランツ7が奏でるサウンドを耳にしたい」そんな想いを抱くオーディオファンも少なくないはず。そこで真空管アンプの最骨頂と言われるマランツ7についてまとめてみました。本記事ではマランツ7の購入方法やレストアまで網羅してご紹介します。
マランツとは
日本マランツ株式会社は2005年に、音響・通信・映像機器メーカーの株式会社D&Mホールディングスと合併し現在は消滅しています。しかし現在でもオーディオブランドとしてパワーアンプやCDプレーヤーなど数々の名機を残しており、オーディオファンの中では”名門メーカー”として称賛されているのです。
マランツの歴史
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1953年にソウル・バーナード・マランツがアメリカにて創業したのがマランツの始まりです。マランツ氏は元々、インダストリアルデザイナーでクラッシクギターやチェロの演奏家としても活動していました。マランツの原点でもあるプリアンプ「オーディオ・コンソレット」は、1945年にマランツ氏が自宅でパーツを組み合わせて制作した初作です。友人に勧められて約100台のデモ販売をしたことがきっかけで誕生しました。やがてマランツ・カンパニーを設立しマンハッタンの東部ウッドサイド地区に工場を開きます。
蓄音機やバイノーラルサウンドなど革命的な技術が開発される時代背景を後に、最初の製品「Model1」が販売されました。「Model1」は、マランツの品質と革新の伝統の礎となり業界内でも高く評価されたのです。
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1958年にはステレオプリアンプの真髄、「Model 7」が登場しました。独自の3段構成のフォノイコライザーアンプを使用し、ハイファイ業界の独占を実現したことで一気に注目を浴びたのです。2年後にはモノラルパワーアンプである「Model 9」を販売。現在のハイファイの歴史においても最高傑作と呼ばれ、知名度を高めました。順調に思えたマランツカンパニーですが、生産コストに対して販売価格が見合わず1964年にスーパーコープ社へ売却されます。生産コストの面からスーパーコープ社は日本のスタンダード工業株式会社と締結され、1975年には「日本マランツ」が誕生しました。
オーディオメーカーとしての業績を上げる中で1980年にはフィリップスがマランツを買収し日本マランツを子会社として迎え入れました。やがてマランツブランドとしてPMシリーズを展開します。一度は「日本マランツ」として確立したものの、高まる競争に対応するために2002年に株式会社D&Mホールディングスと手を組み、デノンとともに経済性の恩恵を受けるようになりました。
今日までに様々な変遷を遂げてきた「マランツ」。しかしオーディオを愛する想いは変わりません。最前線を走り抜けてトップブランドとして今も尚、オーディオ界に君臨し続けています。
マランツの人気モデル
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マランツといえば、マランツ7と呼ばれる「Model7」やパワーアンプの原点でもある「Model9」。革新的な技術を搭載したチューナー「Model10B」などが挙げられます。 オーディオファンが注目するマランツですが、現行ではどんなモデルが人気なのでしょうか?
NR1200
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2019年10月に発売された「NR1200」は、2021年VGP プリメインアンプで金賞を受賞したハイファイステレオアンプです。ダブル・ディファレンシャル構成のD/A変換回路により、透明感の高い空間表現を実現しました。
さらに経年変化や信号の劣化を防止する金メッキ加工を施し、長く愛されるよう配慮されています。
M-CR612
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マランツに受け継がれるデザインエレメントを纏ったエレガントな「M-CR612」は、HEOSテクノロジーを搭載したネットワークオーディオ機器です。Bluetoothはもちろん、AmazonAlexaでの音声コントロールにも対応しています。
実用最大出力60W+60W(6Ω)を誇るフルバランス・デジタルパワーアンプにより、ダイナミックかつ繊細なサウンドを暮らしに届けてくれます。
SR6015
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「SR6015」はアンプの基本かつ、重要な能力でもあるステレオ再生力を高めることに注力して開発されたAVレシーバーです。不要な信号経路の引き回しを排除するHDAM搭載11.2ch電流帰還型回路を装備し、システムの拡張を柔軟にしています。情報量の豊かな透明感のあるサウンドを実現しました。
伝説のマランツ7の特徴
オーディオファンの間でも真空管アンプの歴史的名機として語り継がれている「マランツ7」。オーディオファンの間では考えられないような金額で取引をされている、伝説のプリアンプです。ここではマランツ7の特徴について詳しく解説します。
歴史
1958年12月に発売されたマランツ7。実はマランツ7は発売後すぐに改良され「マランツ7C」として市場に流通しました。生産中に小さな改良を重ねたものの、基本的には同一モデルだとマランツは明言しています。やがて10年の時を経てマランツ7は「7T」まで進化を遂げたのです。1995年にはレプリカを制作し往年の名機を再現し、オーディオファンの胸を高鳴らせました。
シンプルな回路
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マランツ7が注目されたのは、従来のプリアンプとは異なる3段回路構成でした。マランツ独自の技術で「フォノイコライザー部」「音量調整のボリュームとトーンコントロールを配したラインアンプ部」「カソードフォロワーのバッファー部」で成り立っています。シンプルなのに一切の妥協を許さない回路図は、のちに「マランツ回路」と名付けられました。
特にイコライザー部はマランツ7を“名機”と決定付け“芸術”と崇められる所以となっています。現代でもマランツ7のオリジナルを再現するために、マランツ7の回路図を自作するほどオーディオファンの中では称賛されているのです。
初期型番は人気が高い
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マランツ7は、「7C」「7T」と変貌を遂げていますが、やはり初期に販売された「マランツ7」の初期型番は愛好家が注目するほどの製品です。
マランツ7のプリアンプはそれぞれの製品に“10001~23000”番のシリアルナンバーが付けられています。なかでも初期に発売された“10001~17000”番は希少価値が高く、発売から半世紀以上経った現代でも、オーディオファンの間では高値で取引をされているほどです。
マランツ7の比較
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販売期間10年という歳月の中で、変化を遂げながら語り継がれてきたマランツ7の特徴を比較してみました。
発売年 | 概要 | 特徴 | |
#7 | 1958年 | 1965年に製造中止 | 3段階回路を構成 |
#7C | 1959年 | ウッドキャビネットを纏い「C」と名付けられる | 3段階回路を構成 |
#7T | 1965年 | ソリッドステート型 | ノイズの少ないトランジスタ回路を採用 |
#7K | 1979年 | 復刻版(レプリカ)キット | 自身で組み立てるキット |
#7R | 1995年 | 復刻版(レプリカ) | インレット式の電源ケーブル、各国安全規格認定品を使用した温度ヒューズ入りの電源トランス |
#7Kは自作で組み立てるキットですので、オリジナルサウンドに近づけるには専門的な知識が必要です。 当時の工場の移転により「マランツ7」を正確に再現するのは困難な状況といえます。しかし、基本形を崩したシンメトリーなフロントパネルを持った洗練されたデザインのマランツ7は、変遷されても高く評価されています。
マランツ7の購入
発売から半世紀以上経つ今も、多くのユーザーが「一度は耳にしたい名機」と語り、マランツ7を追い求めています。しかし結論から言うと、発売当初のマランツ7のオリジナル品を入手するのは、ほぼ無理といってもいいでしょう。
時代を乗り越えてきたマランツ7は部品の劣化を繰り返しながらも、メンテナンスされながらサウンドが守られてきました。繰り返しメンテナンスを行ったマランツ7は完全オリジナル品とはいきませんが、現在も欲しがるユーザーが多くいます。
購入方法
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現代でマランツ7を購入するとしたら方法は2つ。1つ目はネットオークションでの購入です。ごく稀ですが、マランツ7が出品されています。しかし希少価値が高いためか50万~300万円と、価格帯も広く高値で取引されているのです。
2つ目の方法は専門店での購入です。オーディオ機器専門店ではマランツ7が入荷する場合もあります。専門家により査定が行われた上で価格が付けられており、状態やシリアルナンバーによって金額に差が生じます。
また#7R(レプリカ)や#7K(キット)なら、ネットオークションや海外ECサイトで販売されています。マランツ7よりも後に販売された製品ですから、部品の劣化もそれほど心配ありません。マランツ7と比較すると希少価値は下がりますが、手に入れやすく価格もマランツ7の半額以下で販売されています。マランツ7の回路構造で改造を楽しみたいという方におすすめです。
注意点
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マランツ7はかなり希少価値の高い製品ですから、購入時にはいくつか注意をしなくてはいけません。喉から手が出るほど欲しがるユーザーは山ほどいます。もちろんマランツ7の偽物も出回っていると考えていいでしょう。専門家やオーディオマニアなら内部を開けても偽物と見抜けるかもしれませんが、素人ではマランツ7の偽物を判別するのは難しいかもしれません。特にネットオークションのように現物を確認できないと、騙される可能性も十分に考えられます。
さらにマランツ7の本来の音を復元しようと、部品や真空管が度々交換されるなんてことは当たり前ですから、購入時に改良点を確認しておくと安心かもしれません。メンテナンスと称して、いきすぎた部品交換が施されている場合もあるので注意しましょう。
マランツ7のレストア
古くから名機と称されるマランツ7を再現するには、レストアしなくてはいけません。ただし約60年前の製品ですから、完全に復刻させるのは極めて困難です。
オリジナル部品を使う
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マランツ7のレストアではオリジナル部品を使用するのがベストですが、本体と同様に部品の入手も難しくなります。フリマサイトやネットオークションでオリジナル部品が出品されている場合もあるので、一度確認してみるといいかもしれません。自分でできるのならば、部品の交換を行ってもいいでしょう。しかし専門的な知識と技術を要するので、慣れていない場合はメンテナンスショップに依頼すると安心です。
専門店にて修理
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オリジナル部品にこだわらないなら、専門店にてメンテナンスをしてもらうのも一つの手段です。運が良ければレストアに必要なマランツ7のオリジナル部品があるかもしれません。
また、マランツ7の部品がない場合でも代用部品を提示してくれます。代用できる部品をもとに、どこをどのように交換・修理してもいいのか相談してくれるはずです。マランツ7のサウンドを再現できるための手段としての交換ですから、よく相談するといいでしょう。
一度は耳にしたいマニアが好むマランツ7
オーディオ機器に魅了された人なら、誰しもがマランツ7のサウンドを夢見るはずです。とはいえ、出会える可能性はそう高くありません。マランツ7との出会いは一つの旅といえるでしょう。
ぜひオーディオ専門店に足を運んで、マランツ7を探してみてください。