1万坪の山でも固定資産税は7,000円? 山林の維持費はいくらなのか
Aventure編集部
「プライベートな空間で誰にも邪魔されずにキャンプを楽しみたい」。そんな思いから山を購入するキャンパーが増加しています。都市近郊の山林の1㎡当たりの価格は1,000円~5,000円前後です。仮に1,000円だったとすると、1万坪でも価格は3,300万円ほど。広大な山の絶景を独り占めできると考えれば安いと感じる人も少なくありません。
しかし気になるのは山を維持する費用や税金、そして維持管理にかかる手間暇。いったいどれくらいかかるのでしょうか。この記事では、山の維持管理にかかる費用と時間を解説します。
山林の資産価値はいくらなのか?
気になる山林の税金はどれくらいかかるのでしょうか。
固定資産税
山林の固定資産税は1坪当たり数十円と極めて低く、小さな山林であれば数千円、広い場所でも数万円程度です。仮に1万坪の山林で評価額が1坪50円だった場合、500,000円が課税標準額となります。固定資産税の税率は1.4%ですので、固定資産税は7,000円となります。
自治体にもよりますが、課税標準額が300,000円に満たない場合は非課税となるため、固定資産税がまったくかからないケースもあります。
固定資産税評価額は公示価格の70%を目安として定められています。公示価格は1㎡当たりの価格を指し、1月1日時点の公示価格がその年の3月中旬ごろに発表されます。
非課税となる特例
保安林の場合も固定資産税が免除されます。
保安林は、水源の保持・土砂災害の防止・生活環境の向上などの森林が持つ公益的機能を重視し、機能を発揮することを一般の森林以上に期待されているものを指します。
山林を維持するために必要な要素
山は造林や育林を行うための維持管理が必要になります。これを外部に委託する場合は費用が発生します。
山を美しく育てるために必要不可欠な造林・育林
山は手を入れず放置すると木々がやせ細り、草が茂って倒木や獣の住処になるなど、荒れてしまいます。キャンプをするには絶好の場所を確保する必要があります。最低限の草刈りが欠かせません。
山は家庭の庭などとは違い、生命力の強い草が大量に生えています。草を刈って1か月も放置すればたちまち元の状態に戻ります。定期的なメンテナンスが欠かせません。
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また、山の維持管理で欠かせないのが造林や育林への取り組みです。山は間伐や枝打を定期的に行うことにより、健全な育成が行えます。新たな木を育てるためには植林をし、シカやイノシシに苗を食べられないよう、防護ネットを張る必要があります。太陽の光を入れるため、植林をした場所の草刈りも欠かせません。
立派な木に成長するまでおよそ10年かかり、その間は頻繁に面倒を見る必要があります。 一連の作業は造林・育林と呼ばれ、林業を営む人が日々欠かさず行っていることです。
キャンプ目的で山林を購入した人はそこまでの手間をかける必要はないと思うかもしれません。しかし、山には災害リスクがあります。台風による倒木で家屋を傷つけたり、地盤が緩んで地すべりを起こすことは避けたいもの。山を健全な状態に保ちたいのであれば、造林・育林への取り組みが必要になります。
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維持管理を委託した場合の費用
林業の素人が、木の育成にそこまで手を加えることはなかなかできません。山林の維持管理は所在地の森林組合などに委託することができます。その際は森林組合に加入して組合員になることが必須条件となります。
組合員の加入料金は組合によって異なり、所有する山林の広さにもよりますが、加入時に数千円から数万円を出資し、年間の組合費として数百円から数千円というところが多いようです。 森林施業は組合が見積もりを作成し、委託者と協議して決まります。
山林整備や林業は補助金制度が用意されており、各自治体で申請できます。苗の購入、下草刈り、枝打、間伐など、費用な施業費用はほとんど補助金で賄うことができます。自治体に公示されている補助金制度を必ず確認してください。
山林の交付金制度
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補助金とは別に交付金制度もあります。森林整備地域活動支援交付金制度は、効率的な林業を行うための事業を支援するものです。
自分で山を育てる方法
自然が好きで自ら山のメンテナンスをしたいという人もいるでしょう。いったい、どのようなことをするのでしょうか。主なものを紹介します。
【下刈り】
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不必要な植物を除去する作業です。林業では特に植え付けされた苗木を守るために行います。下刈り機・刈払機と呼ばれる円形ののこぎりついた道具を使うのが一般的です。
【つる切り】
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木にからみついた、くず、藤などの植物をハサミやナイフで除去します。
【除伐】
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姿の悪い木を切り倒す作業です。通常、6月から8月にかけて行います。
【枝打】
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枯れ枝や中途半端な位置にある枝を切り落とす作業です。山全体に光を取り入れるために行います。
【間伐】
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不要な木を切り倒します。木の密度が高くなると、健全な状態が保てなくなります。
【寒伏せ】
苗木を冬の凍害から守るため、地中に埋める作業です。秋ごろに行い、春先に地中から掘り起こします。
【雪起こし】
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雪によって木が曲がらないよう、縄などで固定する作業です。木を垂直に育てるために必須の作業です。
【主伐】
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伐採時期を迎えた木を切り倒して収穫します。 林業に特別な資格や届け出は必要なく、機材を揃えれば誰でもできます。下刈り機、チェーンソー、軽トラックは必須です。
水源の確保や道路を造ることも必要
キャンプで山を利用する場合、水源の確保と道路を整備した方が便利です。水道を引く方法は近くの川水を利用する方法や、雨水、井戸を掘る、近くの上水道管から引き込むなどが考えられます。市街地山林であれば水道が近くにある可能性が高く、条件にもよりますが数十万円で水道を引くことができます。
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川や雨水、井戸は施工業者などとの相談が必要です。時間がかかる大工事であればあるほど高額になります。
山林の購入者は沢や湧き水を上手く活用し、生活用水としているケースが多いようです。
車が通れる道路やキャンプ場、駐車場などの整地をするのに便利なのがショベルカーです。ショベルカーは中古でも2、3百万円と高額ですが、レンタルであれば1日数千円で使えます。免許の取得時間は38時間で、さほど時間もかかりません。山を購入するのであれば、整地や道路を作るのは自分で行うことをおすすめします。
整地する面積が数千坪と広い場合、購入することも検討してください。
山にログハウスを建てても問題ないか?
好みのキャンプ場に仕上げ、次は休憩用にログハウスを建てたい。そうした意向を持つ人もいますが、注意が必要です。土地は何のためのものなのかが定められています。これを地目といいます。地目によっては家を建てることができません。
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家を建てることができる土地は、「宅地」「山林」「原野」「雑種地」です。従って山林は家を建てることができます。ただし、森林法の制限、建築基準法の制限、都市計画法の制限、宅地造成等規制法の制限をクリアする必要があります。自治体それらについて協議する必要があるのです。もし、地目が「農地」の場合は農地法の適用を受けるため、基本的に家を建てることができません。田畑の他、放牧地や果樹園なども農地に含まれることがあるので注意が必要です。
地目が山林に分類されている場合は、以下のようなステップを踏む必要があります。
・建築指導課との協議
・開発審査課との協議
・都市計画課との協議
・林業振興課との協議
・宅地(または雑種地)に地目変更を行う
建築基準法では、建物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接していなければなりません。道路を自分で造成した場合などは、みなし道路の認定を受けるなどの手続きが必要です。
山林はほとんどが市街化調整区域に分類されており、原則としてこの区域では建物の建築が認められていません。そのため、都市計画法上の許可を得る必要があります。市街化調整区域は、駐車場や太陽光発電所の建築は認められています。
売却が難しく固定資産税だけを払うことにもなりかねない
山の購入はアウトドアライフを楽しませてくれるものですが、なかなか売れないという最大のデメリットがあります。山林は宅地と違い、資産価値が低いために買い手がつきにくい不動産です。しかも維持管理費用もかかり、災害リスクもあります。一般的には進んで買おうとする人は少ないと考えてよいでしょう。
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山を買ったはいいものの、仕事が忙しくて思っていたよりもキャンプに行けない。想定以上に維持管理が大変だった。整地をしていた途中で諦めた。このような声が聞こえてきます。慌てて売ろうとするものの、買い手がつかずに固定資産や維持費を払うだけになるのです。もし、売れたとしても、買った値段よりも安くなる可能性は非常に高いです。
山林の売却を考えている場合、近隣の不動産会社や仲介サイトに相談するのが早道です。森林組合に加入しれいれば、手放したいことを話すと良いでしょう。資産価値がどれほどなのか、相談する前にある程度把握しておくことも必要です。現在は査定サイトがあるので、手軽に資産価値を把握できます。
相続者がいない場合を除き、山林の所有権を放棄することは認められていません。購入する場合は相応の覚悟が必要です。
山林を購入して超プライベート空間を確保するのもあり
手つかずの自然で過ごすことにより、サバイバルスキルが身につきます。山をメンテナンスする技や文化を承継することにも繋がります。山を所有することは、究極のアウトドアライフだと言えます。ソロや家族、仲間との特別な時間を過ごせることは間違いありません。
ただし、その分のリスクもあります。じっくりと計画をたて、何を目的として山を購入するのか。購入したらどんなことを実現したいのか。それを明確にしておく必要があります。場当たり的に購入すると、維持管理や税金、売却の難しさなど、手痛い目にあうことになるでしょう。
それらを乗り越えたとき、究極のアウトドアライフが訪れます。