【銘柄研究】業績好調のソニー、強さの源泉と成長可能性を徹底解説
Aventure編集部
ソニーが2022年3月期に営業利益1兆円を突破しました。営業利益率は12.1%。2021年3月期の営業利益は10.6%でした。1.5ポイント上昇しています。ソニーの業績は極めて堅調で、2023年3月期の売上高は前期比14.9%増の11兆4,000億円を予想しています。
かつて液晶テレビの大型投資で巨額の損失を抱え、衰退すると噂されていたソニーが大復活を遂げました。近年の業績好調の背景には何があるのでしょうか?そして、この好業績は今後も続くのでしょうか?
この記事は、ソニーの事業内容やビジネスモデルを解説して好業績の理由を解説し、どの分野が成長するのかを予測する内容です-
ソニーの業績推移
ソニーは液晶テレビに巨額の投資をしていましたが、政府が2009年から導入していた家電エコポイント制度が2011年3月に終了すると、販売台数が急減してバランスを崩しました。
エコポイントが終了した2012年3月期に、4,550億円という巨額の純損失を計上しています。
しかし、2013年11月にPlayStation4を発売すると、累計1億1,700万台を販売する大ヒット商品に成長して会社の業績を支えました。PlayStation4はPlayStation2の1億5,500万台に次ぐヒットモデルです。
■ソニー業績推移
※決算短信より
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/presen/er/archive.html
PlayStation4が通期で業績に寄与する2015年3月期から営業利益率は少しずつ高まります。ここを起点としてソニーは復活するのです。
2023年3月期の売上高は前期比14.9%増の11兆4,000万円、営業利益は前期比3.5%減の1兆1,600億円を予想しています。営業利益率は10.2%。絶好調だった2022年3月期と比較すると2.1ポイント低下していますが、巣ごもり特需の影響を失くしても、2桁の営業利益率は維持しました。
セグメント別の業績
ソニーは現在、6つの事業を展開しています。
・ゲーム
・音楽
・映画
・家電
・半導体
・金融
事業別の売上高、営業利益、営業利益率は以下の通りです。
※決算説明資料より
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/presen/er/archive.html
売上高、利益ともにゲームへの依存度が高いのがわかります。利益率を見ると、音楽、映画などのコンテンツが高い数値を示しています。そして半導体は3番目に利益率が高い事業です。 この事業構造がソニーの戦略の礎になっています。
ゲーム
ゲーム事業はソニーの主力です。売上高の構成比率のおよそ3割。営業利益に占める割合もほぼ同じです。営業利益率は12.6%。権利ビジネスである音楽や映画、シェア率の高い半導体よりは低くなっています。
ゲーム機のPlayStationは競合が少なく、利益率を高めることができます。しかし、開発に向けた投資を重ねる必要があります。また、ソニーはモバイルやPC向けのソフト開発も行っており、ポートフォリオを強固にする分、今後利益率は低くなる可能性があります。
この真逆の戦略を進めているのが任天堂です。自前のハードとソフトをセットで開発・販売する戦略をとっており、ハードがヒットすると利益率が急激に高まるビジネスモデルです。
音楽
巣ごもり特需の影響を大きく受けたのが音楽事業です。売上高は前期比18.8%増の1兆1,169億円。新型コロナウイルス感染拡大が深刻化する前の2020年3月期と比較をすると、31.4%も増加しています。
ソニーはウォークマンなどの再生機器を購入したユーザーに対して、自社の音楽プラットフォームを通して曲を提供しています。利益率が18.9%と高いのは、原価や販管費がかかりにくいビジネス形態をしているためです。
2022年3月期はストリーミングサービスが大幅に増収となりました。
映画
新型コロナウイルス感染拡大によって映画館は営業制限を受けました。
2022年3月期もややその影響を受けたものの、動画配信サービスからのライセンス収入が増加して大幅な増収となっています。 2023年3月期も更なる増収を見込んでいます。動画配信は今後有力なコンテンツの販売チャネルとなりそうです。
家電
一時、ソニーの液晶テレビは廉価な海外製などに押され、販売台数を落としました。しかし、他社では真似できない高価格帯モデルを市場投入し、差別化を図って再び回復基調にのせています。
そして見逃せないのがデジタルカメラ。ソニーはプロ用のデジタルカメラをブラッシュアップし、キヤノンとニコンに追随する高品質なものを生み出しました。AP通信のジャーナリストがソニー製のカメラを採用するなど、第一線で活躍するプロに支持されています。
半導体
半導体は今後、ソニーを支える事業の1つとみられています。ソニーが得意としているのは、イメージセンサーです。これはデジタルカメラや工場のロボットなど、産業機器向けに開発されています。
カメラ用のイメージセンサーにおいてはシェアを43%握り、業界トップに立っています。
金融
ソニー生命やソニー銀行などの金融事業です。ソニー生命は新型コロナウイルスの影響で営業活動の制限を受け、2022年3月期は減収となりました。2023年3月期も減収を見込んでいます。
ソニーの金融事業が大幅に伸びる可能性は少なく、どちらかというと、会社の業績を下支えする縁の下の力持ちです。事実、液晶テレビの失敗で凋落したソニーの業績を支えていたのは、金融事業でした。
なぜ自動車産業に新規参入したのか?
2022年1月にソニーが驚きの発表をしました。世界最大級のエレクトロニクスショーCESにおいてEV車の開発に乗り出すとしたのです。吉田憲一郎社長はSUVタイプの電気自動車「VISION-S 02」を披露しました。
ソニーは3月に本田技研工業と合弁会社を設立することで合意したと発表。6月に合弁契約書を締結しました。出資比率は50:50です。これにより、電気自動車の開発へと本格的に乗り出します。
なぜ、ソニーは自動車開発を行うのでしょうか?
半導体への期待
電気自動車は自動運転などの電子化が進んでいる分野です。自動運転にはソニーが得意とするイメージセンサーが欠かせませんが、自動車におけるイメージセンサーで圧倒的なシェアを握っているのは、アメリカのオン・セミコンダクターです。
オンセミはアウディなどと提携し、自動運転の技術開発を共同で行っています。半導体メーカー単体では開発がしづらい分野です。
ソニーはホンダとタッグを組むことにより、自動車分野でイメージセンサーの開発力に磨きをかけ、シェア獲得を狙っていると考えられています。
自動車のビジネスモデルの転換
自動車のビジネス構造そのものが変化していることも重要です。従来、自動車は移動する目的でヒトが運転するものでした。しかし、今後は移動する目的自体に変わりはありませんが、自動運転でヒトは運転から解放されると予想されています。
そうなると、車はヒトを運ぶ筐体であり、エンターテイメント空間となります。ゲーム、音楽、動画を楽しむ場所になります。これこそソニーが得意な分野であり、利益率も高い事業です。
自動車の将来像から逆算して考えると、ソニーが自動車に参入するのは当然のことなのです。