2022年のものづくり補助金|変更点や審査の加点ポイントを解説
Aventure編集部
深刻な人手不足や働き方改革が叫ばれている昨今。中小企業においては業務の効率化、生産性の向上が急務になっています。
このような実情から国が制度化した補助金が、中小企業の生産性向上への取り組みを支援する「ものづくり補助金」です。
本記事では2022年のものづくり補助金について、従来との変更点や審査通過の加点ポイントを紹介します。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金は「ものづくり・商業・サービス生産性向上推進補助金」の略で、生産性向上を実現する革新的なサービス開発や試作品開発、設備投資支援などが目的の制度です。
ものづくり補助金の対象となる経費の2分の1(新設の枠では3分の2)を補助してもらうことができます。一般的に「ものづくり」と聞いて連想する製造業だけではなく、生産性の向上につながる設備導入なら補助の対象に含まれます。
導入された背景としては、今後複数年にわたって相次いで直面する働き方の制度変更(被用者保険の拡大、賃上げ、インボイス)への対応が挙げられます。
また、中小企業による設備投資などを支援する「一般型」「グローバル展開型」、30人以上が働く中小企業の事業計画策定を支援する「ビジネスモデル構築型」の3つに分かれているのが特徴です。
今回は一般型について解説を進めます。
2022年のものづくり補助金の概要
ものづくり補助金の2022年版の概要として、対象者、応募枠、補助金の上限について紹介します。
対象者
対象になるのは「日本国内に本社または補助事業の実施場所がある事業者」です。
中小企業や個人事業主が対象の制度ですが、2022年は下記の「特定事業者」も対象に含まれます。
【中小企業・小規模事業者】
資本金額 |
従業員数 |
|
製造業等 |
3億円以下 |
300人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
サービス業 ※ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く |
5,000万円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
ゴム製品製造業 (自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円以下 |
900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 |
3億円以下 |
300人 |
旅館業 |
5,000万円以下 |
200人 |
その他の業種(上記以外) |
3億円以下 |
300人 |
【特定事業者】
資本金額 |
従業員数 |
|
製造業等 |
10億円未満 |
500人以下 |
卸売業 |
400人以下 |
|
サービス業 |
300人以下 |
|
小売業 |
300人以下 |
|
その他の業種 |
500人以下 |
応募枠と補助金の上限額
ものづくり補助金は応募枠ごとに補助金の上限額が以下のように異なっています。
このうち通常枠以外の3枠は2022年から新設されたものです。
応募枠 |
従業員数 |
補助金上限額 |
補助率 |
通常枠 |
5人以下 |
750万円 |
原則1/2 |
6~20人 |
1,000万円 |
||
21人以上 |
1,250万円 |
||
回復型賃上げ・雇用拡大枠 |
5人以下 |
750万円 |
2/3 |
6~20人 |
1,000万円 |
||
21人以上 |
1,250万円 |
||
デジタル枠 |
5人以下 |
750万円 |
2/3 |
6~20人 |
1,000万円 |
||
21人以上 |
1,250万円 |
||
グリーン枠 |
5人以下 |
1,000万円 |
2/3 |
6~20人 |
1,500万円 |
||
21人以上 |
2,000万円 |
2022年のものづくり補助時のポイント
2022年のものづくり補助金について、従来とは異なる部分を含めてポイントをまとめて解説します。
2022年のスケジュール
2021年12月に実施された第9次公募の後、10次公募から今回紹介した新制度内容で実施されます。
一般型・グローバル展開型は約3ヶ月ごとに通年で公募を行っていますが、12次以降は公式サイトでもまだ公表されていません。
「応募期間を約2か月、審査期間を約1か月として、6月・9月・12月・3月の四半期ごとに採択発表」という表記のとおり、今後も四半期ごとに継続して募集がかかると考えられます。
【一般型・グローバル展開型】
●10次 公募開始日:2022年2月16日(水)17時 申請開始日:2022年3月15日(火)17時 申請締切日:2022年5月12日(木)17時 採択発表:7月中旬予定 ●11次 公募開始日:2022年5月12日(木) 17時 申請開始日:2022年5月26日(木) 17時 申請締切日:2022年8月18日(木)17時 採択発表:10月中旬予定 |
従業員規模に応じた補助上限額が設定される
2021年まで通常枠の補助金上限は一律で1,000万円でしたが、2022年は従業員数によって上限が決まる仕組みに変更されています。
従業員数21人以上:1,250万円
従業員数6~20人:1,000万円
従業員数5人以下:750万円
5人以下の事業所では以前よりも補助金額の上限が減った一方、21人以上の事業者では250万円の増額になりました。
3つの新しい応募枠が新設
新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)は廃止になり、以下の3つの枠が新設されています。
●回復型賃上げ・雇用拡大枠
●デジタル枠
●グリーン枠
通常枠の補助率が2分の1なのに対し、上記の3枠は3分の2と補助率が高くなっています。
補助対象の事業者が見直された
従来のものづくり補助金対象者である資本金3億円未満の中小企業に加えて、資本金10億円未満の中堅企業も対象に加わりました。 中小企業・個人事業主よりも規模の大きな事業者が申請が可能になっている点が、従来までの制度と大きく異なります。
ものづくり補助金の申請における注意点
ものづくり補助金は申請すればどの会社でも補助金を受け取れる制度ではなく、審査の通過が必須です。
ここでは、審査を受ける前に知っておきたい注意点を解説します。
GビズIDプライムアカウントの取得が必要
ものづくり補助金の申請方法はインターネットを利用した「電子申請」で、電子申請システムの利用には事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。GビズIDは、ひとつのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる認証システムのことです。
申請しても採択されるとは限らない
これまでの採択結果を確認すると、ものづくり補助金の採択率は30%~50%くらいです。申請条件に合致して申し込んだからと言って、必ずもらえる補助金ではありません。
多くの事業者から選ばれるためには、審査の項目に加えて「加点」に関する項目などにも理解を深める必要があります。
ものづくり補助金の審査・加点項目
ものづくり補助金には趣旨に対応した審査項目が定められており、採択を受けるには審査項目・加点項目について理解する必要があります。
審査項目・加点項目は非公開ではなく、公募要領でも公開されているので確認は簡単です。少しでも審査を通過する可能性を高めるため、ものづくり補助金の審査項目・加点項目を知っておきましょう。
まず、基本になる審査要件は、以下の3つの条件を満たす3~5年の事業計画を策定することです。
事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。 (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、 年率平均1%以上増加) ・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30 円以上の水準にする。 ・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。 |
通常枠以外の枠に応募する場合、上記に加えて以下の条件が加わります。
回復型賃上げ・雇用拡大枠:前年度の事業年度の課税所得がゼロであり、使用する従業員が常時いることなど
デジタル枠:DXについての革新的な製品・サービスの開発や、デジタル技術を利用した生産プロセス・サービス提供の改善に該当する事業者であることなど
グリーン枠:温室効果ガスの排出削減についての革新的な製品・サービスの開発や、炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善に該当する事業であることなど
さらにものづくり補助金には次の4つの「加点項目」があります。加点の要件を満たす場合には、忘れずに申請へ反映させましょう。
成長性加点:有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
政策加点:「創業や、第二創業から5年以内である事業者」「パートナーシップ構築宣言を行っている事業者」など
災害等加点:有効期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
賃上げ加点等:給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を立てて事務局に誓約書を提出した場合等