無人島を購入してプライベートキャンプ場を作りたい、気になる維持管理費は?
Aventure編集部
キャンプブームの裏で密かに人気を集めているのが無人島の売買。海に囲まれて完全なプライベート空間を確保できる無人島を手にし、キャンプやバーベキューを楽しむ瞬間は何ものにも代えがたい貴重な時間が詰まっています。フィッシングやサーフィン、サップ、カヌーなど、アクティビティも存分に楽しめることもポイントです。しかし、購入金額よりも気になるのは維持管理にかかる費用や時間です。無人島を買ったはいいものの、インフラの整備や維持管理が追い付かずに手放すケースも見受けられます。この記事は無人島の管理にかかる費用や手間を解説する内容です。
無人島を購入する際のポイント
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夢と現実の差が大きいのが無人島でもあります。ポイントは3つあります。高額になりがちなこと。インフラ整備を自らしなければならないこと。そして漁業組合の協力が不可欠であることです。特に水道や電気、道路、交通手段の確保など、生活や行き来するためのインフラ整備が欠かせません。費用や時間、管理する手間が莫大なものになりかねず、無人島購入を躊躇させる要因の一つになっています。
無人島の一部を購入して費用を抑える方法も
無人島の価格は千差万別です。無人島売買の仲介サイトに掲載されている和歌山県白浜町の小鞠山島(こまりやまじま)の販売価格は1億5,000万円です。面積は3,384㎡で、白浜駅より車で15分、堅田漁港から船で5分の場所にあります。本島から近いために物資を運び込みやすく、インフラ整備がしやすい優良物件です。1億5,000万円と高額の理由は、広さ、アクセスの良さ、白砂のビーチ付き、平坦地付きであることなど、好条件が重なっているためです。
淡路島に隣接する成ヶ島内の土地も売りに出ています。こちらの価格は2,250万円です。無人島である成ヶ島の一部の土地を販売するもので、価格は安く抑えられています。面積は8,872㎡と広大です。自然保護区のために家屋の建設ができませんが、トレーラーハウスやテントの設営は可能で、アウトドアをプライベートで楽しむには十分な場所と言えそうです。
これらは仲介サイトに掲載されたものです。「表に出た土地は買い手が着かなかった売れ残り」と言われる通り、真に優良な土地は仲介サイトに掲載されることはほとんどありません。無人島を専門的に扱っている仲介会社や、島の購入を希望するエリアの不動産会社に相談するのが良いでしょう。
また、無人島の購入ではローンが組めないことにも注意してください。キャッシュ一括払いが基本です。
夢と現実のはざまにあるインフラ整備
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無人島購入で突き付けられるのがインフラの整備。ほとんどの島では水道、電気、ガスのような基本的なインフラが整っていません。トイレももちろんなく、場合によっては桟橋の設置が必要な場合もあります。すべて1人でインフラ設備を計画し、資金を投じて整えなければならないのです。
タレントの清水国明さんは、2013年に山口県屋代島の沖に浮かぶ片島の土地18,900㎡を2,000万円で購入しました。清水さんは1年かけてログハウス、井戸、太陽光発電、バイオトイレなどを設置して人が住める状態を作ったと言います。重機や資材の運び込みには漁業組合や地元の人の協力が不可欠で、信頼関係を少しずつ築きました。こうしたことに喜びを見いだせるかどうかが、無人島を購入することの分水嶺となりそうです。
漁業組合との信頼関係は必須
無人島の購入の目的は隔離されたプライベート空間の確保であり、誰にも邪魔されずに心置きなく楽しむこととしているかもしれません。しかし、現実は全く真逆です。無人島は漁業組合との協力が必須です。そして協力金を支払う必要もあります。組合によって異なりますが、初期に100万円ほど、年間10万円ほどが相場です。なぜ?と思う人がいるかもしれません。
桟橋の設置や海産物を獲るには組合の許可が必要であり、漁業従事者が部外者の無人島への侵入を防いでくれるなど、本島の港にいる人たちとの協力が必要不可欠だからです。近所づきあいをするような感覚で、地元の人たちからの理解を得ることが重要でしょう。
相続税対策で注目される無人島
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無人島の固定資産税は面積にもよって違いはあるものの、2~3万円程度で収まります。どんなに高くても10万円以内で収まります。ただし、家屋を建てた場合はその分の固定資産税がかかります。基本的に税金は山林と同じく安く抑えられます。
実は無人島は相続税対策として注目を集めています。無人島は資産価値が落ちづらいからです。山林も固定資産税が安い土地の典型的な例ですが、無人島は供給不足で基本的には値段が落ちません。タダでも買い手がつかないと言われる山林とは異なります。しかも、インフラを整備した場合はそれだけ価値が高くなります。
固定資産税が山林並に安く、資産価値が下がらない。それが相続税対策に適している理由です。
インフラ整備は自ら行うのが基本
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無人島にはインフラが必要です。トータルで最低でも1,000万円はみた方が良いでしょう。
水道
多くの場合は井戸を掘って水道水を確保します。費用は100万円から200万円程度です。本島から離れている場合は資材の運搬費や工事日数が伸びてそれだけ費用が発生すると考えてよいでしょう。井戸の水を飲み水として使用する場合は、水質検査が必要です。民間企業や保健所などに検査を依頼してください。
電気
キャンプで使用するのであれば、屋外用の発電機で十分です。スマートフォンの充電やPCの利用程度であれば、ガスボンベ型の屋外発電機が数万円で販売されています。ヒーターや炊飯器などを使用する場合は、ガソリンを使った高出力の発電機が必要です。10万円から40万円程度です。
もし、ログハウスを建設して長期滞在することを想定しているのであれば、太陽光発電設備が必要です。建設費用は最低でも300万円程度かかります。
桟橋
船をつけるのに必要な桟橋は、水中工事が必要なために高額になりがちで、200万円から300万円は必要になるでしょう。桟橋の建設は漁業組合が必要で、何らかの制限を受けることが多いので注意が必要です。
2018年にハウステンボスが長崎県の無人島長島にアトラクションを建設する計画を立てましたが、桟橋設置についての海域使用料などの条件が折り合わず、開業の延期を余儀なくされました。担当者が「コミュニケーション不足だった」と説明している通り、無人島の使用と桟橋、海域の使用料など組合との話し合いは絶対に必要なものです。これを疎かにすると、せっかく購入した無人島を気持ちよく使うことができなくなります。
トイレ
無人島のトイレで便利なのがバイオトイレです。微生物の力で排泄物を分解するタイプで、面倒な汲み取り作業がいりません。悪臭がなく、不快な思いをすることなく使用できます。大きさや機能によっても異なりますが、100万円から300万円程度です。
住居
ログハウスを建てるのであれば、最低でも1,000万円程度の費用がかかります。プレハブであれば、100万円から300万円程度で購入できるでしょう。ただし、重機や物資を運ぶための費用が別途かかります。
交通手段を確保する
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島への移動は船が必要になります。自由に行き来しようと思えば、クルーザーと船舶の免許取得が欠かせません。海を航行する場合は1級小型船舶または2級小型船舶の免許が必要です。1級と2級の違いは航行域の差です。2級は海岸から5海里(9.26km)までの範囲内しか運転できません。それ以上離れている場合は1級の取得が必要です。
1級船舶は学科12時間、上級学科12時間、実技4時間の合計28時間です。最短で4日程度で取得できます。2級船舶は学科12時間、実技4時間の合計16時間で最短で2日程度で取得可能です。
1級と2級の一番の違いは海図に関するテストの有無です。1級は遠くの海域を航行できることから、遭難しないために海図を読む力が試されます。
免許の取得費用は1級が15万円、2級が12万円ほどです。
クルーザーは数百万円から数億円まで様々なタイプがあります。本島に停泊する場合は桟橋の利用料なども別途かかります。
無人島のキャンプ場で感触を確かめる
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無人島を購入する前に無人島体験をするのがおすすめです。全国にキャンプができる無人島があります。
和歌山県 地ノ島(じのしま)
JR紀伊本線の初島駅から徒歩7分、初島漁港から船で7分の場所にあります。平日であれば5万円からキャンプが楽しめます。その他、釣りやバーベキューなどもできます。
東京ドーム10個分、ディズニーランドとほぼ同じ大きさで全長400mの美しい海岸を備えています。静かで海の透明度が高く、キャンプ用品のレンタルなども充実しています。ただし、人気が非常に高いためにいつも混雑している印象があります。
宮崎県 乙島(おとじま)
門川港から船で5分、周囲4kmで標高80mの小高い山がある無人島です。釣り、トレッキング、海水浴、カヌーなどのアクティビティの宝庫とも言える場所です。周囲は岩に囲まれており、海岸線には7つの洞窟があります。カヌーで巡る絶好のポイントです。岩礁での釣りも楽しめます。カヌー、釣り道具、サップ、バーベキューセットなどはすべてレンタル可能です。バンガローもあります。
沖縄県 コマカ島
沖縄県南部知念半島の沖合3kmの無人島です。那覇から車で50分、知念海洋レジャーセンターから船で15分の場所にあります。周囲800mほどの小さな島で、コバルトブルーの海に囲まれています。海に潜ると水族館の中にいるような、色とりどりの魚に囲まれる豊かな島です。キャンプ上級者におすすめの手つかずの自然が残されています。
食糧はおろか、薪にする枯れ木も多くはありません。夜の満潮になるとどこに潮が入ってくるか予測できず、海岸近くでのテントの設営は危険です。しかし、美しい夜空がどこまでも広がり、風と波の音に包まれる瞬間は何ものにも代えがたいものがあります。無人島らしさを体験するにはもってこいの場所でしょう。
覚悟が決まれば決して難しくはない無人島ライフ
無人島の購入はポイントを抑えておけば難しいものではありません。プライベート空間でのんびり過ごすというよりは、地元の人と協力をしながら一緒に住む場所を作ることに楽しみが得られそうです。未開拓の地を切り開く楽しさもあり、戦略が求められます。どこか会社を経営することと似ているのかもしれません。