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インフレに強い資産には何がある? 株式や金、不動産が有利な理由

Aventure編集部

「卵は一つのカゴに盛るな」というのは、資産運用における最も有名な警句です。カゴを落とせばすべての卵が一度に割れてしまいますが、別々のカゴに入れておけば他の卵は割れません。すなわち、分散投資の基本的な考え方を示しています。株式、債券、不動産、金など、保有する資産を分散すれば、ブラックスワンと呼ばれるありえない市場変動が起こっても資産へのダメージは軽微に抑えられる可能性は高まります。FRBが2021年11月からテーパリングを開始すると決定したことからも、経済はインフレ時代へと移行する可能性が見え始めました。この記事ではインフレに強い資産にはどのようなものがあるのか解説します。


インフレとデフレの違い

2008年8月にアフリカのジンバブエ共和国で100兆ジンバブエドル紙幣という天文学的な高額紙幣が発行されました。これほどの高額紙幣は世界の歴史上、類を見ません。ちなみに100兆ジンバブエドルは当時の為替相場で日本円換算すると2,500円程度です。つまり、この時期のジンバブエはハイパーインフレと呼ばれる経済危機が襲っていたことになります。この背景には、ムガベ政権が白人の地主と黒人の労働者という構図を覆すべく、農地収奪を合法化するという暴挙に出たことがあります。至るところで暴力事件が巻き起こり、外資系企業は逃げるように退去しました。

農地管理のノウハウに欠けていた黒人労働者はこれまでのように農産物を生産することができず、海外の企業が撤退したことで食糧・物資不足が深刻化しました。売るものがなければ、通貨に価値はありません。紙幣が紙屑同然になるのも当然でした。過度なインフレが起こると経済活動に支障が出るため、通貨を切り下げる措置をとることがあります。2008年8月にジンバブエは通貨を100億分の1に切り下げました。円で言えば100億の銀行預金をしていた人が、ある日突然1円になったことを意味しています。

良いインフレだった日本のバブル景気

インフレは物価が上昇して通貨の価値が下がることを意味しています。日本銀行は消費者物価上昇率2%を目標として大胆な金融緩和策をとっています。安倍政権が終焉を迎えた後も、日銀はこの目標を追いかけており、金融緩和を実施する根拠になっています。物価上昇率を目標としているということは、日本は意図的にインフレを起こそうとしているということです。

ジンバブエは悪いインフレの典型的な事例ですが、適度なインフレは経済にとって決して悪ではありません。物価が上がる、企業が儲かる、給与水準が上がる、消費者の消費意欲が湧く、モノが売れる、企業が設備投資を拡大する、雇用が促進される。このような循環ができるためです。インフレは程度にもよりますが、好景気と言い換えることができます。良いインフレの一番身近な例は日本のバブル景気です。

1989年12月29日の日経平均株価は史上最高の3万8,957円を記録しました。2021年11月18日の日経平均は2万9,598円です。今よりも1万円ほど高かったことになります。現在は日本銀行が金利を歴史的な水準まで下げ、ETFの購入も行っています。つまり、株価は意図的に引き上げられている側面があります。バブル期の日本は今のような金融緩和はもちろんなく、純粋に企業が稼ぐ力の強い時代でした。この時代の世帯年収の平均値は664万円、現在は552万円です。今よりも所得水準が20%高かったのです。

都市銀行の住宅ローン金利は8%を超えていました。今のメガバングの住宅ローン金利は0.4%~0.6%ほどです。企業の稼ぐ力が強く、給与水準が上がり、物価は年2%程度上昇していました。それだけ消費意欲が旺盛だったのです。

日本は世界でも類を見ないデフレ国

日本は今、深刻なデフレに陥っています。デフレとは、物価が上がらず、給与水準が低い状態に留まることを指します。日本がデフレに陥っている原因は諸説ありますが、バブル崩壊後の不良債権処理が進まず、金融システムに不安が広がったことなどが挙げられています。

物価が安いことに慣れ切った日本は、値上げに対して非常に敏感です。それを象徴する出来事が2021年10月の牛丼松屋の「牛めし」の値上げ。たった60円の値上げですが、その月の客数は前年同月比で10.3%も減少しました。企業はとても値上げができるような状況ではありません。金融緩和で銀行からの資金は借りやすくなったものの、設備投資をする気運が高まるとは言い難い状況です。デフレはすなわち不況と言い換えることができます。


コロナ禍でインフレ懸念が高まった理由

新型コロナウイルス感染拡大で世界景気は一気に低迷しましたが、2021年後半に入って回復の兆しが見えてきました。アメリカではその勢いが強く、2021年10月の消費者物価指数が前年同月比6.2%もの上昇となりました。9月は5.4%の上昇で高水準だと言われていましたが、10月はそれをはるかに上回ったのです。労働統計局は食品や住宅、中古車、トラックの価格が上昇しているとしています。変動の大きい食品や燃料コストを除いても物価は4.6%上昇しており、消費者の買い物意欲が旺盛になっていることがわかります。

失業率も改善しています。2021年9月の失業率は4.8%で市場予想の5.1%を上回りました。失業者数は前月から71万人減少し、就業者数が52万6,000人増加しています。景気の回復が鮮明となっており、アメリカは量的緩和策の出口戦略の一つであるテーパリングを実施すると発表しています。

一方、日本の物価指数の戻りは強くありません。2021年9月の消費者物価は0.1%の上昇に留まりました。1年6カ月ぶりのプラスとなりましたが、日銀が目標に掲げる2%を大幅に下回っています。

日本がアメリカのようなインフレになる懸念は今のところありません。しかし、景気はデフレとインフレのサイクルを繰り返すことが知られており、それをコントロールするのが政府や中央銀行です。意図的にインフレを起こそうとしている以上、いつかはその日がやってきます。

インフレになることを視野に入れた資産形成が必要です。


インフレに強い資産は?

インフレに強い資産にはどのようなものがあるでしょうか?

※ここで例に挙げる金融商品は資産価格の上昇を保証するものではありません。自己責任の範囲で投資を行ってください。

株式(株式型投資信託)

インフレに強い資産で第一に挙げられるのが株式です。好景気によって企業は稼ぐ力を得られます。利益が出るようになると、株価は上昇します。そのロジックは比較的単純です。株価を支える指標の一つがPER(株価収益率)です。これは株価を1株当たりの純利益で除した値です。

例えば、株価が10,000円で1株利益が1,000円の銘柄があったとします。このときPERは10倍です。この会社が稼ぐ力をつけて1株利益が10倍の10,000円まで上がったとします。PERは10倍なので、株価の理論値は100,000円まで上昇することになります。

PERは業種や企業規模などによって変化しますが、スキャンダルや経営危機などよほどのことがない限り、乱高下することはありません。従って、利益水準が拡大すれば株価は上がることが期待されます。

好景気は特に食料品、自動車、住宅・不動産の価格を上昇させます。この周辺の銘柄は利益を出しやすいようになるかもしれません。一方、電気、ガス、鉄道などの生活に必要なインフラは好景気で値段を上げづらい業種であり、恩恵を受けにくい可能性があります。

インフレは貨幣価値が下がることを指します。金は現物資産と呼ばれ、最も安全な資産の一つと言われています。それはかつて金本位制時代に現金の信用力を裏づけるものとして、金が用いられていたことが物語っています。金は貴金属類から工業用品、医療機器など様々な分野に活用されています。つまり、それだけ需要があるということです。その分、価格が下がりにくいという特性があります。物価の上昇とともに、資産価格が上がる可能性は高いと考えられます。

よく、戦争が起こったら現金を金に変えろと言われますが、これは敗戦によって通貨が価値を失い、ハイパーインフレになった場合を想定しています。第一次世界大戦中のドイツは戦費の調達を国債に頼っていました。ドイツが戦争に勝利すれば賠償金を得られるため、通貨の信用力が担保されていたのです。しかし、戦争に負けて巨額の賠償金を支払うこととなり、通貨が乱発されて価値を失うことになりました。敗戦したドイツ国民が大量の札束を前にして呆然としている姿を教科書で見た人も多いかもしれません。敗戦によるハイパーインフレです。

ハイパーインフレに陥った場合でも金の価値は保証されると考えられます。このような経済危機においては、株式よりも金の方が安全性は高いでしょう。

土地・不動産

土地はバブル期の日本で価格上昇が過熱したものの一つです。特に日本の土地神話は根強く、デフレ下においてさえ高値で取引される傾向があります。好景気となればなおさらです。ただし、土地の価格はバブル崩壊とともに急速に勢いを失いました。その土地を担保にしていた借金が裏づけを失い、大量の不良債権が積み上がったのは周知の通りです。

インフレ時は土地価格が急上昇して高値掴みをする可能性があります。また、借金の金利も高くなっていることが多く、慎重な判断が必要です。

国債・社債

株価が上がると債券価格は落ちるのが定説です。好景気によって金利水準が上がると、債券価格は下落します。これはすでに流通している債券の利回りが低くなり、従来の魅力を失うためです。投資家は新しく発行された債券を手にする方が高利回りを期待できます。すでに発行された債券を持っている人は、価格を下げて売却しようとします。これが金利が上がると債券価格が下がる基本的な考え方です。

ただし、債券は政府が発行するインフレ変動債や変動利付債など、物価上昇の影響を受けにくい金融商品もあります。特にアクティブ型の債券ファンドはそのノウハウが十分に蓄積されています。投資信託を通して投資ができます。
株価が上昇しているからといって、集中投資するのは危険です。バランスよく資産形成を行ってください。


分散投資で市場の大変動に備える

インフレとデフレの違いを理解すると、何に投資をすべきなのかが見えてきます。最も重要な考え方は、分散投資です。インフレが予期されるからといって、株式投資に偏るのは危険です。債券、不動産、実物資産などへ一定の割合で投資するのがおすすめです。

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