特徴的なデザインとサウンドが魅力!Ovationのギターを徹底解説
Aventure編集部
Ovationのギターは美しく特徴的な見た目と独特のサウンドで世界中のギタリストに愛されてきました。とくに1970年代から1990年代にかけて、エレクトリックアコースティックギターの代名詞的な存在として語られ、今もなおその人気は衰えません。この記事ではOvationのギター誕生の背景を振り返りながら他のギターとは異なるOvationのギターの特徴を紹介していきます。
Ovationの歴史
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Ovationはヘリコプターの製造などをおこなっていたカーマンエアクラフト社の子会社としてスタートした会社です。当時の社長であるチャールズ・カーマンがギターの愛好家であったことや、これまでのヘリコプター製造の技術がギターの製造に役立てられそうだったということから、1965年からギターの製造を始めました。
Ovationのギター製造を担当した技術者たちは、当時の一般的な木製のアコースティックギターにはいくつかの問題点があると考えていました。
1つめは、ギターのボディ内部に配する補強材であるブレイシングが、音の減衰と不要なノイズの発生の原因となっていることでした。ブレイシングはその形状によってアコースティックギターの音色に大きく影響します。そのため、これまでに各メーカーから様々な形状のブレイシングが考案されていましたが、それでもOvationの技術者たちはブレイシングが配されたギターの音色は理想的ではないと考えていたのです。
2つめは、ギターのボディに使う素材の厚みの問題です。ギターの音を最大限に増幅させるためにボディを十分に振動させるには、厚みが薄い素材でボディを作る必要があります。
しかし、よく響くように理想の薄さにすると、これまでの木材ではボディの強度が保てないことが問題でした。
3つめの問題点は、木材の表面は多孔質であるため音の反響が良くないことです。ボディの内部でギターの音を反響させる際に、多孔質な木材の表面がOvationが理想とする反響の妨げとなってしまうのでした。
4つめの問題が、木材が天然素材であるということでした。天然素材である木材を使ったギターは個体差があることはもちろん、温度や湿度などの環境の変化を直接受けてしまいます。
これらの問題点を解決すべく、Ovationの技術者がギターのボディ材に選んだのがリラコードと呼ばれるグラスファイバー製の強化プラスチックでした。リラコードは強度に優れており、ブレイシングを配さずに薄い素材でボディ背面を作っても十分な強度が保てます。木材と異なり、表面はなめらかなので音の反響の妨げにもならず、人工素材のため個体差も生まれないのです。Ovationの技術者は、ボディ材にリラコードを使うことでこれまでのアコースティックギターの問題点をすべて解決しました。
その後も理想的なボディ形状や特徴的なサウンドホールなど、様々な試行錯誤がなされたのち、1960年代後半にOvationのギターは世に送り出されました。
Ovationのギターの特徴
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Ovationのギターはエレクトリックアコースティックギターの代名詞として1970年代から1990年代にかけて世界中のギタリストに愛されました。エレクトリックアコースティックギターとは、エレアコとも呼ばれるギターの種類のひとつで、アンプに接続してエレクトリックギターとして使用できるだけでなく、アコースティックギターのように生音でもしっかりとした音量が出るギターのことです。
ここからは、多くのギタリストを魅了してやまないOvationのギターの特徴を紹介していきます。
リラコードが使われたラウンドバック形状
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1960年代の開発段階で技術者たちが音響面を徹底的に研究し、音響的にもっともギターに適した形として、ボディ背面に丸みを持たせた形状が採用されました。この丸いボディはラウンドバックと呼ばれており、Ovationのギターが持つ特徴のひとつと言えるでしょう。本来音響的に優れていることから採用されたラウンドバックですが、ギターを構えたときのフィット感の良さにも繋がっており、多くのギタリストを魅了している要因のひとつでもあります。
ラウンドバックを採用しているOvationのギターにはグラスファイバー製の強化プラスチックであるリラコードが使用されていますが、温度や湿度の影響を受けないことから常に一定のコンディションを保てるのも魅力です。ただし、ネックや指板は木製、モデルによってはボディの表側であるトップ材にも木材が使われているので、一般的な木製のギターと同じくしっかりとしたメンテナンスは必要です。
リーフホール
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一般的なアコースティックギターにはボディ内で反響させた音を外へ放つサウンドホールと呼ばれる穴がボディの中央にありますが、Ovationのギターはリーフホールと呼ばれる特殊なサウンドホールが採用されています。
ギブソンのエレアコの代表モデルであるES-335に採用されているFホールと呼ばれるサウンドホールは他のモデルでもよく見かけますが、リーフホールはOvationのギターならではの特徴です。リーフホールは個性的な見た目を演出しているだけでなく、Ovationのギターサウンドの特徴のひとつである高音と低音のバランスが取れたサウンド作りに寄与しています。
エレアコにはめずらしい24フレットモデル
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Ovationのギターの中には、エレクトリックアコースティックギターには珍しい24フレットモデルも存在しています。これは通常のサウンドホールではなくリーフホールを採用したことでボディ中央近くまで指板を伸ばすことができたため実現しました。
プリアンプ搭載
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Ovationのギターはエレクトリックアコースティックギターなので、アンプに繋いでエレクトリックギターとして演奏できます。その際に便利なのがボディに搭載されたプリアンプです。アンプに繋いで演奏する際の音質向上を担っているほか、イコライザーで音質の調整が可能です。手元で細かく音質の調整ができるのは、実際にライブ会場でギターを演奏するプレイヤーにはありがたい仕様でしょう。
どんな音色をしているのか
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Ovationのギターサウンドは、ギタリストの間では「Ovationの音」と言われているほど特徴的な音色を持っています。丸くて豊かなサウンド、パワフルでレスポンスがいいなどと表現されることがあるOvationのギターの音色は、グラスファイバー製の強化プラスチックであるリラコードを使ったラウンドバックのボディ形状が大きく影響しているようです。
ラウンドバックとリーフホールという特殊な形状のため、ハウリングしにくいこともこのギターの特徴と言えるでしょう。
人によって好みが分かれる音と言われることもありますが、Ovationのギターの音色に魅了されるギタリストが多いことは事実です。
ボディの厚みの種類
Ovationのギターにはボディの厚みが異なる3種類のモデルが存在しています。
基本となるMid Depthは低音と高音のバランスがいい中間の厚みを持つモデルです。最も薄いSuper Shallowはエレキギターと形状が近く、立ち上がりのいい高音域が特徴的で、最も厚みのあるDeep Contourは豊かな低音域の響きが特徴に挙げられます。
どういったキャラクターの音色のギターを必要としているかや、普段エレキギターを使っているのかどうかなど、プレイヤーが求める条件に合わせて選べるようになっています。
代表モデル2種
ここからはOvationの代表モデルを2つ紹介します。Ovationの代名詞ともなっている2モデルの特徴を解説していきます。
Adamas
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Ovationの最上位モデルであり、OvationのギターというとAdamasを思い浮かべるギタリストも少なくないでしょう。
ボディ背面のラウンドバック部分はリラコード、ボディの表側であるトップ材にはカーボンファイバーを採用していることが特徴で、ボディには木材を使用していません。1本ずつハンドメイドで作られていることも最上位モデルであるAdamasの特徴です。
プリアンプは下位モデルとは異なるOP Pro Studioが搭載されています。OP Pro Studioにはエキサイター回路が搭載されており、倍音成分の強調具合の調整が可能です。厚みのあるコード感を演出したりソロの音圧を上げるなど、プレイヤーの思うサウンドを実現するために活躍するでしょう。
Adamasには、リバースブルーバーストと呼ばれるOvationの代表的なカラーリングを始め、様々なカラーが用意されています。カーボンファイバー製のトップの表情は独特で美しい佇まいをしており、その美しさはAdamasの魅力のひとつといえるでしょう。
とくに1970年代から1980年代のヴィンテージAdamasのサウンドに魅了されているファンは多く、この時期のAdamasはいまだに世界中で高い人気を誇っています。
Celebrity Elite
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Celebrity Eliteは、AdamasとともにOvationを代表するモデルのひとつです。見た目は最上位モデルのAdamasとほぼ同じで、Ovationのギターの大きな特徴であるラウンドバックやリーフホールを採用したモデルでありながら、素材やピックアップ、プリアンプなどの各パーツを変更し、価格を抑えたエントリーモデルです。
Adamasと同じくリラコードを使用したラウンドバックを採用していますが、ボディのトップ材にはメイプルやスプルースなどの木材を使用しています。トップに美しい表情が特徴のエキゾチックウッドをラミネートしたモデルもあり、Celebrity Eliteの中でもとくに人気があります。
Ovationを使用しているアーティスト
Ovationのギターはジャンルやプレイスタイルかかわらず、様々なアーティストに使用されてきました。
海外ではブライアン・メイやジョン・ボン・ジョヴィ、ジョニー・サンダースなど、ロックシーンのギタリストに愛用されました。国内では、浜田省吾や尾崎豊などのシンガーソングライターを始め、Charや松本孝弘などのギタリストがアコースティックで演奏する際に使用されています。最近ではシンガーソングライターの崎山蒼志やAnlyなど、若いアーティストにも使用されていることで再度注目を集めています。
見た目もサウンドも独特のギター、Ovation
Ovationのギターはグラスファイバー製の強化プラスチックであるリラコードを用いたラウンドバックやリーフホールと呼ばれる特殊なサウンドホールなど、特徴的な外見を持っています。これまでのギターとはまったく異なるアプローチで設計された結果、Ovationのギターは独特のサウンドを持っており、世界中のファンを魅了し続けているのです。
経年による音質の変化もファンの間では注目されており、もしOvationのギターが気になった方はぜひ楽器店で実際に手にとってその音色を確かめてみましょう。