ビリー・シーンのサウンドを再現!YAMAHAのAttitudeを徹底解説
Aventure編集部
YAMAHAのAttitudeシリーズは1990年にMR.BIGの伝説的なベーシスト、ビリー・シーンのシグネチャーモデルとして生まれたベースです。ビリーとYAMAHAの共同開発によりビリーの理想の音を忠実に具現化することに成功しました。今回はそんなこだわりが詰まったAttitudeの歴史や仕様、特徴について詳しく解説します。
Attitudeが生まれた背景
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Attitudeは伝説のベーシストであるビリー・シーンがYAMAHAと共同開発して生まれたベースです。ビリー・シーンはロックバンドMR.BIGのメンバーでロックシーンでは誰もが知る存在。そんなビリーがプロデュースするAttitudeは1990年のファーストモデル誕生以来、30年に渡り多くのベーシストを魅了し続けています。
かつての愛機”ワイフ”
ビリーが初めてベースを手にしたのは高校生の頃でした。その頃愛用していたのはフェンダーのプレシジョンベースです。ビリーはこのベースを自分好みにカスタムし、独自の音作りをしながら長年に渡り使い続けました。具体的にビリーが行っていたカスタムはギブソンのEBOハムバッカーを搭載したことや、テレキャスター・ベースのネックを取り付けていたことが挙げられます。指板にスキャロップド加工を施していたことも有名です。
このように、さまざまな自分好みのカスタムを行い、長い月日をともに過ごした愛器をビリーは「ワイフ(妻)」と呼んでいることはファンの間でも有名です。Attitudeはこのワイフからインスピレーションを得て、ビリーこだわりのサウンドを実現することに成功しました。
Attitudeの特徴
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AttitudeはYAMAHAの技術によりビリーのこだわりの音色、理想のベースを完璧に具現化しています。ここではそんなAttitudeのベースの特徴について紹介します。
ウーファーピックアップ
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Attitude最大の特徴と言えるのがピックアップ構成です。ビリーモデルのベースに欠かせないのが「ワイフ」時代から取り付けていたというウーファーピックアップです。当時はフェンダー・プレシジョンベースにギブソンのEBOハムバッカーを取り付け、ウーファーピックアップとして使用していました。
Attitudeでは初期モデルから2基のピックアップが搭載されています。ウーファーピックアップをフロント側に取り付け、2つのピックアップを別々に鳴らせるよう出力ジャックも2系統整備されているのが特徴です。
発売当初のモデルはDiMarzio社の特製ピックアップを搭載していましたが、現在市販されているモデルで使用しているのはYAMAHAが設計しDiMarzio社が製造したオリジナルのウーファーピックアップです。このYAMAHAオリジナルのウーファーピックアップは、ビリーのサウンドを再現するのにとても重要な役割を果たしています。
ビリーが開発に一から携わり、ピックアップの材料からコイルの巻き数までとことんこだわり設計しました。その結果、ビリーも納得の迫力のある重低音を実現することに成功したのです。
スキャロップド加工
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ビリーらしいサウンドを忠実に再現するための特徴として、Attitudeの指板にはスキャロップド加工が施されています。指板のスキャロップド加工とは指板をえぐるように削ったもので、ビリーの代名詞である速弾きに適している加工です。えぐれた指板の見た目がスキャロップ(ホタテ貝)に似ていることが名前の由来だと言われています。
ハイポジションのフレットの細さ
Attitudeにはジャンボフレットとミディアムフレットの2種類のフレットが使われており、より細いミディアムフレットを17〜21のハイフレットに採用しています。フレットが細くなることで、ビリーのような手が大きな男性でもハイフレットを押さえやすくなるのが大きな特徴です。
この工夫は他のベースにはない仕様で、ビリーのパフォーマンスへのこだわりを感じられる仕様でもあります。
強度を上げたネックジョイント
Attitudeはこれまでに改良を重ねながら新しいモデルを発売し続けてきましたが、近年のモデルは大きな改良ポイントとしてネックのジョイント方式が変更されました。
これはネックを裏側から前に押してネックを反らせ、弦の張力を変えることで音程を変化させる「ネックベンド奏法」を好むビリーならではのこだわりです。ネックベンドを多用するとネックに大きな負担がかかるため、ネックとボディの接合部分をより強くする必要がありました。
新しく採用されたマイター・ボルティング方式は、通常の3点止めのボルトオン・ネックに加えて、斜め45度にボティとネックを止めるボルトを取り付けています。これによりネックの強度が上がっただけではなく、弦振動の伝達性が向上して鳴りが良くなっています。
ビリー・シーンこだわりのサウンド
ビリー・シーンがYAMAHAと共同開発したことで、Attitudeにはビリーがこだわったサウンドやプレイアビリティが備わっています。ここからはそのサウンドやプレイアビリティへのこだわりを紹介します。
Attitudeの仕様でビリーのプレイスタイルを再現できる
世界屈指のベーシストとして必ず名前が上がるビリー・シーンは、ベースを始めた当初から独自のプレイスタイルがあることで有名です。ビリー・シーン奏法の特徴として速弾き、スリーフィンガーピッキング、タッピングの3つが挙げられます。
Attitudeの仕様はビリーのプレイスタイルを意識して、こだわりのサウンドを表現するために施されたものばかりです。
その一例として、指板のスキャロップド加工が挙げられます。ビリーの代名詞である速弾きがしやすく、軽いタッチで音が出せるプレイアビリティを備えています。実際にスキャロップド加工をギターではなくベースに施しているのは珍しく、ビリーモデルのAttitudeならではの特徴です。
ビリーのサウンドを体感できるAttitude
独自のプレイスタイルを確立したことにより、ビリーが生み出すサウンドもまたオリジナリティの高いものとなりました。ビリーはYAMAHAとともにAttitudeの開発に携わるにあたり、「Attitudeのベースを手に取る人には自分と同じ音を感じてほしい」という想いを話しています。そのため、ビリーがパフォーマンスで使う仕様と全く同じものを製品として流通させているのです。
YAMAHAもビリーの想いに応えるべく、苦労したといいます。製品として量産するすべてのAttitudeのクオリティーを保つことは容易ではありません。成功するまでには相当な努力と工夫が必要であったでしょう。
廉価版モデルにもこだわりのサウンドが
こだわりの詰まったビリー・シーンモデルのAttitudeは決して安価なベースではありません。20万円以上の価格帯はYAMAHAベースの中でもハイグレードなシリーズと言えるでしょう。
Attitudeは廉価版モデルも発売しています。廉価版ながら上位モデルと同じ加工が施され、力強いサウンドが出せると評価の高いモデルです。手軽にビリー・シーンの音を体感してみたいという人は廉価版から試してみるのもおすすめです。
Attitudeシリーズ30周年記念モデル
最後に2020年に発売されたAttitudeの最新モデルを紹介します。
Attitude 30thAnniversaryはYAMAHAでビリー・シーンモデルのベースが発売されてから30周年の記念に発売されたモデルです。ボディの鳴りをとことん追求し、YAMAHAの最先端技術が駆使されています。A.R.Eと呼ばれる木材処理の技術を採用し、I.R.Aという弦振動がボディに与えるストレスを軽減する処理によってビリーが認める「理想の鳴り」が実現しました。
このモデルだけの特典として、ビリーのサイン付きピックガードと認定書が付属しています。
ビリーシーンの理想を形にしたベース、Attitude
Attitudeはビリー・シーンのこだわりを具現化したYAMAHAのシグネチャーモデルです。ビリーの特徴である速弾きやフィンガーピッキングなども再現しやすいよう、工夫された仕様になっています。
ビリー・シーンのファンなら一度は手にしてみたいAttitudeのベース。楽器店で目にしたらぜひ実際に手に取り、ビリーと同じ音を体感してみてください。