独特なデザインが魅力!ギブソン・ファイヤーバードを徹底追求
Aventure編集部
ギブソンのファイヤーバードは1963年に発売されたエレキギターです。カーデザイナーであるレイ・ディートリッヒがデザインを担当し、その画期的で美しいボディラインと他にはない音色に多くの人が魅了されました。この記事ではファイヤーバードの歴史や特徴について紹介します。
ファイヤーバードが生まれた背景
ファイヤーバードは世界的ギターブランドであるギブソン社が1963年に発表したエレキギターです。ファイヤーバードの姉妹機として同時に発表されたベースのサンダーバードも人気があり、多くのベーシストを魅了しています。
1960年代当時、エレキギター市場ではストラトキャスターなどでお馴染みのフェンダー社が高い人気を誇っていました。なかなか人気のでるモデルを作れなかったギブソン社はフェンダー社に対抗するため、ファイヤーバードを新たに開発したのです。
ギブソン・ファイヤーバードの特徴
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ギブソン社の新たな挑戦として開発されたファイヤーバードは、これまでのギブソンのエレキギターとは異なる魅力を持ち、多くの人々を魅了しました。
ここからは、ファイヤーバードならではの特徴について紹介します。
有名デザイナーによる画期的なデザイン
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これまでとは違う新たな要素を取り入れたギターの誕生を目指し、ギブソン社は当時自動車デザイナーだったレイ・ディートリッヒにギターのデザインを依頼しました。まったく異なるジャンルのデザイナーが設計することで、過去にない画期的とも言える形状のエレキギターとして生み出されたのがファイヤーバードです。
名前の通りファイヤーバードのモチーフは「火の鳥」であり、その形は鳥が翼を広げた姿をイメージしていると言われています。ファイヤーバードの形状には2種類あり、ボディの左側よりも右側が突き出ているリバース・ボディと左右を反転したノン・リバース・ボディです。美しい流線型のボディラインが話題となり、ファイヤーバードは発売開始からすぐにギブソン社の人気モデルとなりました。
ギブソン初、スルーネック構造のソリッドボディ・ギター
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ファイヤーバードはギブソン社の看板モデルであるレスポールと同じソリッドボディのエレキギターです。ソリッドボディとはボディ内部に空洞がない構造を指します。
ギブソン社では初のスルーネック構造を採用したこともファイヤーバードの特徴です。それまではボルトで固定することでネックとボディを取り外せるボルト・オン・ネックや、ネックとボディを接着するセットネックというジョイント方法が用いられていました。
一方スルーネック構造とは、ネックをボディの終わりまで伸ばし、材木を左右から挟み込むように張り合わせてボディを作りあげます。ネックからボディまで一つの材木で繋がっているので弦の振動がボディに伝わりやすく、非常に音の伸びが良いと言われます。
ボルト・オン・ネックやセットネック構造と比べてハイポジションを弾きやすくするヒールカット加工がしやすいため演奏性に優れているのもスルーネック構造の特徴です。
バンジョーペグ
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ファイヤーバードならではの特徴の一つとしてバンジョーペグがあります。他のギターと大きく異なるのは、ペグがヘッドの裏側についていることです。
これはデザイナーのレイ・ディートリッヒが、ペグがヘッドからはみ出していることが見た目的に良くないと判断したものと思われます。とことんデザインにこだわったファイヤーバードならではの特徴といえますが、バンジョーペグが重くてヘッド落ちしてしまうことやチューニングの精度がいまいちであることからあまり評判は良くありませんでした。そのため、現在では通常のペグが使用されたモデルも販売されています。
独特なトーンのミニ・ハムバッキング
ギブソン製ギターの多くはピックアップにハムバッカーが採用されていますが、ファイヤーバードはミニ・ハムバッキングが搭載されています。
ミニといってもサイズは通常のハムバッカーとさほど変わりません。音の出力を抑えることでパワーは少ないものの、シャープでキレのある独特な音が特徴です。ファイヤーバードのボディとミニ・ハムバッキングの組み合わせによって生まれる唯一無二の音色に魅力を感じるコアなファンも多くいます。
リバースモデルとノンリバースモデル
1963年のファイヤーバードの発売当初は、形状は正面から見て右側のツノが突き出ている「リバースモデル」のみでした。しかし、リバースモデルはコストがかかることから1965年に大幅なモデルチェンジが行われました。このモデルチェンジによって左右を反転させたデザインの「ノンリバースモデル」が生まれました。
リバースモデル
リバースモデルはファイヤーバード発売当初のオリジナルモデル。リバースモデルの特徴はスルーネック構造、ミニ・ハムバッキング搭載、ボディのセンターピースが分厚くなっているという点です。
機能性よりも見た目にこだわった造りが多々あり、扱いにくいという声もありますが根強いファンも多くいます。
ノンリバースモデル
ノンリバースモデルはリバースモデルを反転させた形状で、ファンの間では「ノンリバ」という愛称で呼ばれています。
リバースモデルと比べてボディ形状以外にも仕様が異なる部分があるのが特徴です。スルーネック構造が廃止されセットネック構造となり、ピックアップが大きくフラットなボディが特徴です。
現在も発売されているファイヤーバードはノンリバースモデルが主流です。
ファイヤーバードを使用するギタリスト
発売当初から賛否が分かれることが多かったファイヤーバードですが、多くのギタリストたちがそのデザインやサウンドに惚れ込み、愛用していました。
ファイヤーバードのアイコンとも言えるのがジョニー・ウィンターです。「100万ドルのギタリスト」の異名を持つジョニーは40年以上のギタリスト人生の多くをファイヤーバードとともに過ごしました。2021年にはジョニーの愛機を再現したシグネチャーモデル「ジョニー・ウィンター 1964 ファイアーバード V」が発売されています。
その他にもエリック・クラプトンやオアシスのゲム・アーチャーなど有名ギタリストがファイヤーバードをパフォーマンスで使用し、人気に火をつけました。
日本のアーティストにもファイヤーバードの愛用者は多く、クレイジーケンバンドの小野瀬雅生やB’zの松本孝弘、シンガーソングライターの瀧川ありさなどが使用しています。
ファイヤーバードの注目モデル
ここからはファイヤーバードの中でも希少性のあるモデルを紹介していきます。今回ピックアップしたのはB’zのギタリスト松本孝弘のシグネチャーモデルと、日本限定発売のノンリバースモデルです。
TAK MATSUMOTO FIREBIRD
リバースモデルをベースにしたB’zのギタリスト松本孝弘のシグネチャーモデルです。本家ファイヤーバードとは大きく異なるオリジナル仕様が話題になりました。インタビューによると、長年ファイヤーバードを愛用してたことから「ファイヤーバードのクールさを残しながら演奏性や操作性を高めたモデルを作りたい」という想いがあったそうです。
カラーはVintage SunburstとTrans Black Bursの2種類です。特徴はレスポールタイプのヘッドを採用していること、ピックアップがフルサイズのハムバッカーであること、そしてオリジナルカラーのクールな見た目です。大幅に仕様変更したことで全体的に軽量化され、作り込まれたその音は、B’zの音色を彷彿とさせます。
Firebird Non-Reverse Japan Limited 2015
1965年にリバースモデルのモデルチェンジによって生まれたノンリバース・ファイヤーバードVの日本限定復刻版モデルです。ピックアップはミニ・ハムバッキングでまとまりがあり、シャープなファイヤーバードらしい音を楽しめます。
火の鳥の如く伝説となったギブソンのファイヤーバード
ギブソンの異端児とも言えるファイヤーバード。デザインの良さを追求するあまりに造りや操作性に批判を受け、数年で製造中止となった悲しい過去があります。
しかしその唯一無二のサウンドに惚れ込んだ根強いファンも多く、改良を繰り返しながら再生産にいたりました。不死鳥のように蘇り、ギブソンを代表するモデルの一つとなったファイヤーバードが気になった方はぜひ楽器店で手に取りそのサウンドを確かめてみましょう。