楽器

「ジャズ」の名を冠したロックなギター、Fenderジャズマスターの特徴とは

Aventure編集部

ジャズマスターはその名の通り、ジャズシーンでの活躍を目指して誕生したエレキギターです。しかし現在ではジャズシーンよりもオルタナ、シューゲイザーを中心としたロックシーンのギタリストに愛用されるようになりました。この記事ではジャズマスターがロックシーンに浸透するまでの歴史や各部の特徴に加え、人気のカスタムにまで話題を掘り下げて紹介していきます。


ジャズマスターの歴史

 
 
 
 
 
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フェンダーのジャズマスターはその名の通り、ジャズ専用機として1958年に登場しました。1958年はギブソンがフライングVやエクスプローラー、ES-335を発売した年であり、現在でも定番となっているモデルが多数登場した年でした。

当時のフェンダーはテレキャスターやストラトキャスターを世に送り出し、ソリッドギター市場において両モデルはギタリストから厚い支持を獲得していました。しかし、ことジャズシーンにおいてはギブソンのL-5やES-175に代表されるフルアコが活躍していました。そうした状況に対抗するため、ジャズマスターが生み出されたのです。

しかし「ジャズシーンからの支持を得たい」というフェンダーの思惑は結果的に外れます。ジョー・パスを始め、一部のジャズギタリストが愛用したことは知られていますが、ジャズシーンに広く浸透することはありませんでした。その後ザ・ベンチャーズなどのサーフロック系のバンドのギタリストが愛用したことがキッカケとなり、ジャズマスターはロックシーンで人気を獲得していきました。

1980年代には一時製造中止されましたが、根強い人気から1986年にはフェンダージャパンで、1999年にはフェンダーUSAにて製造が再開しました。

現在ではロック系ギタリストからの支持が厚く、とくにオルタナティブやシューゲイザーなどでは定番のギターとして親しまれています。


ジャズマスターの特徴

ここではボディ形状から各部のパーツやコントロール系統まで、ジャズマスターの特徴を紹介していきます。

ボディ・ネック

 
 
 
 
 
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ジャズマスター最大の特徴にはボディ形状が挙げられます。ストラトキャスターのようなダブルカッタウェイでありながら、左右非対称の特徴的な形状をしています。これはオフセットウェストと呼ばれており、立っても座っても演奏しやすいことを目指して設計されました。

年代やグレードによって異なりますが、ボディにはアッシュやアルダー、バスウッドなどが使われており、指板にはフェンダーで初めてローズウッドが使用されました。指板の仕様はギブソンのモデルを意識したと言われています。

ピックガード

ボディ前面を覆うピックガードもボディ形状に伴って特徴的な形をしています。

ジャズマスターといえばべっ甲柄の樹脂製ピックガードがよく知られていますが、初期モデルにはアノダイズドピックガードと呼ばれるアルマイト加工されたアルミニウム製のピックガードが採用されていました。アノダイズドピックガードにはシールド効果があり、ノイズの低減に繋がっていました。

 
 
 
 
 
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現在でも一部のジャズマスターオーナーは、樹脂製のピックガードをアノダイズドピックガードに変更することがあります。

フローティング・トレモロ

 
 
 
 
 
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先に発売されていたストラトキャスターにはシンクロナイズド・トレモロが搭載されていましたが、ジャズマスターには新設計のフローティング・トレモロが搭載されました。

アーミングした際にシンクロナイズド・トレモロではブリッジが動くのに対して、フローティング・トレモロではテイルピースが動くことが両者の大きな違いです。加えてフローティング・トレモロではブリッジが完全に固定されていないため、アーミング時にテイルピースと共にブリッジも若干動きます。そのためチューニングの狂いが低減されています。

両者のアーミング時の音程の上下幅を比べるとシンクロナイズド・トレモロの方が広い一方で、フローティング・トレモロの方がスムーズな操作ができるというメリットがあります。

ピックアップ

ジャズマスターには2基のシングルコイルが搭載されています。見た目はギブソンのP-90のような幅が広いシングルコイルですが、内部の構造の違いから音質も異なっています。

プリセット・スイッチ

 
 
 
 
 
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プリセットスイッチとは6弦側のボディ上端に設置されたスイッチのことで、ジャズマスターの大きな特徴の一つです。

プリセットスイッチ部分は、プリセットオン/オフスイッチ、プリセットボリューム、プリセットトーンの3つのスイッチから構成されています。プリセットスイッチをオンにするとピックアップセレクターの位置に関係なくフロントピックアップのみが有効になります。その際に通常のボリュームとトーンは無効になり、プリセットボリュームとプリセットトーンが有効になります。

つまり「プリセット」という名の通り、プリセットスイッチをオンにすれば、任意のボリュームとトーンで設定しておいたフロントピックアップのサウンドをいつでも呼び出せる仕組みになっているのです。

「アルペジオの部分だけプリセットを使う」「ソロとバッキングで音色をすぐに切り替えたい」など、曲中の一部分だけ音色を変えたい場合に活躍する機構と言えます。


サウンドの特徴

ジャズマスターはフロントとリアのピックアップによって、それぞれ大きくサウンドキャラクターが異なります。フロントはジャズ専用機として開発されたジャズマスターらしいメロウで豊かな鳴りが特徴です。一方リアピックアップは荒々しくワイルドなサウンドが特徴的であると言われています。現在多くのロックギタリストに支持される要因はこのリアピックアップのサウンドキャラクターにあったのです。

またジャズマスターはブリッジとテイルピースの構造上、ほかのギターに比べて弦の張力が低いことも特徴です。これによって他のギターにはない独特の鳴り方をするのもジャズマスターのサウンドの特徴です。


弱点を改善するためのブリッジ周りのカスタム

ジャズマスターを所有しているギタリストの間で、弱点として頻繁に話題に上るのが弦落ちです。弦落ちとは、文字通り弦が所定の位置からずれて外れてしまうことを指します。弦落ちが発生する箇所はいくつかありますが、ジャズマスターにおける弦落ちはサドルから弦がずり落ちてしまうことを指しています。

弦落ちする理由

 
 
 
 
 
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ジャズマスターで弦落ちが発生しやすい原因は、サドルにネジ山のように浅い溝が複数掘られていることです。加えてジャズマスターは他のギターに比べて弦の張力が低い構造になっています。そのため力強いピッキングをしたりチョーキングをしたりすると、本来の位置からすぐにずり落ちてしまうのです。

無加工でできるカスタム

 
 
 
 
 
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弦落ちを防ぐカスタムの中でも無加工で簡単におこなえるのが、弦落ち対策パーツとして知られるバズストップバーを装着することです。バズストップバーを装着すれば弦の張力が高まるので、結果として弦落ちしにくくなる仕組みです。トレモロユニットのプレートを固定しているネジに共締めすることで簡単に装着できるため、穴を開けたりする必要がありません。

しかし手軽に弦落ち対策できるメリットの反面、ジャズマスターならではの低い張力によって形作られるサウンドが失われるデメリットがあります。

バズストップバーを装着するほかに、別のブリッジに交換することも弦落ち対策として有効です。ボディに新たに穴を空けることなく無加工で装着するためには、元のブリッジと同じサイズを選ぶ必要があります。よく使われるブリッジには、ムスタング用のブリッジとマスタリーブリッジの2種類があります。

ムスタング用のブリッジは無加工で装着できる上に比較的安価で手に入れやすいことがメリットです。しかしジャズマスターのブリッジよりは弦落ちが起きづらいのですが、完璧に防げるというわけではありません。

 
 
 
 
 
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一方マスタリーブリッジは弦落ち対策用のブリッジとして販売されているパーツで、特徴的なサドル形状によって弦落ちを徹底的に防ぎます。さらに、前後に少し動くジャズマスターのブリッジとは異なり、マスタリーブリッジは完全に固定されているのでチューニングの安定性が高まります。また音質面でもメリットがあり、弦の振動をボディへ伝達することで豊かな鳴りを実現できるのです。デメリットに挙げられることは、バズストップバーやムスタング用のブリッジに比べると高価であることだけですので、予算が許すのであればマスタリーブリッジがおすすめです。

加工が必要なカスタム

 
 
 
 
 
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ジャズマスターのブリッジを交換する際にもう一つ候補に上がるのが、レスポールなどに採用されているチューン・O・マチックブリッジです。

ニルヴァーナのフロントマンとして知られるカート・コバーンが使用していたジャガーは、チューン・O・マチックブリッジに換装されていたことが知られています。ジャガーはジャズマスターの兄弟モデルともいえるギターなので、ジャズマスターにもチューン・O・マチックブリッジを装着するギタリストが居ます。

弦落ちの防止、チューニング安定性の確保についてはマスタリーブリッジと同じですが、音質面ではサスティーンの向上が期待できます。

ただしチューン・O・マチックブリッジはジャズマスターのブリッジとはサイズが異なるため、装着にはボディの加工が必要です。またチューン・O・マチックブリッジの構造とジャズマスターのネックの構造上、弦高調整が難しくなる場合があるため注意が必要です。


使用アーティスト

ジャズマスターはこれまで数多くのギタリストに愛用されてきており、とくにオルタナやシューゲイザーを始めとするロックシーンでの支持が厚いギターです。

ロックシーンでのジャズマスター奏者として真っ先に名前が上がるのが、後のグランジやオルタナブームの先駆けとなったバンド・Sonic Youthのギタリストであるサーストン・ムーアです。その他にも90年代のオルタナブームの中で活躍したDinosaur Jr.のギター・ボーカルであるJ・マスシス、Radioheadのトム・ヨークもジャズマスターがトレードマークとなっています。

日本国内でのジャズマスター愛用者といえば、ナンバーガールやbloodthirsty butchersのギタリストとして知られる田渕ひさ子が有名です。LUNA SEAのINORANもジャズマスターがトレードマークですし、ベンジーことBLANKEY JET CITYの浅井健一も愛用者の一人です。

近年では[Alexandros]の川上洋平を始め、若手ギターロックバンドのボーカリストが使用している例も少なくありません。


一癖ある仕様が魅力のロックなギター、ジャズマスター

 
 
 
 
 
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もともとジャズ専用機として登場したジャズマスターですが、ジャズシーンに広く浸透することはなく現在ではロックシーンで高い人気を誇っています。

アイコニックなオフセットウエストやプリセットスイッチ、リアピックアップの荒々しくワイルドなサウンドはジャズマスターの特徴です。さらに良い点だけではなく、弱点として挙げられる弦落ちをどのように対策するのかもジャズマスター所有者の間では楽しみの一つとなっているようです。

ぜひ楽器店にて一癖ある仕様が魅力のジャズマスターに触れてみましょう。

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