アコースティックギターを代表するMartinのD-28とは?
Aventure編集部
アコースティックギターには各メーカーから様々なモデルが販売されており、その中でも王道とされているモデルの一つがMartinのD-28です。この記事では、MartinのD-28における基本情報や種類などを紹介します。D-28が気になっている方やアコギを買おうと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
そもそもMartinとはどのようなメーカーなのか
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D-28を知る上では、まずはMartinがどのようなメーカーなのかを見ていきましょう。
創業当初は厳しい状況に置かれていた
Martinはもともとドイツで創立されました。しかし創業者であるマーティン1世がギルド内紛争に巻き込まれてしまい、アメリカへ移住。ただし、移住してすぐ稼げたわけではなく、未熟な音楽市場の中で様々な努力をしてきました。
マーティン1世は売上を伸ばすために様々な音楽業者や音楽教師たちに積極的なアピールをしました。そのため1840年より前のギターには、取引先業者との連名ラベルが貼られています。
歴史と共に成長するMartin
当初は苦しい思いをしたMartinでしたが、歴史と共に成長していきました。事実、Martinは「Xブレイシング」やアコースティックギターのニュースタンダードとなるドレッドノートモデルを開発しました。
また、Martinはマンドリンやウクレレなども製造。特にウクレレは工場の増築やスタッフの増員が必要になるほど人気になり、Martinの成長にも大きく貢献しました。
ギターメーカーとしての枠を超えた1970年代
1970年代になると、Martinはギターメーカーとしての枠を超えた活動をします。複数の音楽関係メーカーを吸収していき、その1つに弦製造のメーカーの買収が挙げられます。これによってMartinは高品質なギター弦の安定生産および販売体制を確立しました。
Martinは今なお影響をもたらすメーカー
Martinは今なお影響をもたらす大きなメーカーとなり、伝統と確信のもとで多くのギターを作り続けています。歴史は180年以上もあり、これほど長くギターを作り続けてきたメーカーはMartinしかありません。
特にMartinの歴史において活躍した人物がフランク・ヘンリー・マーティンです。彼の決断力や企画力がMartinを成長させたこともあり、今日の礎を築いた人物だったといえるでしょう。
MartinのD-28における基本情報
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D-28はMartinを代表するギターであり、アコースティックギターの1つのスタンダードと呼べるギターです。一体どのような特徴や魅力があるのか、基本情報を見ていきましょう。
MartinのD-28のスペック
D-28の「D」はドレッドノートの頭文字を指しています。ドレッドノートとは、当時主流だったギターよりも大きなボディサイズであることを意味します。モデル名にある「28」はギターの仕様を指しており、スプルースのボディトップ、ローズウッドのボディサイドおよびバック、エボニー材の指板が特徴です。
D-28はパワフルで豊かな鳴りと圧倒的な音量が魅力であり、ストロークはもちろん、フィンガースタイルでもしっかりと鳴ってくれることから当時のギタリストに支持されました。
現在では世界的な定番アコースティックギターといえるほど人気のあるギターです。
Xブレイシング
D-28を紹介する上では、「Xブレイシング」について触れておく必要があります。ブレイシングとはアコースティックギターのボディ内部に設置されたパーツです。ボディの強度を高める役割のほか、形状によってサウンドにも影響します。
「Xブレイシング」は2本のブレイシングがサウンドホールのすぐ下でXのように交差している構造を指します。「Xブレイシング」を採用することで、従来のブレイシングよりも高い強度と優れた音響特性を発揮できました。
「Xブレイシング」はギターの構造における大きな革命的開発といえるでしょう。
ネック
D-28のネックは、「ロープロフィール」ネックグリップを採用。モダンチックなやや薄い形状をしており、ストレスなく演奏できます。ネック材はマホガニーを使用していますが、その中でも厳選されたものを使っています。
ネックのシェイプはモデルによって少し変わります。例えばD-28 Authentic 1931というモデルならば、やや太いグリップを採用。一方でHD-28VSは「Vシェイプ」のグリップを採用しています。
ヘッド裏
D-28のヘッド裏を見てみると、ネックとヘッド裏の繋ぎ目が盛り上がっています。これは鋭角な形状から「ダイヤモンド・ボリュート」と呼ばれているものです。
「ダイヤモンド・ボリュート」とは、かつてネックとヘッドを別々に作っていた際に接着面積を増やすための仕様でした。現在ではネックとヘッドを一つの木材で作るため必要ありませんが、当時の意匠の名残として現在のモデルにも施されています。
ブリッジ
D-28のブリッジは、「ベリーブリッジ」と呼ばれています。具体的には長方形のブリッジにボディエンド方向へ膨らみをもたせた形であり、「ベリーブリッジ」のベリーには「膨らむ」や「膨らんだ部分」などの意味があります。
ヘリンボーン
ボディの縁に施された魚の骨のようなデザインは「ヘリンボーン」と呼ばれています。材料の品質や供給が安定しないことから廃止された時期もありましたが、ヴィンテージファンからの要求によって復活し、現代のD-28の一部のモデルにもヘリンボーンが採用されています。
MartinのD-28における歴史
今ではポピュラーなアコースティックギターとなっているD-28ですが、誕生したきっかけはとある注文からでした。1916年、「低音が豊かに響いてボーカルの伴奏に適したギターが欲しい」という注文を受けて、大きいサイズのギターを製作しました。当時主流であったギターよりも随分と大きなサイズであったため、そのときに世界最大の艦隊であった「ドレッドノート」と呼ばれるようになります。
ドレッドノートサイズである「D」シリーズのギターは、D-28以外にも仕様が異なるモデルが数多く製造され、D-18やD-35、D-42などがあります。その中でもD-28はカントリーミュージックの流行とともに、主力モデルとなりました。また、D-28の細かい部分には変化があるものの、基本的な設計は変わっていません。
MartinのD-28を愛用してきたアーティスト
MartinのD-28は、これまで多くのアーティストが愛用してきました。有名なアーティストには、エルビス・プレスリーやポール・マッカートニー、ニール・ヤングが挙げられます。
例としてポール・マッカートニーの場合、1967年にジョン・レノンと一緒にD-28を購入。彼らのアコースティックな楽曲にて数多く使われています。ニール・ヤングはアルバム『Comes a Time』のレコーディング中に、ハンク・ウィリアムスが所有していた1941年製のD-28を購入しました。
D-28の様々なラインナップ
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ここではD-28のラインナップのバリエーションを紹介します。それぞれの異なった仕様を見比べてみましょう。
エレアコが欲しいなら「HD-28E Retro」
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もしエレアコが欲しいのであれば、「HD-28E Retro」が良いでしょう。D-28のエレアコ版であり、これまでの技術が詰め込まれています。見た目はMartin社のギターらしいフォルムであり、音色にもMartinらしさがあります。
「HD-28E Retro」は、ただD-28をエレアコ化させたわけではありません。ボディ内部のブレイシングの一部を削り取った「スキャロップドブレイシング」が採用されています。そのためボディ強度を保ったまま軽量化を実現し、ボディトップをよりしっかりと振動するようになっているのです。
1937年製の復刻版「D-28 Authentic 1937」
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「D-28 Authentic 1937」は、1937年製のD-28における復刻版です。1937年製のものを再現するために、トップ材にはヴィンテージ加工がなされています。サイドとバックには、高価なブラジリアン・ローズウッドの代わりとしてマダガスカル・ローズウッドを使っています。
「D-28 Authentic 1937」は豊かなボリュートとサスティーンが魅力的であり、存在感のあるサウンドを奏でたい場合におすすめです。また、経年変化や使用感を演出するエイジド加工が施された「D-28 Authentic 1937 aged」というモデルも存在しています。
貴重な「D-28 Brazilian」
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「D-28 Brazilian」は、ブラジリアン・ローズウッドという貴重な木材を使用していて大変貴重なモデルです。状態の良いヴィンテージモデルであれば数百万円もの金額で取引されることもあります。
ブラジリアン・ローズウッドが貴重である理由は、2つの理由が挙げられます。1つはブラジル政府が原木の輸出を禁止にしたことであり、もう1つはワシントン条約による流通の制限です。事実、Martinも1969年にはローズウッド材をブラジリアン・ローズウッドからイースト・インディアンに変更しました。
アコギの代表的な存在D-28
今回は、D-28の基本情報や具体的なスペックなどについて紹介しました。D-28はMartinだけではなく、世界的なアコースティックギターにおける代表的な製品です。そのため、D-28はこれからも人気のあるアコースティックギターとして、多くのユーザーが利用するでしょう。