中国株は2022年も有望なのか?恒大集団の影響や有望株を紹介
Aventure編集部
2022年冬季オリンピックが開催されました。中国は新型コロナウイルス感染拡大を何としてでも食い止め、無事開催へと漕ぎつけました。スポーツの祭典を盛り上げて中国に注目を集め、景気の底堅さや政権の強さをアピールする狙いがあると考えられます。中国株は米国株と比べると情報が少なく、投資しづらいと感じる人も少なくありません。しかし、そのポイントや注意点、商環境を知れば決して難しい投資ではありません。むしろ旺盛な成長力をバックに株価の急騰も望めます。この記事では、中国株投資の初心者向けに基本となる情報を解説します。
中国株投資の基本
2021年の中国株は、国を挙げた新型コロナウイルスの封じ込めが奏功し、堅調に推移しました。ただし、2021年10月から12月のGDPはプラス4.0%と伸び率の縮小、中国景気全体の減速が鮮明になっており、かつてのように旺盛な経済成長は望めないとの声も聞こえてきます。
中国株への投資は情報の収集と銘柄の見極めという投資の基本スタンスがより重要になりました。基本に立ち返り、リスク低減を図りましょう。
※投資は自己判断の範囲内で行ってください。
概要
中国の株式市場は大きく2つに分かれています。「中国本土市場」と「香港市場」です。「中国本土市場」は更に2つに分類されます。「上海証券取引所」「深圳証券取引所」です。それぞれの市場は減速として中国国内投資家のみが参加できる「A株市場」、外国人投資家も参加ができる「B株市場」に分けられます。
【中国市場の分類】
中国本土 | 上海証券取引所 | A株市場 | 海外投資家への保有制限がある株 |
B株市場 | 海外投資家への保有制限がない株 | ||
深圳証券取引所 | A株市場 | 海外投資家への保有制限がある株 | |
B株市場 | 海外投資家への保有制限がない株 | ||
香港 | 香港証券取引所 | メインボード | 大型優良企業中心 |
GEM | 新興市場中心 |
市場の違い以外にも、株式の種類も頭に入れておきましょう。
【株式の種類】
A株 | 中国国内の投資家のみ |
B株 | 外国人投資家も参加可能 |
香港株 | 香港市場に上場している香港企業、海外企業の株式 |
H株 | 香港市場に上場している中国本土で登記された中国企業 |
レッドチップ | 香港市場に上場している中国本土以外(ケイマン、バミューダなど)で登記された中国資本の企業 |
【取引時間(日本時間)】
上海証券取引所・深圳証券取引所 |
・オープニング・セッション ・前場 ・後場 ・クロージング・オークション |
香港証券取引所 |
・オープニング・セッション ・前場 ・後場 ・クロージング・オークション |
取引で使われる通貨は上海証券取引所・深圳証券取引所が人民元、香港証券取引所が香港ドルです。ただし、上海証券取引所のB株市場は米ドル、深圳証券取引所のB株は香港ドルで取引されています。
【代表的な指数】
上海証券取引所 | 上海総合指数 |
深圳証券取引所 | 深圳総合指数 |
香港証券取引所 | 香港ハンセン指数、H株指数、レッドチップ指数 |
証券会社
複数の証券会社で中国株を扱っています。ここでは国内の代表的なネット証券を紹介します。
【SBI証券】
香港証券取引所(H株、香港株、レッドチップ)
【楽天証券】
香港証券取引所(H株、香港株、レッドチップ)
上海証券取引所(A株)
2つの証券会社ともに中国株式のETFも扱っています。ETFとは上場投資信託のことで、種類にもよりますが、多くは「香港ハンセン指数」などの指数に連動するように作られた金融商品のことです。
主な銘柄と特徴
有名企業を一部紹介します。
騰訊(テンセント)
深圳に本拠地を置くオンライン広告サービスなどの幅広い事業を手掛ける会社。売上高では世界最大級のゲーム会社で、創業者はアジア1位の富豪として知られています。2017年に売上高は5,000億ドルを超え、フェイスブックを抜いてアップル、Amazon、マイクロソフトと肩を並べました。
阿里巴巴集團控股有限公司(アリババホールディングス)
「Alibaba.com」で電子商取引事業を展開する世界有数の有名企業です。規模が大きいことから中国当局からの監視も厳しく、2021年4月に独占禁止法違反の疑いで182億元の罰金が課されました。独占禁止法違反の疑いがかけられるのは、フェイスブックやGoogleとよく似ています。それだけ影響力が大きいことを示しているとも言えます。
銀河娯楽(ギャラクシー・エンターテイメント)
マカオの企業でカジノとホテルを運営しています。マカオのカジノ市場で第2位の規模を誇り、日本がカジノ構想を立ち上げた際に参入の意思をいち早く伝えた企業としてよく知られています。
中国景気と米中関係
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中国景気を語る上で米中関係は外せません。2018年3月に米国通商法301条に基づく対中制裁措置が発動されました。米国企業の知的財産や技術を中国企業に移転するため、中国当局が不当に介入しているとの結果が示され、トランプ元大統領が発動を命じたものです。制裁措置は関税と中国企業に対する米国への投資に対する規制強化が柱となっています。
これに対して中国政府は「戦いを以て戦いを止める」という強硬姿勢をとりました。しかし、2018年の中国の年間経済成長率は6.6%となり、1990年の3.9%以来の低水準まで落ち込みます。こうした状況を受けて中国は少しずつ態度を軟化。米中貿易関係の健全な推進、知的財産権保護の強化など、米国の要求を飲むようになりました。
新興国が発展するためには、人件費が安いことを背景として先進国から製造部門を受託し、海外から技術を”盗む”ことがこれまでの慣例の一つでした。しかし、米国の中国の制裁はその慣例が覆されたことになります。この後発の優位性が発揮できなくなると、中国は自前で技術開発に取り組まなければならず、成長は鈍化するとの見方もあります。
中国株のリスクは?
中国は人権問題を抱えており、米中関係以外にも国内にリスクが潜んでいます。その一つが新疆ウイグル自治区の強制労働問題。中国は宗教上のマイノリティであるウイグル自治区において強制的な同化政策を進め、人権・民族を計画的に破壊するジェノサイドを行っているとの批判が世界中で巻き起こっています。
アメリカではウイグル自治区で生産された綿製品や野菜、太陽電池部材など一部製品の輸入が制限されていました。しかし、バイデン大統領は2021年12月にウイグル自治区からの物品輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法案」に著名。2022年6月に発効します。
これにより、ウイグル自治区で生産された完成品だけでなく、そこで作られた部材を含んだ完成品も輸入制限の対象となりました。
中国政府は「強烈な憤慨と断固とした反対」を表明しており、サプライチェーンの安定を揺るがすものだと批判しました。ウイグル自治区の問題は2022年の新たな火種となる可能性があります。中国の個別株にどれほど影響を与えるかは不確定ですが、中国が人権問題を常に抱えていることに注意しましょう。中国はウイグル自治区以外にも、香港や台湾に対しても一部侵害とも見える動きがあります。こうした動きが表面化し、アメリカを中心として経済制裁がとられる可能性があることは、中国経済のリスク要因です。
恒大集団に何が起こったのか?
恒大集団のデフォルトを巡るニュースを耳にした人は多いはずです。恒大集団はサッカークラブ「広州FC」のオーナーでもあり、世界的に有名な企業の一つでした。中国の不動産開発の膨張を背景として勢いをつけた会社です。最盛期は12兆円の売上高を誇っていました。しかし、2021年12月に格付け会社フィッチが恒大集団を部分的な債務不履行に認定しました。米ドル債の利息93億円を期日に返還できなかったのです。中国企業として過去最大規模で、投資家から不安の声が巻き起こりました。
恒大集団は低コスト住宅の販売で急成長した会社です。その後、電気自動車や映画、サッカークラブなど事業の幅を広げました。無理な事業の多角化、先行投資で負債が膨らんだことがデフォルトに至った主要因の一つです。映画事業は2021年11月にテンセントに300億円で売却。EV関連部品事業も同じ時期に英国企業に売却して運転資金を確保しています。事業への投資を大規模な借り入れで賄い、返済に窮しました。
2020年中国の中央銀行は資産に対する負債比率が高い企業に対して、金融機関からの借り入れを制限しました。恒大集団は条件を満たすことができず、借入金に制限が課されます。もともと財務状態が健全とは言えず、規制を受けてそれが表面化したというのが実情です。
広東省政府は恒大集団からの支援要請を受けて経営管理に介入する意思を示しています。かつて世界金融危機に陥ったアメリカは、AIGなどの大手保険会社や証券会社を「大きすぎて潰せない(Too-Big-to-Fail)」ものとして、公的資金を注入しました。中国政府にとっても恒大集団がそれに該当する可能性は高く、政府支援の下で生き延びる道を模索するものと予想されます。
中国は急成長した国の一つです。その波に乗って過剰投資に陥っている企業は他にもあるかもしれません。投資をする際は注意が必要です。
大注目の銘柄
高配当銘柄
中国株の中で比較的業績が安定し、高配当の銘柄を紹介します。
中国海外発展(オーバーシーズランド)
香港を拠点とする不動産開発会社です。2007年にハンセン指数の構成銘柄となりました。香港、マカオ、北京、上海などを中心として住宅不動産開発を行っています。日本の企業と同じく、不動産管理、ビル建設、アセットマネジメントも手掛けています。
万科企業(バンカ)
中国海外発展と同じく不動産開発が主軸の会社。1991年に深圳発展銀行に次いで上場した新興企業の中でも歴史があります。2020年にフォーブス・グローバル2000に96位でランクイン。売上高は532億ドルと巨大です。恒大集団から資産の買い取りを要請されていると報じられました。
中国工商銀行(インダストリアル・アンド・コマーシャル・バンク・オブ・チャイナ)
中国4大国有商業銀行の一つです。総資産額、経常収益、純利益は業界トップ。2007年には時価総額でシティグループを超えて世界第1位となりました。
安定銘柄
安定した成長が見込める優良企業の紹介です。
華虹半導体(フアホン・セミコンダクター)
半導体製造サービスに特化した会社です。主に200mmと300mmのウェハ―を製造しています。このマイクロチップを活用した製品は、IoTやEV車、人工知能など最先端技術に応用されています。安定かつ高い成長が見込まれる分野です。
中国鉄塔(チャイナタワー)
中国の3大通信キャリアが出資する基地局運営会社です。主力の事業以外にも、非通信分野の顧客向けにデータの収集、モニタリング、バックアップサービスなどを提供するビジネスも行っており、業績好調の背景にもなっています。市場予測から業績が上振れするなど、注目度の高い企業です。
百威亜太控股(バドワイザーAPAC)
ベルギーの酒類メーカーであるアンハイザー・ブッシュ・インベブのアジア子会社。アンハイザー・ブッシュ・インベブは2008年にベルギーのインベブが、バドワイザーの米アンハイザー・ブッシュを買収して誕生した会社です。百威亜太控股は2019年9月に香港証券取引所に上場し、わずか1年でハンセン指数に入りました。
中国株への投資で世界情勢を知る
旺盛な成長を続ける中国。投資妙味もあり、エキサイティングな市場であることは間違いありません。人口が多く、優秀な経営者や技術者も多数擁していることから、最先端技術の誕生にも期待できます。難しいのは情報が少ないこと。中国当局が意図的に隠していることもあり、国の情勢を正確かつ詳細につかむことは不可能とも言えます。投資をする際は、資産を分散してリスク低減を図るなど、注意が必要な市場でもあります。