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米国で大流行のSPAC投資とは? 日本でも解禁される日はくるのか

Aventure編集部

スマートフォンでタクシーを呼び、東南アジアを自由に旅できると評判のアプリを運営するグラブが、2021年12月にSPACを活用してナスダックに上場を果たしました。グラブはソフトバンクビジョンファンドも出資をする注目度の高い会社で、日本でSPACという言葉を広めるきっかけにもなりました。”空箱上場”とも言われる手法ですが、今一つ実態がつかめません。この記事ではSPACを解説し、日本でも投資ができるのか、SPAC上場をした企業にどのようなものがあるのかを紹介します。


SPACとは

 
 
 
 
 
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SPACとは「特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Company)」のことです。”空箱”と言われる通り、特定の事業を行っておらず、スタートアップなどの未公開企業(または事業)の買収を目的として設立する会社を指します。事業を持たないSPACを先に上場させて資金を調達し、その資金を買収に充てると考えると理解しやすいかもしれません。

2003年にアメリカの株式市場に登場し、1年間で数件程度上場していました。このころは上場件数が少なかったため、注目度が低かったと言えます。しかし2020年は248件に達し、アメリカ市場の4割を占めるまでになりました。調達額は14兆6,000億円と言われています。アメリカ以外でもイギリスやフランス、ドイツ、イタリア、カナダ、韓国の主要取引所でSPAC上場が制度化される予定です。

2003年にアメリカで上場したSPACの数は1,083社。2021年9月末の段階で413社が買収を終えています。121社が買収先を公表済みとなっています。

SPACの仕組み

SPACは投資ファンドや著名投資家が出資をして設立します。審査を経てSPACを上場させ、機関投資家や個人投資家から資金を調達します。SPACは未公開会社との交渉に入り、買収または合併します。M&Aが完了した後は被買収企業が上場会社として存続します。 SPACの不正利用を防ぐため、買収の12~18カ月前にアナウンスをし、24カ月以内にM&Aを完了させる必要があります。短期間で実施する必要があるため、買収の対象となっている企業は価格を釣り上げようとする可能性があります。

ただし、買収の承認には株主総会での合意が必要です。買収の条件が適正なものかどうかは、SPAC側の判断だけにはなりません。買収をスムーズに行うのはSPACの設立者の手腕が試される場面であり、SPACへの出資は設立者への期待感や信頼が強くものを言います。


2021年のSPACの状況

 
 
 
 
 
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2021年アメリカのSPAC上場件数は2020年比2.4倍となる604件で着地。2019年比では10倍以上となる数字です。調達額は16兆3,000億円となりました。

身近な会社の例ではソフトバンクグループが出資するSPAC「SVF Investment 3」と合併する形で、米ウォルマートなどの物流施設の自動化技術を提供する米シンボティックが2021年12月にナスダックに上場すると発表しました。評価額は55億ドル。シンボティックとソフトバンクが出資するSPACの取締役会が合併を承認し、シンボティックはソフトバンクグループの投資ファンド「ビジョン・ファンド2号」からも2億ドルの出資を受け、ウォルマートからも資金援助を得る予定です。シンボティックが多方面からの出資を集めている通り、SPACが買収対象とする企業の多くは収益性に乏しいケースが多いです。

SPACを通して上場した主な企業の業績を見てみましょう。

グラブ ホールディングス

東南アジアでフードデリバリーや配車サービスを提供する企業。2021年7-9月期は売上がコロナの影響で前年同期比25%減、調整後EBITDAは212百万ドルで前年同期比で赤字幅が拡大しています。

ルシードグループ

テスラの自動車開発を牽引したピーター・ローリンソンが立ち上げたEVメーカー。新興EVメーカーとして注目を集めています。2022年の売上は20.7億ドルを見込んでいる一方、18.5億ドルの純損失を予想しています。

ギンコ バイオワークス ホールディングス

遺伝子工学を使用して産業用途のバクテリアを生産する企業。クライアントの課題を解決するための微生物を設計しています。2021年7-9月期の売上は77.6百万ドルと前年同期比5.8倍となったものの、26.7百万ドルの営業赤字を出しています。

オーロラ イノベーション

2020年12月にウーバーの自動運転部門を買収し、4年で上場した企業。2020年12月期は売上が出ておらず、2億ドル以上の純損失を計上しています。

成長期待が高いと見るか、業績が悪いだけの会社と見るかは判断の分かれるところです。


上場を待機している主な銘柄は?

次に上場を予定している会社を見てみましょう。

ゲッティイメージズ

世界初のオンライン写真ライセンスビジネスの会社です。1億3,500万枚以上の画像を保有しています。SPACは「CC Neuberger II」。ターゲット企業の評価額は48億ドルです。

イートロ

2007年に設立されたイスラエルの会社。ソーシャル・トレーディングのプラットフォームを開発・提供しています。SNSで情報を共有して投資家同士が繋がりを持ち、その手法を踏襲して投資できる点に強みがあります。株式、為替、暗号通貨など様々な取引を扱っています。SPACは「FinTech Acq. V」です。

ポールスター

ボルボ・カーズグループ傘下のEVハイブリッドカーに特化したメーカーです。2017年にプラグインハイブリッドカー「ポールスター1」を世に送り出しました。SPACは「Gores Guggenheim」です。


SPACを活用して上場する目的と背景

SPACが急速に注目される背景には、世界的な低金利を後ろ盾としてスタートアップが大型の資金調達をしやすくなったことがあると考えられます。2021年上半期の世界のスタートアップ投資は2,880億ドル(31.7兆円)となり、前年同時期の1,100億ドルを大幅に上回ったとのレポートをスタートアップ・ベンチャーキャピタルの調査データベース「CrunchBase」が出しました。評価額で10億ドルを上回るユニコーンの数は879社となり、2020年は161社が新たに誕生したのに対し、2021年は上半期だけで250社がリスト入りしています。

ベンチャーキャピタルが投資したスタートアップの出口戦略はIPOが基本となりますが、上場のための監査に時間がかかる上、厳しい検査項目を一つひとつ通過する必要があります。審査が通らずに上場を断念することも少なくありません。SPACは審査項目が少なく、短時間で効率的に上場することができます。

スタートアップに投資をする投資家目線で見ると、出資した資金を効率的かつ確実に回収することができます。その投資で得られた利益をまた別の企業に投資することができます。スタートアップの経営者から見ると、資金調達がしやすい環境が整備された上、煩雑なIPOの審査を通過する必要がなくなるのです。


日本でもSPAC上場した企業に投資できるか

日本ではSPACが制度化されていないため、SPACの日本株を購入することはできません。日本で投資できるのは、基本的に米国のSPACです。米国株を取引できる証券会社の口座が必要です。マネックス証券、SBI証券、楽天証券、DMM証券などがあります。

証券会社によっては、特定の銘柄への投資ができないことがあります。マネックスやSBI証券は4,500を超える銘柄を扱っていますが、DMM証券は1,200銘柄となっています。証券会社と契約する際は、銘柄数や目的の銘柄を扱っているかどうかを事前に確認すると良いでしょう。取引手数料は約定代金の0.495%に設定している会社が多くなっています。注意点は為替手数料がかかることです。日本円から米ドルに両替すると手数料が発生します。1ドル当たり25銭に設定している証券会社が多いようです。


日本でもSPACは制度化される?

東証は2021年10月に「SPAC制度の在り方等に関する研究会」を開催しています。日本ではSPAC上場制度を設ける目的、必要性がそもそもあるのかどうかから議論がスタートしています。日本で制度化されるかどうかは、こうした研究会の導き出した答え次第です。

SPACを通して上場する企業の審査は緩いため、虚偽記載や重要事項の申告漏れがないとは限りません。経営管理が未成熟な状態の企業が立て続けに上場し、不祥事を重ねるようなことになれば証券取引所の信用そのものが失われます。投資家やスタートアップにとってメリットの大きいSPACですが、効率化を推し進めたが故の弊害があるのです。

日本は特に企業買収に良いイメージを持っていません。これは過去に、国内の有名企業が買収の憂き目にあい、ハゲタカのイメージがついたためと考えられます。西武グループがサーベラスの出資を受けた際、サーベラスが秩父線や球団売却を提案したことで、国内のファンから猛反発を食らうことになりました。ライブドアがニッポン放送株を取得してフジテレビを手中に収めようとした際も、大バッシングに見舞われたことを記憶している人も多いと思います。企業買収への拒否反応が根強く残る限り、SPACの理解は得づらい側面があるかもしれません。

また、日本株は業績至上主義の考え方から抜け出すことができていません。新興企業はサービスのグロースを目指すため、先行投資が膨らんで赤字になりやすい傾向があります。業績のみに注目をすると、SPACで上場した会社の成績の悪さばかりが目につきます。上場しても資金が集まりにくいということがあるかもしれません。


日本のスタートアップもSPACで上場するケースはあるか?

SPACの設立は日本でも活発になってきました。ソフトバンクグループがSPACを活用していることは良く知られていますが、マネックスグループも2021年11月にネット証券子会社トレードステーショングループをSPACとの合併を活用して2022年の上場を目指すと発表しています。マネックスはトレードステーショングループを2011年に470億円で買収していました。

国内の独立系投資ファンド・アドバンテッジパートナーズグループは、国内のPEファンドとしては初となるSPACをニューヨーク株式市場に上場しています。金融サービスの東京センチュリーがSPACに20百万ドルを出資しました。再生エネルギー関連ビジネスの強化を見込んでいます。国内の投資ファンドや証券会社がSPACの活用を進めています。日本のスタートアップがSPACによって米国市場に上場することも夢ではありません。

産業の発展のためにはスタートアップの存在が欠かせません。投資を活性化させ、事業を発展しやすくなる環境が整うのであれば、SPACは大いに歓迎されるものだと言えます。

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