資産活用

東芝の経営を揺るがしているアクティビストファンドとは? 個人も投資できるのか

Aventure編集部

日本が世界に誇る企業の一つである東芝が、組織を2分割するプランを株主に提案しました。その前には投資ファンドに売却する構想を立ち上げ、却下となって当時の最高経営責任者である車谷暢昭氏が更迭される憂き目にも逢いました。この一連の出来事は、村上ファンド出身のアクティビストファンド「エフィッシモキャピタル」の存在抜きには語れません。10.4%の株式を保有して巨大企業を手のひらで転がす様は、アクティビストファンドの面目躍如たるものがあります。このアクティビストファンドとはどのようなものなのでしょうか?この記事では、アクティビストファンドの詳細や東芝の一件、個人がアクティビストファンドに投資をする方法を解説します。


アクティビストファンドとは

 
 
 
 
 
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ニュースでアクティビストファンドという言葉を頻繁に聞くようになりました。アクティビストファンドとは、企業の一定の株式を保有し、経営陣に対して主に増配・自社株買いなどの株主還元を要求し、株主総会で議決権行使を積極的に行う投資ファンドです。特に増配はインカムゲイン、キャピタルゲイン両方の上昇要因ともなり得るため、アクティビストファンドが好んで提言します。

もの言う株主とも言われる通り、経営陣にとっては目の上のタンコブとも言える存在です。しかし、アクティビストファンドが投資している銘柄は、株価が上がる可能性があり、一般投資家にとって目の離せない存在です。

投資手法

アクティビストファンドは、業績が悪化した企業の大規模増資をする隙に入り込むことがよくあります。東芝のエフィッシモキャピタルがこの例でした。東芝は債務超過回避を目的として6,000億円の史上まれに見る巨額増資を行いました。東芝はアクティビストファンドが入り込まないよう、慎重に買い手を選んだと言われていますが、網の目をすり抜けるように入り込んだのです。エフィッシモキャピタルは東芝株を10.4%保有しています。

増資で一定数の株式を保有するのが、アクティビストファンドの常套手段です。エフィッシモキャピタルがユニークな手法をとったのが川崎汽船における「クリーピング・テイクオーバー」です。市場で段階的に株式を買い集め、少しずつ保有比率を高める方法です。これにより、経営陣に揺さぶりをかけつつ支配権を握るのです。

 
 
 
 
 
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川崎汽船は2015年に買収防衛策を廃止し、市場との融和策をとっていました。それがエフィッシモキャピタルに狙われる隙を与えたのです。エフィッシモは2015年9月に6.18%を保有。2018年6月には保有比率を38.99%まで高めました。1/3以上の株式を保有すると、資産譲渡などの重要な特別決議を単独で阻止できるほどの影響力を持ちます。エフィッシモはパートナーである内田龍平氏を社外取締役として受け入れることを川崎汽船に提案。2019年6月にその提案を飲みました。

株式市場には5%ルールというものが存在し、5%を超えて保有した場合は大量保有報告書を提出する義務があります。EDINETにて確認することができます。

主なアクティビストファンドを紹介します。

〇エフィッシモ・キャピタル・マネジメント
旧村上ファンド系のアクティビスト。

〇サード・ポイント
米国を代表するアクティビスト。日本ではセブン&アイ・ホールディングスにも投資をしている。

〇エリオット・マネジメント
世界最大のアクティビスト。コロナ禍で景気が冷え込んだ2020年でも運用成績は+12.7%という驚異的な実績を残した。

〇バリューアクト・キャピタル・マネジメント
米国に本拠地を置き、150億ドルの資産を運用するアクティビスト。10%の株式を取得して取締役を派遣し、財務体質の改善などを行う。サード・ポイントなどのタカ派と比べると、穏健派であることが特徴。

〇キング・ストリート・キャピタル・マネジメント
180億ドルの資産を運用する米国のアクティビスト。財務体質が悪化した企業の株を安値で拾い、業績が回復して株価が上昇したタイミングで売りぬけるディストレス投資を得意とする。東芝の増資を引き受けたことでも知られている。


アクティビストファンドが投資した企業の株価は上がったか?

 
 
 
 
 
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アクティビストファンドが出資をした銘柄は実際に株価が上昇しているのでしょうか?

エフィッシモ・キャピタル

・ヤマダ電機(ヤマダホールディングス)
出資時期:2014年10月15日
保有比率:15.3%
当時の株価:319円
直近(2022年2月23日)の株価:404円
騰落率:126.4%

ストラテジックキャピタル

・宝印刷
出資時期:2015年5月18日
保有比率:4.1%
当時の株価:1,368円
直近(2022年2月23日)の株価:1,828円
騰落率:133.6%

・マックハウス
出資時期:2013年10月30日
保有比率:4.4%
当時の株価:740円
直近(2022年2月23日)の株価:394円
騰落率:53.2%

レノ

・サイバーエージェント
出資時期:2013年4月5日
保有比率:4.1%
当時の株価:836円
直近(2022年2月23日)の株価:1,475円
騰落率:176.4%

・ペプチドリーム
出資時期:2014年10月27日
保有比率:5.0%
当時の株価:2,512円
直近(2022年2月23日)の株価:1,963円
騰落率:78.1%


東芝はなぜ苦境に陥ったのか

 
 
 
 
 
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東芝は2022年2月にこれまで提案していた3分割案を大幅に修正し、インフラサービス事業とデバイス事業の2社分割案を打ち出しました。安定的な財務体質を確保でき、分割コストの大幅な削減、パートナー企業との連携のしやすさが図れるなど、綱川智元CEOはそのメリットを強調しました。ただし3分割案をわずか3カ月で大幅修正しており、迷走している印象が拭えません。

迷走する最大の要因がアクティビストファンドの存在です。東芝は社外取締役を除くと、取締役は代表の綱川氏と元副社長の畠澤守氏しかいません(2022年2月末現在)。経営陣2人は株主との対立に苦心しているのです。対立構造を生んだ背景を説明します。

威信をかけた原子力発電事業

 
 
 
 
 
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東芝は2006年1月にBNFLから原子炉装置を開発する米ウェスティングハウス・エレクトリックを6,200億円で買収しました。これが凋落へと至る最大の要因です。

ただし、東芝が原子炉開発に活路を求めたことには一定の合理性があります。原子炉の建設には複雑な部品や高度な技術が必要であり、東芝の総合電機メーカーとしての強みが活かせます。世の中ではクリーンエネルギーが叫ばれるようになり、特に石炭火力発電からの転換が米国、中国を中心に進んでいました。また、東芝は2000年以降、PC事業の不振に喘いでおり、それが有名な不正会計問題へと繋がって社会的な信用を落としていました。原子炉開発は東芝の新たな出発点に相応しい事業だったのです。

しかし、買収額は尋常なものではありませんでした。当時、ウェスティングハウスの買収に手を上げていたのが三菱重工。買収額2,300億円を提示していたと言います。そこに割って入ったのが東芝で、3倍近い金額で買収する意向を示したのです。買収契約は成立しました。

それから5年後、想像もしなかった出来事に襲われます。東日本大震災とその津波による福島第一原子力発電所のメルトダウンです。建物が吹き飛び、大量の放射性物質が漏れ出す事態を前に、各国は原子力開発プロジェクトを停止しました。工事が進捗しなければ、ウェスティングハウスは事業活動を行えません。倒産してしまうのです。

死に体で上場維持を決断する悲劇

東芝は2017年3月期に9,657億円もの凄まじい損失を計上します。その多くは買収によって生じたのれん、7,000億円超の減損損失でした。東芝は2,700億円の債務超過へと陥ります。このとき、東芝の上場廃止が囁かれました。結果論ではありますが、このとき上場廃止にしていた方が東芝は幸せだったのかもしれません。その後、株主に振り回される様は悲運としか思えないからです。

東芝は経団連の会長を多数輩出し、自衛隊に技術力の高い軍需品を提供する超一流企業です。おそらく政府の働きかけもあったのでしょう、何としてでも上場廃止を回避する策を模索し始めました。東芝は稼ぎ頭だったメディカル事業をキヤノンに売却。更に東芝メモリ(現:キオクシア)をベインキャピタルを中心とする日韓企業連合に売却しました。

伸び盛りだった2つの事業を売却しても債務超過を回避できる見込みはありませんでした。そのため、6,000億円という凄まじい額の増資を決定するのです。

投資ファンドへの身売りも検討

このときに入り込んだのがアクティビストファンドです。

東芝は2020年2月に子会社が不正取引をしていたと発表しました。組織ぐるみのものではなかったため、経営陣は早期の幕引きを図りました。しかし、エフィッシモ・キャピタルは見逃しません。創業者の今井陽一氏を社外取締役として選任する株主提案をするのです。

この提案は否決されますが、エフィッシモは株主総会が適正に行われているか疑問視。第三者委員会による調査を求めました。こうなると、東芝は経営どころではなくなります。

そこで、投資ファンド、CVCキャピタルパートナーズからの買収提案を受け入れる動きも見せました。しかし、CVCは当時東芝のCECだった車谷暢昭氏の古巣です。それが明るみに出ると車谷氏は辞任へと追い込まれます。

東芝の組織を分割する案自体は、不可思議なものではありません。米ゼネラル・エレクトリックも2021年11月に3社に分割すると発表しました。東芝やGEのように多数の事業を持つ企業は、コングロマリット・ディスカウントと呼ばれる、複合体特有の現象が起こります。コングロマリット・ディスカウントとは、会社全体の企業価値が、事業や子会社の合計価値よりも安くなることです。これは好調な事業と不調な事業が入り混じるために起こります。

会社を分割して意思決定のスピードを上げれば企業価値向上を図れます。すなわち、分割された後の既存の株主は、株価が上がる可能性があるのです。しかし、3分割すると分割する費用が高くなるというアクティビストの発言を受けて、早々に2分割案へと変更する。それこそが、東芝の翻弄される弱さを物語っています。


個人が投資するならマネックス アクティビスト・ファンド

 
 
 
 
 
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残念ながら、個人投資家がここに挙げたようなアクティビストファンドに投資をすることは困難です。ただし、投資信託型のアクティビストファンドがあります。「マネックス・アクティビスト・ファンド」です。運用はマネックス・アセットマネジメントが行い、投資助言をカタリスト投資顧問が行います。カタリストの会長はマネックスグループの社長である松本大氏です。

マネックス・アクティビスト・ファンドはカタリストを通した投資先との対話を重視しています。これまで、投資信託の資金を運用するアセットマネジメント会社は、投資先のヒアリングや調査を行いますが、対話をするという踏み込んだところまではいきません。

カタリスト投資顧問は2021年9月にNIPPOに対して少数株主利益保護に関する問題提起を行いました。NIPPOはゴールドマン・サックスのTOBに賛同を表明しましたが、カタリストは少数株主に対する説明責任が全うできていないとし、新たな財務アドバイザーからの株式価値算定書の取得などを行いました。残念ながら、公正性担保措置プロセスの再考には至らず、NIPPOのTOBは成立しました。

しかし、個人投資家でも気軽に投資ができる投資信託で、このような動きがあることは投資妙味があります。アクティビストファンドに興味がある人にはお勧めしたい投資信託です。


株式ニュースで聞き逃せないアクティビストファンドの動向

これまでの投資ファンドの常識は、株式の保有比率を可能な限り高め、経営権を握って企業価値を上げることでした。アクティビストファンドは保有比率の低い状態で価値を上げようとします。それが経営陣との対立構造を生むのは明らかです。しかし、極めて効率的に持株の価値を上げられる可能性があります。

アクティビストファンドの台頭はまだまだ続くと考えられます。その動向を注意深く見ると、将来的に株価が上昇する銘柄に出会えるかもしれません。

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