大規模な自然災害は農産物高騰のサイン、個人は穀物に投資できる?
Aventure編集部
トンガ沖での大噴火により、2022年は冷夏になるとのニュースを耳にした人は多いかもしれません。市場関係者の間では噴煙が成層圏を覆い、日光量が減少するとの見方が出ています。すなわち、穀物相場の上昇を見込んでいるのです。食糧不足への懸念が表面化すると、農作物の価格は高騰する傾向があります。穀物への投資を考えたものの、商品先物取引は情報量が少なく、投資しづらいと挫折していませんか?農作物のETFや穀物を扱う株式銘柄であれば手軽に投資ができます。この記事では、農作物に投資する方法を紹介します。
日本で農作物に投資をする方法
2021年はペルー沖の海面水温が平年より下がる「ラニーニャ現象」に見舞われ、天候不順や厳冬の不作要因となりました。そのため、農作物の価格は全般的に高騰しました。2022年も「ラニーニャ現象」が発生する可能性が高く、トンガの噴火の影響も加わって不作が見込まれます。農作物の価格は引き続き上昇する可能性が高まりました。
農作物にはどのような投資方法があるのでしょうか。
商品先物取引
穀物などに投資をする最も良く知られた方法が、商品先物市場への参加です。商品先物取引では一般大豆、小豆、とうもろこしなどを取引することができます。商品先物取引の目的は、販売業者が販売時の商品価格下落リスクを回避し、製造業者が原料調達を安全確保することにあります。従って、取引業者は取引所の取引施策を持つ参加者に限られます。
個人が取引に参加する場合は、商品先物取引業者(受託取引参加者)を通して市場に参加することになります。商品先物取引業者は日本商品先物取引協会のページで公開されています。LINE証券や楽天証券、GMOクリック証券などのネット系証券会社も登録されています。
楽天証券では「先物・オプション取引口座」を開設することで取引が可能です。
海外先物取引
国内だけでなく、海外先物取引も可能です。海外先物取引は、米国やシンガポールにある取引所に上場している株価指数や工業品、農作物などを扱っています。楽天証券ではとうもろこし、小麦、大豆を扱っています。農作物は天候に大きく左右されますので、特に海外の農作物を扱う場合は基本的な知識を備えておく必要があります。
大豆は3月から5月にかけて植え付けを行います。この時期には雨が必要です。大雨に見舞われると植え付けが遅れ、収穫に影響します。植え付けシーズンである春先の天候に特に注意してください。この時期の天候は穀物の成長や収穫に与える影響が大きく、不確実性が高い分、相場が荒れることがしばしばです。
6月はとうもろこし、8月は大豆の授粉期に当たります。授粉期が過ぎると、天候不順が穀物に与える影響が小さくなると言われています。授粉期は穀物価格が上がりやすいタイミングです。
農作物ETFの購入
ETFによる投資という方法もあります。ETFとは醸造投資信託のことで、資産運用のプロフェッショナルが投資家から資金を集め、投資を行うものです。ETFによって投資家は間接的に穀物に投資することになります。
上場しているため、いつでも購入できる点はメリットが高いと言えるでしょう。以下のような投資信託があります。
・WisdomTree農産物上場投資信託
・WisdomTree穀物上場投資信託
・WisdomTree小麦上場投資信託
・WisdomTreeとうもろこし上場投資信託
・WisdomTree大豆上場投資信託
ETFには大きく2つのパターンがあります。複数の農作物に投資をするものと、1つに絞った農作物に投資をするものです。
「WisdomTree農産物上場投資信託」は2021年5月の段階でとうもろこしに21.76%、大豆に18.39%、大豆油に13.39%、大豆粕に9.77%、砂糖に9.46%投資をしています。分散しているため、一つの農作物が値崩れを起こしても、他のもので補うことができます。安定感があり、リスク分散型と言えます。
「WisdomTreeとうもろこし上場投資信託」は、とうもろこしに100%投資をしています。とうもろこし価格がそのまま反映されますので、価格の乱高下がしやすいと言えます。
農作物関連銘柄への投資
農作物を扱う株式を購入するという方法もあります。農作物価格の高騰が株価高騰を招くとは考えにくいですが、不作によって農作物需要が膨らみ、手持ちの商品を高値で売ることができれば、企業は利益を出しやすくなります。
代表的な企業に以下のようなものがあります。
・三菱食品
・伊藤忠食品
・加藤産業
・双日
三菱食品について詳しく説明します。 2021年3月期の売上高は前期比2.9%減の2兆5,776億円、純利益は同2.9%減の110億円でした。2022年3月期は前期比22.4%減の2兆円、純利益は21.9%増の135億円を予想しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食店向けのチルド食品、ビール類などを中心として売上高を落としました。ただし、経費削減策を推し進めており、利益面では大幅に改善しています。
2016年度から原材料事業を推進するなど、川上寄りの事業を強化してきました。これにより、供給、物流、需要をマッチングさせるバリューチェーン・コーディネーターとしての三菱食品の役割がより明確になりました。 今後はデジタル化を推進し、生産性を上げることによって利益が更に出るようになる可能性もあります。
トンガの噴火は株価にどう影響したか?
2022年1月15日トンガ沖の海底火山「フンガトンガ・フンガハーパイ」で大規模な噴火が発生しました。火山爆発指数は0~8の9段階で6。1991年のフィリピン・ピナツボ火山に匹敵する規模だったとされています。その勢いの大きさは、8,000km離れた日本にも津波警報が出されたことからもよくわかります。
噴煙が成層圏に達すると日光がさえぎられることから、穀物相場に影響が出ることで知られています。日本気象学会「1993年の大冷夏」によると、1993年夏の東北地方は1913年以来の大冷夏でした。東北地方の冷夏による大凶作は世界的な大規模火山噴火の直後と翌年に起こることが多いとしています。大規模噴火の後、地球全体では0.2℃程度の気温低下しかおきないものの、東北地方の夏はこの10倍の2℃前後の低下となることが示されました。ピナツボ火山は1991年6月に噴火しており、東北地方の冷夏はこの影響によるものだと結論付けられています。
ピナツボ火山は北半球ですが、トンガは南半球です。そうすると、火山の影響は限定的なのではないかとも考えられます。しかし、オーストラリアやニュージーランド、南アメリカはパンパと呼ばれる穀倉地帯になっています。噴火したのはちょうど夏であり、南半球が冷夏となる可能性は十分に考えられます。穀倉地帯の輸出量が細くなれば、農作物の値段が上昇する可能性も考えられます。
トンガ沖の火山が天候に与える影響は限定的だと指摘する専門家もいます。今回の火山が海底火山の噴火だったため、火山灰の飛散が抑制され、冷夏を引き起こす二酸化硫黄が水に吸収された可能性があるためです。
注目のアグリテック企業
短期目線で穀物に投資をすることに主眼を置いて説明してきましたが、農作物や穀物、食糧は本来長期的な目線で投資をすべきものです。人類にとって必要不可欠なものであり、地球温暖化や人口爆発によって食糧危機が起こるとも限らないためです。
企業の一部は食糧問題に対して先進的な取り組みをしています。
ヤンマー
農業機器のヤンマーは農業が抱える課題を解決するための、スマート農業を提案しています。具体的には、ロボットによる省人化・高精度化、最適な施肥量を割り出してバランスよく散布するサービスなどです。
建設機械のコマツは、「KOMTRAX」というシステムを使い、全世界にある40万台をネットワークで繋ぎ、監視・遠隔操作するテクノロジーを生みだしました。IoTで成功した企業として良く知られていますが、ヤンマーの取り組みも農業分野でのIoTです。特に農業は人手不足が深刻で、重労働なことから農業従事者の更なる減少が見込まれています。無人化、省人化を実現しながら、穀物に最適な育成環境を提供できる可能性を秘めています。
オイシックス・ラ・大地
食材や食品を家庭に届けるオイシックス。その傘下に「Future Food Fund」というベンチャーキャピタルがあります。このファンドは「食の未来に投資をする」をコンセプトとしており、フードテック、ヘルステック、アグリテックなどの食分野に積極投資をしています。
出資先にファームノートホールディングスがあります。この会社はクラウド牛群管理システムの提供を行っています。牛の遺伝改良や疾病予防、繁殖改善などをクラウド管理することにより、管理しやすく、精度を上げることに繋がります。
農業総合研究所
農作物の直売所事業の会社です。直売所の運営もしていますが、どちらかというとIT、物流プラットフォームを提供することに強みがあります。農業総合研究所は、生産者とスーパーなどの小売店を繋ぐ物流プラットフォームを構築することで、最短1日で店頭に届けることができます。ITプラットフォームは農作物のブランディングをサポートする他、小売店からの購買情報を吸い上げて生産者にフィードバックする仕組みも設けています。生産者はそのデータを活用し、消費者に喜ばれる農産物がどのようなものなのかを把握することができます。
農業のIT化に貢献している企業です。
分散投資の一手法としても有効な農作物投資
農作物への投資は難しい。確かに、商品先物取引は株式のように手軽に始められるものではなく、独特な商習慣が存在して価格形成が読みづらい領域かもしれません。しかし、近年では農作物に特化したETFの存在で、株式と同じように取引することができるようになりました。
農作物は投資妙味のある面白い投資先です。特にトンガ沖の噴火のような大きな出来事があった場合は価格が大きく動きやすくなります。世界の天候、気候変動にも敏感になり、SDGsを意識するきっかけにもなります。
投資をする際は、短期的な目線で取引をするのか、長期的なものなのか。気象条件が農作物にどのような影響を与えるのか。企業に投資をするのであれば、農作物と利益の関係をある程度理解することをお勧めします。