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【名作】John Coltrane『Blue Train』を大解剖

Aventure編集部

ジョン・コルトレーンの代表作『Blue Train』は、ジャズ好きであれば誰しもが一度は聴いたことがある名盤です。仮にジャズに興味がなくても「アルバムタイトルだけは聞いたことがある」「ジャケット写真には見覚えがある」という人も少なくはないはずです。この記事では『Blue Train』の制作背景や収録曲の魅力を紹介していきます。


『Blue Train』の制作秘話と当時の評価

ジョン・コルトレーンの『Blue Train』は、1957年に発売されました。コルトレーンがセッションリーダーとして制作したアルバムの中では、唯一ブルーノート・レコードからリリースされた作品です。ジャズ界の歴史に残る作品の一つである『Blue Train』の気になる制作秘話と作品の評価を解説していきます。

『Blue Train』の制作裏話

『Blue Train』は、コルトレーン自身もお気に入りの作品の一つのようです。「バンドメンバーが良かったから、良いレコーディングができた」と1960年のインタビューで答えています。

レコーディングには豪華なミュージシャンが参加しました。マイルス・デイヴィスのバンドメンバーとしてともに活動したポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズをベースとドラムに迎え、ピアノには昔からの友人であるケニー・ドリューが参加しました。トランペットのリー・モーガンとトロンボーンのカーティス・フラーはジャズ・メッセンジャーズのメンバーでした。

このメンバーでの共演は初めてだったため、前日にマンハッタンにあるスタジオでリハーサルをおこなっています。たった一度のリハーサルをおこなっただけにもかかわらず、優れたメンバーとともに制作したためか、アルバムはたった1日でレコーディングが完了しました。

アルバムのレコーディングはニュージャージーにあるヴァン・ゲルダー・スタジオでおこなわれました。レコーディングはのちにジャズ界きっての名エンジニアとして名を馳せるルディ・ヴァン・ゲルダーが担当しています。ちなみに、当時のヴァン・ゲルダー・スタジオはルディの実家のリビングにレコーディング機材を入れた簡易なものだったそうです。

当時の『Blue Train』の評価

『Blue Train』が制作された当時、アメリカのBillboard誌では、モダンな印象を与える曲としてポジティブなレビューがなされました。レビューの中では、他のメンバーの演奏力の高さにも言及されており、この編成での演奏がどれだけ素晴らしいものであったかを物語っています。

アルバム1曲目に収録されているタイトルトラックの『Blue Train』はシングルカットもされヒット曲となりました。全米のジュークボックスで、たくさんの人に聴かれる1曲となったのです。

『Blue Train』ジャケット

『Blue Train』のジャケットデザインはとてもシンプルで、コルトレーンがサックスのマウスピースを口に当てている写真と「john coltrane-BLUE TRAIN-blue note 1577-」の文字が書かれているのみです。この写真を撮影したのはフランシス・ウルフで、デザインはリード・マイルスが手掛けました。

フランシス・ウルフはブルーノート・レコードの共同経営者であり、アルフレッド・ライオンの古くからの友人でした。ブルーノート・レコードに関わりのあるミュージシャンの写真を数多く撮影し、当時のジャズシーンを写真で残した人物です。リード・マイルスはブルーノート・レコードからリリースされるレコードの多くのジャケットデザインを手掛けています。

フランシス・ウルフの写真を使ってリード・マイルスがデザインしたジャケットは、ブルーノート・レコードの作品の一つのアイデンティティでもありました。


ジョン・コルトレーンを解剖

祖父や父の影響から音楽に触れ合う機会が多かったコルトレーンは、子供のころから様々な楽器に触れてきました。音楽とともに人生を駆け抜けたコルトレーンの生涯の軌跡に加え、ブルーノートレーベルとの関係性も紹介していきます。

ジョン・コルトレーンの人物像

コルトレーンは1926年にアメリカのノースカロライナ州に生まれました。幼少期に、聖職者である祖父と父親にゴスペル音楽を紹介されます。

父がよく楽器を演奏していたこともあり、少年時代のコルトレーンは音楽に対する興味を抱きます。11歳でクラリネットとホルンを演奏するようになり、高校生の頃からサックスを演奏しました。高校卒業後には、フィラデルフィア州のGranoffSchoolof Musicにて音楽を2年間勉強し、クラス内で1番になります。

しかし、卒業後にすぐに音楽家として成功は掴めません。彼が当時のリスナーに知られるようになったのは、1955年にマイルス・デイヴィスのバンドのメンバーに抜擢されたころでした。世間からの知名度は上がった一方、薬物やアルコールに依存してしまうようになりました。最終的にはバンドをクビになってしまいますが、それがキッカケでその後薬物中毒を克服していきます。

マイルス・デイヴィスのバンドを脱退してからはピアニストのセロニアス・モンクに弟子入りし、そこからは見違えるようなパフォーマンスで活躍します。1967年に40歳で肺がんで亡くなったため彼の音楽家としての人生は短いものとなりましたが、彼の残した音楽は現在も高い評価を受けています。

ブルーノート・レコードとの関係性

ブルーノート・レコードは1939年にアルフレッド・ライオンによって設立されたレコード会社です。ジャズ専門のレコード会社として注目を集め、歴史に残る名盤を数多く手掛けてきました。

コルトレーン自身がセッションリーダーとして制作したアルバムをブルーノート・レコードからリリースしたのは、『Blue Train』が最初で最後でした。というのも、もともとブルーノート・レコードの創設者であるアルフレッド・ライオンはコルトレーンとの契約を強く望んでいましたが、1957年にコルトレーンはプレスティッジと契約を交わしていたからです。

しかし、コルトレーンはアルフレッド・ライオンの熱意に応える形で『Blue Train』のリリースをおこない、1950年代のブルーノート・レコードを代表する名盤の一つとなったのです。

1950年代〜1960年代の音楽シーンとコルトレーン

コルトレーンが活躍していた1957年〜1967年のアメリカでは、ジャズが大ブームでした。一方で当時のアメリカは黒人差別が非常に酷い時期でもあり、1963年にはアラバマ州のバーミンガムで、KKKによる黒人教会を狙った爆発テロが起こりました。

その事件を受けてコルトレーンは『Alabama』という曲を制作しています。現代のように声をあげて差別に向かう方法ではありませんが、コルトレーンなりに差別に対する気持ちをジャズで表現していたのかもしれません。


21世紀に発売されたコルトレーンの新譜!?

2018年、コルトレーンの完全新作アルバム『Both Directions at Once:The Last Album』が発売され、「死後60年以上が経った2018年になぜ新作が?」と世間を騒がせました。コルトレーンの死後もスタジオアルバムやライブアルバムなど様々なアルバムが発売されましたが、完全な新作は初めてです。

この新作は、コルトレーンの妻の遺品の中からまだ世に出ていないマスターテープが見つかったことをきっかけに発売されることになりました。この音源のレコーディングはかつてImpulse!との契約期間中におこなわれたと記録だけは残っていたのですが、マスターテープが見つからず、これまで音源化されていなかったのです。

「まさか21世紀にコルトレーンの新作が聴けるだなんて」と、世界中のジャズファンが喜びました。


『Blue Train』名曲紹介

『Blue Train』には全部で5曲が収録されています。そのうちの4曲はコルトレーンによって作曲されました。作曲家としてのコルトレーンは、単純な作曲ではなく遊び心のある作曲をしています。

ここではその中から代表的な3曲を紹介します。

『Blue Train』

1曲目に収録されているのはタイトルトラックである『Blue Train』です。若干の不穏さを感じさせるテーマから始まったかと思えば、すぐに始まるのがコルトレーンによるテナーサックスのソロです。色っぽく表現豊かで緩急が付けられたフレーズは、どんどんのめり込んで聴いてしまいます。

その後トランペット、トロンボーン、ピアノ、ベースと順番にソロを回していき最後にもう一度テーマを演奏して約10分の演奏が終結します。各パートのソロ中の伴奏も聴きどころの一つで、とくにソロの間にどんどんビートが変化していくドラムにはぜひ注目して聴いてみてください。

『Moment’s Notice』

『Moment’s Notice』は2曲目に収録されており、穏やかに締めくくられた『Blue Train』とは対照的に、アップテンポで明るい雰囲気で始まる曲です。軽快に奏でられるウォーキングベースとドラムの細やかなビートの組み合わせグルーヴィーで、心地よさが感じられるはず。

各パートのソロ回しの中でも特筆すべきは、突然深いリバーブがかけられるトロンボーンソロと弓弾きで演奏されるベースソロです。どちらもリスナーの不意をついて、このセッションに奥行きを与えています。こうした特徴的なソロ回しの後に再び奏でられるテーマのメロディラインは非常にキャッチーで耳なじみがよく、このアルバムの中でももっとも聴きやすい1曲と紹介できるでしょう。

『I’m Old Fashioned』

最後に紹介するのはアルバム内で唯一のバラードナンバーである『I’m Old Fashioned』です。作曲を担当したのはジェローム・カーンとジョニー・マーサーで、このアルバムでコルトレーンが作曲していないのはこの曲のみです。

メロウでしっとりとしたこの曲は色気のあるサックスの音色がよく似合っています。各楽器の演奏のみなのになぜだか聴いていると心がジーンとしてしまうような、「これぞバラード」だと感じさせられる名曲です。


Jazz入門者にもオススメの世紀の大名盤『Blue Train』

ジョン・コルトレーンは1960年代を支えたジャズ界のカリスマです。ドラッグや酒への依存で思うように活動できない時期もありましたが、見事に立ち直りサックスで当時のジャズ界を盛り上げました。

彼の代表作である『Blue Train』はリリース以降多くのジャズファンに愛され、後世に大きな影響を与えてきた名盤です。その一方で親しみやすく聴きやすい楽曲が揃っており、ジャズ入門者の方にもオススメできる1枚です。

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