Oasis『Definitely Maybe』|90年代UKロックを代表する1枚
Aventure編集部
オアシスはロックシーンにおいて世界的な人気を誇るモンスターバンドです。イギリス出身の彼らはブリットポップの旗手として90年代のロックシーンを牽引し、世界中のリスナーとミュージシャンに多大なる影響を与えました。この記事では彼らの活動の軌跡に加え、1stアルバムである『Definitely Maybe』の制作背景からジャケットや聴きどころまでを紹介していきます。
オアシスってどんなバンド?
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1stアルバム『Definitely Maybe』の紹介をする前に、まずはオアシスとがどのようなバンドなのかを紹介していきます。どのような軌跡を辿り、どういった作風なのかを一緒にみていきましょう。
バンドの軌跡
オアシスの歴史は、1991年に前身バンドであるザ・レインというバンドが結成されたことから始まります。
ザ・レインはボーカルのクリス・ハットン、ギター担当のポール・“ボーンヘッド”・アーサーズ、ベース担当のポール・“ギグジー”・マッギガン、ドラム担当のトニー・マッキャロルで結成されました。しかし、ボーカルのクリスは実力不足のためすぐにバンドを辞めさせられ、新たなボーカリストとしてリアム・ギャラガーが加わったのです。リアムが加入した際にバンド名をオアシスに改名し、活動をスタートさせました。
このころ、のちにオアシスのソングライターでありリードギタリストを務めることになるノエル・ギャラガーは、インスパイラル・カーペッツというバンドのローディーとして働いていました。インスパイラル・カーペッツは当時のメインストリームであった音楽ジャンル、マッドチェスターを牽引するバンドの一つです。
ノエルは4人で活動していたオアシスのライブを観た際に、彼らの才能に可能性を感じました。そこでオアシスの5人目のメンバーとして楽曲制作とリードギタリストを担当したいと申し出たのです。こうして初期の主要メンバーがそろったオアシスは、楽曲制作とライブ活動を精力的におこない、1994年の1stアルバムの制作へと向かいます。
オアシスとビートルズの関係
ビートルズは労働者階級のバンドとして知られていますが、オアシスもおなじく労働者階級の出身でした。そうした共通点もあってか、オアシスはビートルズの影響を受けていることを公言しています。とくにノエルはビートルズを敬愛しており、ビートルズは「自分にとってすべてだった」と語っているのです。
楽曲はもちろん、アルバムのジャケットデザインやファッションなど、オアシスからはあらゆる面でビートルズの影響を感じさせます。オアシスはブリットポップの代表格として語られるバンドですが、ビートルズへのリスペクトの念こそが、60〜70年代のイギリスのロックへの回帰を目指したブリットポップムーブメントの原動力となったのかもしれません。
オアシスの楽曲が持つ魅力
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オアシスの魅力を挙げるとすれば、ノエルの高いソングライティングセンスによる楽曲の良さが挙げられるでしょう。ノエルは10代から積極的に音楽制作をおこなっており、ローディーとしてプロのバンドの間近で仕事をしていた経験もあります。
そうした豊富な経験と彼の内に秘めるセンスを活かし、駆け抜けるようなロックンロールからメロウで聴き惚れてしまうようなバラードまで、様々な雰囲気の楽曲を手掛けてきました。そしてそのどれもがキャッチーで親しみやすく、リスナーの心を掴んで離さないのです。
リアムが持つ見事な歌声もオアシスの魅力として欠かせません。とくに1stアルバムから3rdアルバムまでは透明感のある歌声を耳にすることができ、伸びのあるファルセットも駆使して歌っています。
一方、キャリアを重ねるにつれてハスキーでしゃがれた声質で歌うことが増えていきました。しかし、そうした歌声の変化すらも楽曲に奥行きを感じさせる要素の一つとしてバンドの味になっているのです。
ギャラガー兄弟の確執とその後
オアシスの歴史を語る上でギャラガー兄弟の確執について触れない訳にはいきません。リードギタリストであり兄のノエル、ボーカルであり弟のリアムはこれまで幾度となく兄弟喧嘩を繰り返し、2010年のバンド解散も彼らの確執が原因の一つだと言われています。
ツアー中に喧嘩をしてどちらかが出演をやめたり、ライブ中に言い争いを始めてリアムが歌うのをやめてしまったこともありました。こうした公の場でのトラブルが絶えなかったため、ギャラガー兄弟の不仲説はファンのみならず音楽好きの間で有名な話になってしまったのです。
しかしオアシス解散から約10年が経った2020年、ノエルとリアムの子供たちが2人の仲を取り持って関係を修復しようとしていると報じられました。兄弟は互いに連絡を取り合っているそうで、SNSではオアシスの再結成についても言及されています。これまでに再結成に関する言動があっても実現されることはありませんでしたが、今度こそは実現してほしいと世界中のファンが熱望しているでしょう。
1stアルバム『Definitely Maybe』の制作背景
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『Definitely Maybe』が制作されたのは、彼らが1993年に出演した1本のライブがキッカケとなりました。このライブには人気レーベルであるクリエイション・レコーズに所属するバンドが出演しており、レーベルのオーナーのアラン・マッギーがたまたまオアシスのライブを目にしたのです。アラン・マッギーは即座に彼らのアルバム制作を決意し、ノエルに声をかけたそうです。
こうして1stアルバムの制作が始まったのですが、モノウ・ヴァレー・スタジオでおこなわれた最初のレコーディングはうまくいきませんでした。これまでライブをメインに活動していたオアシスにとって、プロのレコーディングエンジニアとともにおこなう制作は馴染みのないものだったのです。そのため、ライブと同じサウンドやノリを出せず、レコーディングは仕切り直しになったといいます。
ソーミルズ・スタジオでの2度目のレコーディングはよりライブに近いセッティングと手法を取り入れた結果、見事なテイクがスムーズに録り進められました。レコーディング自体は2週間で終わったと言われています。
ビートルズの影響を受けたジャケットデザイン
『Definitely Maybe』のジャケットには、横たわるリアムの横でノエルがギターを弾いており、ほかのメンバーはテレビを見ている写真が使用されています。この写真を撮影したのはオアシスのジャケット写真の多くを手掛けたマイケル・スペンサーで、アートワークはブライアン・キャノンが担当しました。
この写真が撮影されたのは結成メンバーであるボーンヘッドの自宅です。この家の裏庭では『Definitely Maybe』にも収録されている『Shakermaker』のMVも撮影されており、この家は現在別の人の手に渡っていますが、オアシスのファンの間では聖地として知られています。
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このアルバムジャケットのデザインはビートルズのアルバム『A Collection Of Beatles Oldies』の背面ジャケットのデザインに影響を受けたそうです。単にメンバーを写した素朴な写真でありながら、そこにある物語を想像させられるような余白が感じられるテイストは両者に通じるものがあります。
ちなみに、リアムは『Definitely Maybe』のジャケットにはナイフとバターの写真を使いたがったという逸話も残っています。
収録曲の聴きどころを紹介
最後にオアシスの1stアルバム『Definitely Maybe』の収録曲の聴きどころを紹介していきます。全曲聴き逃がせない名曲ばかりですが、とくにオススメの3曲をピックアップしたのでまずはここから聴いてみましょう。
Rock’n’ Roll Star
記念すべきアルバムの1曲目であると同時に、「オアシスとはどんなバンドか」を集約した集大成のような1曲です。この曲を聴けばオアシスの精神性と音楽性の両面が一度に理解できるでしょう。
楽曲はノエルの気だるげな単音で奏でられるギターリフからスタートし、痛快なロックンロールサウンドに乗せてタイトル通り「俺はロックンロールスターだ」と何度も繰り返しています。オアシスはこの曲を観客が数人しか居ないころからライブで演奏しており、何年もかけてこの曲に書かれたことを事実にしてきたのです。
こうした音楽活動における執念や自信たっぷりのスタイルは、彼らのファンを魅了している要素の一つでもあります。
Live Forever
この曲は当時の音楽シーンの中心にあったグランジの騎手、ニルヴァーナへのカウンターアクションとして制作されたと言われています。ニルヴァーナの曲には自分自身を否定するような歌詞が多いことを受け、ノエルは「自分は死にたくないし、永遠に生きたい」という思いを込めたそうです。ここにもグランジへの対抗というブリットポップの精神が宿っているのです。
楽曲の雰囲気を紹介すると、オアシスの魅力の一つである優しく耳当たりのいいロックバラードに仕上げられており、リアムの透明感のあるファルセットが心地よく響いています。リアムの特徴でもある粘りのある独特の節回しも味わえ、何度も聴きたくなる中毒性が感じられるはずです。
Supersonic
シンプルなドラムのビートに乗せて哀愁のあるギターのアルペジオで始まるこの曲は、オアシスが『Definitely Maybe』に先立ってデビューシングルとしてリリースしました。
楽曲全体を通してオアシスの楽曲が持つダークな一面が感じられる作品で、歌詞を読み解くと『Supeersonic』とは、薬物を使ってハイになっている様子を指しているようにも思われます。一方で、歌詞の中にはビートルズのアルバム『Yellow Submarine』の名が登場しており、ビートルズを敬愛しているノエルらしい遊び心も感じられます。
痛快なロックだけではない、オアシスが持つどこか鬱屈とした雰囲気が味わえます。
ブリットポップの火付け役となった作品
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90年代のイギリスを代表するロックバンド、オアシスの1stアルバム『Definitely Maybe』はブリットポップムーブメントが広がるきっかけとなったアルバムの一つです。
収録曲からジャケットデザインに至るまで、彼らが敬愛するビートルズからの影響に加え、ノエルのソングライティングセンスとリアムの透明感ある歌声が魅力の作品です。間違いなく洋楽ロックシーンを知る上では欠かせない1枚だといえるでしょう。
何年経っても色褪せない名曲が詰まっているので、この機会にあらためてじっくり聴いてみてはいかがでしょうか。