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「新しい資本主義」で一躍脚光を浴びた公益資本主義とは?

Aventure編集部

2021年10月4日に発足した岸田内閣は、「新しい資本主義」を掲げています。経済的な発展・成長を目指すことは極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組むとしている点はこれまでの首相と変わりません。一番の違いは、成長の果実である分配を、所得向上や中間層の維持に回すことによって、成長の好循環を起こそうとする姿勢です。
「新しい資本主義」の根幹にあるのが公益資本主義と呼ばれる考え方です。公益資本主義が広がると、従来の企業経営や株式市場の概念が崩れ去ります。公益資本主義とはどのようなものなのでしょうか?


公益資本主義とは?

公益資本主義実践協会は、公益資本主義を「米国型の株主資本主義でも中国型の国家資本主義でもない21世紀の人類社会が直面するいくつもの課題を解決できる新しい社会経済システムとして提唱している概念」であるとしています。

詳しく解説します。

ベースとなる考え方

公益資本主義を理解するためには、現在の資本主義社会がどのようになっているのかを知り、比較をするのが良いでしょう。

現在の資本主義社会は主に「株主資本主義」で成立しています。会社を所有するのは株主であるとする考え方です。「会社は誰のものか?」という問いかけは昔からあり、経営者、従業員、顧客、社会など多種多様な答えがあります。

その中でも、アメリカなど先進国を中心に株主のものという考え方が定着しました。株主を重視するということは、つまり利益(株主還元)を最優先に考えるということです。経済産業省の「伊藤レポート」では、ROE(株主資本利益率、自己資本利益率)8%という目標が定められました。

ROEは「株主の投資額に対してどれほどの利益を得られたか」を表すKPI。正に株主を偏重していることを物語っています。株主資本主義により、企業が収益性を高めて成長力を持ったことは間違いありません。日経平均株価は2011年11月の8,160円から、2021年2月に3万円台まで回復しました。

しかし、問題も起こっています。格差の広がりです。経済学者トマ・ピケティは「21世紀の資本」において、以下のように指摘しました。

r(資本収益率)> g(経済成長率)

これは株式などの資産運用によって得られる富は、労働によって得られる富よりも大きいことを示しています。平たく表現すると、働くよりも投資をした方が経済的な豊かさを得られるということです。ピケティは膨大なデータからそれを証明しました。

労働者軽視の株主資本主義に疑問を呈する形で誕生したのが公益資本主義です。

公益資本主義は、会社の存在意義を「社会の公器」と表現しています。事業を通じて社会に貢献しようというものです。長期持続的な利益及び社会貢献を両立し、株主、経営者、労働者、顧客、取引先などすべてに利益が循環する社会を作ろうとしています。

主な提唱者

原丈人氏がよく知られています。原氏は1980年代から1990年代にかけてシリコンバレーでベンチャーキャピタリストなどとして活躍。その後バングラデシュでNGO活動に専念しました。教育や医療サービスが十分に得られない人々の向け、インターネットを活用した遠隔教育・遠隔医療を提供する事業を行っていました。

2007年に「21世紀の国富論」を上梓。公益資本主義を提唱するようになりました。

原氏は2013年4月に政府経済財政諮問会議に招かれています。甘利明氏や安倍晋三氏などと面会し、内閣府本府参与となりました。岸田首相は原氏の影響を多分に受けていると考えられます。

中小企業向けのビジネスフォンやOA機器などを提供する上場企業フォーバルの創業者で、代表取締役会長の大久保秀夫氏も公益資本主義を支持する一人です。大久保氏は2016年に「みんなを幸せにする資本主義―公益資本主義のすすめ」という本を出版しました。

公益資本主義が注目されるようになった背景

日本でも格差社会が顕著に表れたことが背景にあります。国税庁によると、2021年の日本の平均年収は433万円。実はこの数字は30年間ほとんど変化がありません。

この現象は他の先進国と比較をすると”異常”です。

※全労連「実質賃金の比較

経済成長に合わせて賃金も上昇するのが普通ですが、日本は長引くデフレで経済成長が止まっており、賃金も伸びていません。賃金という側面だけを見ると、日本は確実に貧しくなっています。

会社の在り方を変え、社会や人々にも利益を還元をしようというのが、公益資本主義なのです。


公益資本主義の具体的な内容

公益資本主義では会社を社会の公器と位置づけ、持続的かつ好循環サイクルを回す歯車のような役割を担います。その具体的な内容とはどのようなものでしょうか。

企業の長期的な成長を促す

株主資本主義における資本は、配当や自社株買いによって株主に還元されています。公益資本主義においては、余剰資本を従業員や顧客にも還元すべきだとしています。例えば、配当として株主に還元する分の10%を従業員に分配するなどといった、規則を制定する必要性を説いています。

また、日本の上場企業は四半期ごとに決算を開示する義務がありますが、これを年1回だけの開示にすると提言しています。これは投資家が短期的な材料をもとに株式の売買を行ってしまうためで、株式の長期保有を促そうとしています。

長期保有の観点から時価会計と減損会計を禁止しようという主張もあります。

新技術を育てる

公益資本主義は持続的な社会を目指しているため、新技術の開発が欠かせません。大企業よりも、最先端技術を持っている中小企業に注目しています。

企業にはリスクキャピタルへの投資(破綻する可能性のある企業への出資)を、会計上「損金」に繰り入れることが良いとしています。中小企業やスタートアップが資金調達することは事業を継続するうえで極めて重要なことですが、出資をする側のベンチャーキャピタル、投資ファンド、大手企業もメリットが享受できる姿を描いています。

これにより、企業間の資金の好循環が起こるのです。


「新しい資本主義」は何を目指しているのか

公益資本主義を下敷きとした「新しい資本主義」とはどのようなものなのでしょうか。概要や政府の動きを解説します。

岸田内閣が目指している全体像

「成長と分配の好循環」この実現が第一です。分配というと分かりづらい表現になりますが、高所得層から税金という形で富を徴収し、それを貧しい人々に還元するということです。

岸田内閣は、「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」を支給しています。2022年6月末までが締切でしたが、8月末まで延長されました。これは新型コロナウイルス感染拡大の影響によって就業が困難になり、生活に困窮した人々に最大60万円が給付されるというものです。

また、ウクライナとロシアの戦争によって原油価格が高騰したことを受け、ガソリン補助金の拡充やエネルギー・原材料安定供給対策を行うと2022年4月26日に発表しました。

こうした給付金や補助金は典型的な富の再分配です。新しい資本主義を標ぼうしている岸田内閣は、今後も給付金などを積極的に活用すると予想できます。

日本においては、年収1,000万円の所得税額は84万円程度ですが、年収が2,000万円を超えると500万円以上に跳ね上がります。これを累進課税制度と呼び、所得金額が高くなれば税率も高くなる方式を採用しています。

累進課税と給付金で好循環型社会の実現を図ろうとしています。

ただし、公益資本主義や新しい資本主義を理解しない人には、給付金が単なる”バラ撒き”とも取られかねません。その舵取りが最も難しいでしょう。

打ち出した政策やこれまでの発言

公益資本主義に関連するもので、政府が打ち出したものに以下のようなものがあります。

・「スタートアップ庁」の創設
・賃上げの実現
・四半期報告書の廃止

経団連は2022年4月11日スタートアップ企業の育成に向けた提言を発表。2027年までにユニコーン企業を100社に増やす目標を掲げました。法人設立手続きの簡略化や、関連政策を指揮する「スタートアップ庁」の創設を盛り込んでいます。

これは公益資本主義の新技術を育てる考え方に合致するものです。

岸田内閣が明言しているわけではありませんが、内部留保への課税が検討されているとの話があります。内部留保とは、株主への配当を支払った後に残る利益剰余金のこと。企業活動で得た利益から必要な分を差し引いて、更に残ったものの積み重ねです。

財務省によると、国内企業の内部留保は484兆円にも上るといいます。企業内のプールされた資金に課税をし、国民に分配するという考え方です。

金融庁は2022年4月22日に開く金融審議会で、上場企業が四半期ごとに開示する決算書類の一本化に向けた議論を開始しました。四半期報告書を廃止し、決算短信に一本化するとみられています。これは株式の長期保有に向けた動きと見るべきでしょう。


公益資本主義が広がることによる企業活動への影響

経営者や株主目線で、公益資本主義が広がるとどのような影響が出るのでしょうか。

経営体制はどう変わる?

KPIが大きく変わると考えられます。ROEが多くの企業で採用されていますが、公益資本主義が本格的に広まれば見直されるでしょう。

社会貢献支出額(または比率)、売上高人件費比率、ベンチャー企業への投資額(または比率)など、公益資本主義が重視する指標が採用されるかもしれません。

株式市場に何が起こる?

多くの株主は配当性向やROEなど、企業の利益に対してどれだけ株主還元が得られるかを重視しています。この概念が大きく変わるため、株価は軟調になると考えるのが妥当でしょう。投資対象としての魅力を失うことも考えられます。

株式に投下されていた資金が、債券や不動産に向かうこともあり得ます。

従業員はどうなる?

賃金の上昇が見込まれます。特に株主などへの配当や、最終的な利益の残りである利益剰余金が賃金として還元される可能性があります。


儲ける仕組みを大きく変える考え方

アベノミクスは大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢を武器として、経済成長を牽引しました。特に株価への影響が大きかったことが良く知られています。

岸田内閣はその流れを汲みつつ、新たな局面を迎えようとしています。アベノミクスは株主に利益を還元しましたが、大部分の人はその恩恵に預かれませんでした。岸田内閣は格差に分断された人々に光りを当てようとしています。

公益資本主義、新しい資本主義は日本の次なるステージとして、ぜひ頭に入れておきたい概念です。

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