Green Dayのメジャー1stアルバム『Dookie』はポップパンクを確立した名盤
Aventure編集部
Green Dayの『Dookie』は1994年にリリースされたポップパンクの名盤です。このアルバムの登場により、ポップパンクはグランジに代わってロックシーンのメインストリームに躍り出ました。この記事ではロックの歴史を塗り替えたアルバム『Dookie』の収録曲の魅力やジャケットデザイン、さらにはGreen Dayの経歴まで詳しく紹介していきます。
Green Dayはどんなバンド?
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ポップパンクの名盤『Dookie』について紹介する前に、当時のロックシーンの流れを変えたバンド、Green Dayについて紹介します。メンバーやバンドの経歴について見ていきましょう。
メンバー
Green Dayは1987年にビリー・ジョー・アームストロングとマイク・ダーントらを中心に結成されました。ここではメンバーチェンジの後に揃ったバンドの主要メンバーとして知られる3名を紹介していきます。
ビリー・ジョー・アームストロング
Green Dayのメインソングライターであり、ギターボーカルを務めています。幼い頃から音楽好きだった彼は類まれなメロディセンスを持っています。これまでのパンクが持つシンプルなコード進行と疾走感のあるビートに、ポップで親しみやすいメロディを乗せたことで新たにポップパンクを確立しました。
彼はボーカリストとして決して歌唱力が高いという評価がなされることは多くはありませんが、彼の歌声やボーカルワークに魅了されたリスナーは現在も後を絶ちません。
このようにGreen Dayのボーカルとして90年代ロックシーンの立役者となった反面、プライベートでは薬物やアルコールへの依存に悩まされ、これまでに何度も問題を起こしたり治療のためにバンドが活動を休止したこともありました。
2016年には薬物とアルコールを断ってバンドでの活動を再開させ、2020年にはソロ名義でカバーアルバムをリリースするなど、広く積極的な活動を続けています。
マイク・ダーント
ビリーとともにGreen Dayの前身バンドを結成したメンバーで、バンド内ではベースを担当しています。Green Dayで主に作曲を担当しているのはボーカルのビリーですが、『J.A.R. (Jason Andrew Relva)』では作曲を、アルバム『21st Century Breakdown』収録の『Modern World』ではメインボーカルを担当しています。
Green Dayの前身バンドではギターを担当していたこともあり、多彩なベースプレイも彼の魅力です。パンクらしいシンプルなルート弾きだけでなく、コードの間を繋ぐフレーズや曲中の印象的なソロフレーズなど、ギターが1本しかない3ピースバンドには欠かせない「目立つベース」をプレイしています。
トレ・クール
唯一オリジナルメンバーではないトレ・クールは、1990年に前任ドラマーであるジョン・キフメイヤーの後任としてGreen Dayに加入しました。わずか12歳からThe Lookoutsというバンドでドラマーとして活動していた経歴を持っています。
彼のドラミングはGreen Dayの楽曲を構成する重要な役割を担っています。キャッチーなメロディラインが特徴の一つであるGreen Dayの楽曲に、疾走感と心地よいグルーヴを与えているのは間違いなくトレのプレイだと言えるでしょう。
バンドの経歴
1987年に結成したGreen Dayがどのように活動をおこなってきたのか、結成から現在までの軌跡を辿ってみましょう。
結成からメジャー1stまで
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Green Dayの歴史は、ボーカルのビリーとベースのマイクを中心にSweet Childrenというバンドが結成された1987年に遡ります。彼らは1989年にはGreen Dayと改名し、ルックアウト・レコーズと契約しました。ルックアウト・レコーズは、Green Day結成前にトレが所属していたThe Lookoutsのメンバーであるローレンス・リバモアが立ち上げたインディレーベルです。
こうしてGreen Dayは1stアルバム『39/Smooth』と2ndアルバム『Kerplunk!』をルックアウト・レコーズからリリースしました。
こうしてアメリカのロックシーンで着実にファンを獲得していったGreen Dayは、1994年にはメジャーレーベルであるリプリーズ・レコードから『Dookie』をリリースします。この1枚をキッカケにロックシーンの歴史が塗り替えられることになるのです。
メジャー2ndから『American Idiot』まで
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『Dookie』のヒットによって一躍シーンの中心的存在となったGreen Dayはその後も1995年に『Insomniac』、1997年には『Nimrod』、2000年に『Warning』とコンスタントにリリースを続け、いずれも好調なセールスを記録しました。
当時のGreen Dayはアメリカ国内だけでなく日本でも人気を獲得しており、1996年には来日公演をおこなっています。この公演では日本のメロコアシーンを作り上げたHi-STANDARDが前座を務めました。
そして、彼らのキャリアの中で『Dookie』の次によく語られるアルバム『American Idiot』が2004年にリリースされます。イラク戦争を始めたアメリカを批判する内容で反戦をテーマにした本作は、コンセプトアルバムの一種であるロックオペラ形式が取られています。
収録曲の『Boulevard of Broken Dreams』ではグラミー賞の最優秀レコード賞を受賞した他、アルバム自体も1500万枚の売上を超えました。こうしてGreen Dayは名実ともに世界中の音楽シーンの中心たる地位を確立したのです。
活動休止から復帰
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『American Idiot』はリリース後も反響は大きく、2010年にはブロードウェイミュージカルにもなり、バンドは順風満帆のようでした。しかし、2012年9月に行われたiHeart RADIO Music Festivalで、トラブルが発生します。
彼らの演奏中に「持ち時間が残り1分」と表示されたことにビリーは怒り、地面にギターを叩きつけてステージから去ったのです。これはビリーの勘違いだったという話もありますが、この時ビリーはライブ前にお酒を飲んでおり泥酔状態だったそうです。
かねて大酒飲みとして知られていたビリーは、この当時アルコールと薬物にひどく依存していました。この一件を機にリハビリ施設に入所し、2013年になるとバンドは一時活動休止することを発表します。
しかしその間もGreen Dayは音楽シーンから高い評価を受け続け、2015年にはロックの殿堂入りを果たしました。ビリーは休止期間を経てアルコールと薬物を断ち、2016年に4年ぶりのアルバム『Revolution Radio』で復帰を果たしたのです。
ポップパンクの金字塔『Dookie』とは
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ここからはいよいよ彼らのメジャー1stアルバム『Dookie』の紹介をします。
アルバム紹介
『Dookie』は1994年にリリースされた彼のメジャー1stアルバムです。ポップパンクを確立した1枚と言われており、国内外に多くのフォローバンドを生みました。
アルバムタイトルは「うんち」という意味のスラングで、ビリーはこのことについて「大麻でキマっている時にアルバム名を決めた」と語っています。世紀の名盤のタイトルが特に意味を持たないという事実も、どこかポップパンクの精神性を表しているようにも感じられます。
当時の音楽シーンでの評価
『Dookie』がリリースされた1990年代初頭のアメリカでは、1992年にNirvanaの『Nevermind』がリリースされ、鬱屈とした内面的な歌詞を轟音に乗せて歌うグランジが流行していました。一方Green Dayは同じく1992年に『Kerplunk』で注目を集め、ポップパンクの土壌を徐々に固めていきます。
こうした背景の中でリリースされた『Dookie』は、これまでのグランジロックシーンに飽き始めてきたリスナーの心を掴んで大ヒットを記録します。シンプルなコード進行にキャッチーなメロディを明るいサウンドで表現するスタイルは新鮮だと評価され、90年代のロックシーンを一新しました。
アルバムジャケットについて
『Dookie』のアルバムジャケットにはコミック風のポップなイラストが描かれており、洋楽ロック好きの方なら一度は目にしたことがあるでしょう。『ウォーリーをさがせ!』のようなタッチで描かれたイラストの中にはアンガス・ヤングやパティ・スミスなど、ミュージシャンが描かれている遊び心もファンを楽しませてくれます。
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2018年にはVince Staplesのアルバム『FM!』が『Dookie』のジャケットをオマージュしているとして話題になりました。これに対して『Dookie』のジャケットを手掛けたリッチー・バッカーを始め、ビリーも「I love this」と好意的なコメントを寄せています。
収録曲の聴きどころを紹介
最後に『Dookie』収録曲の中から、必聴の3曲をピックアップしてその聴きどころを紹介していきます。これから紹介する曲の他にも聴き逃がせない名曲がたくさんありますが、まずはこの3曲から聴いてみましょう。
Basket Case
言わずと知れたGreen Dayの代表曲で、シングルカットもされた楽曲です。ビリーのギターとボーカルのみで始まるイントロに続いて、ベースとドラムが加わりギアアップ、そのまま曲の終盤まで駆け抜けるこの曲は、あっという間に3分間が過ぎてしまいます。
『Dookie』を象徴するようなポップパンクのお手本のような曲調でありながら、歌詞のなかでは主人公が抱える悩みや葛藤が描かれており、サウンドのキャッチーさと内面的な歌詞の対比が印象的です。
She
この曲もシングルカットされた人気の楽曲で、ライブでもよく披露されている曲の一つです。ベースとドラムのシンプルな伴奏にビリーの優しい歌声が乗せられるイントロからスタートします。シンプルなスリーコードで構成された楽曲は、これまた疾走感があって耳馴染みがいいことが特徴です。
一方、この曲はパンクらしく、しっかりとした主張が込められた歌詞が特徴で、ビリーが当時の交際相手から聞いたフェミニズムの思想についてつづられています。
Welcome to Paradise
この曲は『Dookie』に収録されているほか、インディーズ時代にリリースされたアルバム『Kerplunk』にも収録されていました。タイトルにある「Paradise」とはビリーが実家を飛び出して移り住んだオークランドの治安の悪い地域を指しています。
歌詞の中ではビリーが自身の母親へ向けてオークランドでの生活を手紙につづり、「ここでやっていくんだ」と前向きな決意が歌われています。一方で、これまでに紹介した2曲とは異なる重苦しく暗い印象を受けますが、イントロの痛快なギターリフや楽曲後半に登場する不気味なベースソロはクールで、非常に聴き応えがあります。
90年代ロックシーンを塗り替えた名盤『Dookie』
アメリカのスリーピースバンドGreen Dayの『Dookie』は90年代のロックシーンを塗り替えた歴史的1枚です。それまでのグランジロックのムーブメントを脱却し、ポップパンクの時代を切り拓きました。彼らが『Dookie』を通して確立したポップパンクは国内外の多くのバンドに影響を与え、日本のメロコアブームのキッカケにもなったのです。
疾走感が溢れるパンクな演奏と、メロディアスでキャッチーなメロディを組み合わせたポップパンクの名盤をこの機会に改めて聴いてみましょう。