円安メリット銘柄とは|記録的な円安の理由と関連株を解説
Aventure編集部
【リード文】
2022年に入ってからというもの、急激な円安が止まりません。3月頭には1ドル=115円だったものが、4月28日には1ドル130.81円を記録。1ドル=125円程度で円安の目安として意識される、いわゆる「黒田ライン」を突破してしまいました。急激な円安は、日本企業の業績にも大きな影響を与えています。
「円安で今後の株価はどうなるのか……」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。ただ、悪影響ばかりではなく、この急激な円安の恩恵を受けている銘柄も確かに存在しています。
本記事では急激な円安に陥った理由と、円安で好調な業績が見込める「円安メリット銘柄」について解説します。円安を機に投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
円安メリット関連銘柄とは
円安メリット銘柄とは、文字通り円の価値が下がる「円安」が業績にとってメリットになる銘柄のことです。円安メリット銘柄は基本的に「輸出関連企業」が該当し、自動車・機械・電気・精密機器の銘柄が当てはまります。
円安が進むほど東証の約7割を占めるとされる外国人投資家にとって日本は割安な市場ということになります。全体的に株が買われ、そもそも株価が堅調に推移する傾向にありますが、なかでも円安メリット銘柄はその恩恵を強く受けます。
2016年11月にトランプ大統領が勝利した際に急速に円安が進んだほか、2022年に入ってからは急速に円安が進行しました。3月初頭には1ドル115円台だった為替相場が3月28日には125円台を突破。一時は1ドル130円を超えるほどの円安になりました。今後もさまざまな要因で円安が進むことも考えられます。
円安局面でキャピタルゲインを狙えるように、円安メリット銘柄をしっかりと把握しておきましょう。
為替が株価に与える影響とは
為替相場は輸出企業・輸入企業の業績に大きな影響を与えます。
輸出関連銘柄は円安が進むと売り上げが大きくなるのが特徴です。たとえば1ドル100円で10,000ドルの商品を売った場合は100万円の売り上げですが、1ドルが110円なら110万円の売り上げになります。
1ドル=100円から110円と円安に傾くことで売り上げが上がるのです。為替相場で利益を得られれば販売価格で値下げの余地が生まれ、競合との価格競争でも有利になるでしょう。一時的に売り上げがプラスされることで株価上昇の引き金にもなります。
逆に食品関係や石油、LNG(液化天然ガス)などに関する銘柄においては、円安はデメリットになってしまいます。
円安になると仕入れコストが増大するためです。100ドルの商品を仕入れた場合、1ドル100円なら1万円の仕入れ値ですが、1ドル=110円なら1万1,000円になってしまいます。
仕入れコストを販売価格に転嫁しない限り、利益を押し下げる要因になってしまうのです。業績悪化が見えることで株価も低下することになります。
2022年に起きている円安の背景
2016年にトランプ大統領が当選した時や、2020年のコロナショック以降は円安が進行しました。直近では2022年3月から急激な円安が進行しているのも記憶に新しいでしょう。これらの急激な円安の背景には何があるのでしょうか。
原因とされている事柄として、3つ紹介します。
・日米の金利差拡大
・原油高・資源高
・海外に生産拠点があって輸出が減っていること
日米の金利差拡大
もともとwithコロナの影響で工場が停止するなど、物不足によって物価が上昇する傾向にありましたが、そこに追い打ちをかけたのがウクライナに侵攻したロシアへの制裁です。資源を中心にインフレが進み、米国FRBでは米国で進む急激なインフレを抑える目的にゼロ金利を解除して、利上げに踏み切っています。
ドルが利上げして円との金利差が拡大すると、ドルを買って円を売る流れが加速します。
金利差を解消するには日本円の利上げが必要ですが、日銀は利上げよりも景気の下支えを優先し、金融緩和策を継続して利上げに踏み切れていません。さらに日米間の金利差が拡大し、ますます円安が進行することも考えられます。
原油高・資源高
2022年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高によって、日本の貿易赤字が拡大したのも円安が加速した一因です。
日本は原油や天然ガスなどの資源をほとんど持っていません。海外からの輸入に頼るしかなく、海外の物を買うためにドルやユーロなどの外貨が必要になります。円を売って外貨に両替する動きが加速したことで、円安が進行したと考えられます。
海外に生産拠点があって輸出が減っていること
円買いをもたらしにくい原因として、経済構造の変化もあります。
国内の製造業が日本ではなく海外に生産拠点を移していることです。経済産業省によれば日本企業(製造業)の海外生産比率は2010年度には18.1%だったものが、19年度は23.4%に拡大しています。
日本から輸出が減って現地生産になると円の需要も少なくなります。そのほか、2019年までは好調だったインバウンド需要がコロナで激減したことも、外国人が日本円を買わなくなった要因として考えられます。
円安メリットで今後の業績に期待が持てる銘柄
紹介したように、コロナショックによって円高になった時期を除けば、ここ5~6年は円安に傾くことが多くなりました。円安に強い銘柄をポートフォリオに組み込むことで、日経平均を超えるパフォーマンスを目指しやすくなるでしょう。
今回は円安に強い銘柄のなかでも、とくにおすすめできる4銘柄を紹介します。
・トヨタ自動車(7203)
・日揮ホールディングス(7011)
・カプコン(9697)
・ペガサスミシン(6262)
トヨタ自動車(7203)
世界的な自動車メーカーであるトヨタ自動車は、代表的な円安メリット銘柄の1つです。
1円の円安が進むと、トヨタでは約400億円の増益になるといわれています。
海外売上高比率は75%と、売り上げの4分の3を海外で稼いでいるため、円安のメリットを得やすいのです。
2022年3月期決算では、営業利益が36.3%増の2兆9,956億円となり、過去最高を記録しました。トヨタの想定よりも円安に振れたことで、業績が大きく押し上げられた格好です。生産台数は減少しているものの、円安や収益改善活動の影響もあって営業利益の見通しは据え置かれています。
日揮ホールディングス(7011)
日揮ホールディングスは世界各地で石油やLNG(液化天然ガス)のプラントを手がけるエンジニアリング企業です。資源高の影響を強く受ける銘柄であり、海外売上高比率は60%になっていることから円安の恩恵を受けやすいのです。
2022年1月4日の株価は1株992円でしたが、資源高を受けて買いが進んだことで3月14日には1,578円まで上昇しました。
2022年に入ってからの5ヶ月弱で+75.50%の上昇率(2022年5月19日現在)と、現在進行形で株価が急上昇しています。
カプコン(9697)
カプコンは「モンスターハンター」「ストリートファイター」「バイオハザード」など、世界的なゲームを多数輩出している企業です。海外売上比率が5割以上と高く、2022年3月期の連結経常利益は前期比27.2%増の443億3,000万円を記録しています。
一般的な製造業と違って原材料高がコストになりにくいのも魅力的です。将来的にはメタバース分野でも成長が期待されています。
ペガサスミシン(6262)
ミシン銘柄も円安によって積極的に買われています。ミシンはいわゆる「景気敏感株」とされており、景気が改善して衣類の需要が高まると中長期目線で買いが入りやすいといわれています。
ペガサスミシンは環縫(かんぬ)いミシンで世界シェア4割を誇るトップ企業で、海外売上比率は約90%と、ほとんどの売り上げを海外で稼いでいます。
2022年5月19日現在のPER(株価収益率)が10倍未満と低めで、PBR(株価純資産倍率)も0.54と1倍を下回って割安な水準であることから、まだまだ株価が上がる余地があります。
円安で売買益を狙うなら知っておきたい円安メリット関連株
本記事では急激な円安に陥った理由と、円安で好調な業績が見込める「円安メリット銘柄」について解説しました。
2022年に入ってから急速に円安が進んだ背景には、「日米の金利差拡大」「ロシアによるウクライナ侵攻による資源高」「日本企業の生産拠点が海外に移っていること」など、さまざまな問題があります。
ただ、日本の輸出関連銘柄にとっては株価上昇のチャンスです。日本円が割安なことで外国人投資家の投資を招きやすく、今後の円安動向によってはさらなる業績拡大、株価上昇も見込めるでしょう。
今回紹介したような円安メリット銘柄をポートフォリオに加えることを検討してはいかがでしょうか。